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  • 竹内涼真&横浜流星“炎×氷”競演!『アキラとあきら』 二人の眼力対決が「半沢直樹」のカタルシスを超える!? | 映画 | BANGER!!!

    原作・池井戸潤! 二人の“AKIRA”の物語 池井戸潤の小説作品を原作に、竹内涼真と横浜流星が、同名の主人公を演じる映画『アキラとあきら』が、2022年8月26日(金)から全国公開される。 見事な佇まいを印象づける竹内の演技はさることながら、ひとりの俳優の演技を形作るあらゆる要素を完全にコントロールする横浜の精悍な表情と存在感も目を引く。私たち観客は、つい先頃、横浜が『流浪の月』(2022年)で俳優としていよいよ前人未到の域に入ろうとする瞬間をあらゆる場面、その画面の節々に確認することができた。彼が演じた中瀬亮というキャラクターの非常にショッキングな暴力性には、文字通り肌寒い恐怖すら感じた。 冒頭場面。走行中の車窓から主人公・階堂彬(横浜流星)が海を見つめている。次に滑らかな走行スピードの車外に切り替わり、彬が窓際で送る視線が捉えられる。彼のさりげない視線を車内と車外から捉えたこのふたつのショットがあるだけで、本作はすべてに映画として完結しているような、そんな印象を与える。 『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会 改めて横浜流星は、“視線の俳優”だ。彬が様々な場面で眼前の対象へ注ぐその視線が、本作の重要な軸になっている。同時に、この視線が階堂彬の精悍なキャラクター性を規定してもいる。横浜は役柄についての情報を観客が瞬時にキャッチできるように、冒頭場面の僅かなショットの内で、視線を抑制し、巧みにコントロールする。 冷静な横浜流星と情熱の竹内涼真 階堂彬と同名であるもうひとりの主人公・山崎瑛を演じるのは竹内涼真。横浜が視線の俳優なら、竹内は眉間の俳優といったところか。ドラマ『六本木クラス』(2022年:テレビ朝日系)でも顕著だが、彼の圧倒的な高身長と独特な眉間の演技が、本作では特に稀有な佇まいとして深い陰影を生んでいる。 『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会 涼やかでクールな横浜の視線と、竹内のより人間的で泥臭い眉間が、非常に鮮やかな好対照である。この決定的な持ち味の違いから、ふたりの“AKIRA”が見事に配役されている。彬も瑛も、ともに産業中央銀行に同期トップの成績で入行した逸材。かたや大企業の御曹司、かたや倒産した町工場の息子で、生まれも育ちもまるで異なるふたりである。 『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会 彬が海を見つめる冒頭のショットからも明らかなように、彼は非常にクールな性格で順調にバンカーとしてのキャリアを築くのに対し、人情に厚く、情にほだされやすい瑛は、左遷を覚悟で上司に食い下がる。彬の冷静さと瑛の情熱が均衡を保ちながら、時に互いを補完し合うことになるのが、本作の物語の白眉。横浜流星と竹内涼真という日本映画界のエース・ランナーの図式が、そのまま物語世界でも素描されたかのような構造である。 『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会 『半沢直樹』を超えるカタルシス!? 横浜流星の衝撃○○○シーン 新しい役柄が、その都度挑戦的なアプローチを可能にし、画面上に何かしらの爪痕を残すストイックな意気込み。それが横浜の主演映画を観ることのスリリングな体験である。本作での階堂彬役が、その期待に応えてくれるのは、ここ最近の横浜が連続して演じる“流浪の民”的役どころにも、観客の関心を惹き付ける要素が隠されている。 彬は、家業である「東海郵船」跡取りの座を継ぐことを拒否し、バンカーを目指した。だが、彼の心には、ほんとうの家族の繋がりを求めているが故の虚しさがある。『流浪の月』の亮もまた確かな母性を求めながら、恋人に暴力を振るう悲しき人物だった。 『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会 東海グループは、いまや身内のいざこざで瓦解寸前。社長の座に就いた弟・龍馬(高橋海人)との兄弟間の軋轢も解消できない。家業と家族崩壊の大きな壁を前に彬は、瑛の助けを借りながら打開策を探ることになる。本作での横浜は、そうした共同体の輪から外れた“流浪の民”として、物語全体を貫く回復と解放の役回りを担っているのだ。…

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  • 磯村勇斗の初主演&監督作『ヌマヅの少女ハイジ』とは!? ゾンビ愛も炸裂のロングインタビュー【後編】 | 映画 | BANGER!!!

    2021年には17作品もの映画やドラマに出演、2022年は日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した実力派若手俳優・磯村勇斗。WOWOW開局30周年プロジェクト『アクターズ・ショート・フィルム』では初監督作「機械仕掛けの君」を手掛け、2022年7月8日(金)からは初主演作『ビリーバーズ』が公開される。 俳優から監督まで精力的に活動する磯村が、映画業界に関わるきっかけとなった原体験は何だったのか? ロングインタビュー後半でたっぷりと話を聞いた。 磯村勇斗 「初監督作は中学時代の壮大な短編」 ―去年は短編映画『アクターズ・ショート・フィルム』の一遍「機械仕掛けの君」で監督にも挑戦されたとのことですが、映画を撮りたいという気持ちはずっとあったのでしょうか? WOWOWアクターズショートフィルム 「#機械仕掛けの君」 pic.twitter.com/OQfmGAgsBZ — 磯村勇斗 (@hayato_isomura) December 28, 2020 そうですね。映画を初めて撮ったのは中学生の頃で、『ヌマヅの少女ハイジ』という短編でした。ハイジとペーターとクララが僕の中学校にいて、クララは日本の最新医療のおかげでもう立ち上がれるようになっているんですが、学校内でいじめられてスイスに帰ってしまうんです。そこでハイジとペーターが彼女を連れ戻そうとスイスに向かう……という壮大なストーリー(笑)。ちなみに僕がハイジ役です。主演、監督、編集、カメラも担当しました。脚本はあるようでないのですが、指示をして友達と一緒に頑張りました。それを全校生徒の前で上映したら、遊び心のある作りが無事ウケまして。みんなが拍手をくれた瞬間に「俺は映画を仕事にするんだ!」と決めたんです。 磯村勇斗 ―映画に対する原体験が、そもそも作る側としてなんですね。『ヌマヅの少女ハイジ』を撮ろうと思ったきっかけはあったんですか? 中学校のひとつ上に憧れの先輩がいて、その人が映画を作ってたんですよ。その姿を見て、俺もやってみたい! と。あとは父親の影響で子供の頃から映画を観ることが多くて、<午後のロードショー>などが大好きだったことも影響していると思います。その当時はレーザーディスクで、よく『スター・ウォーズ』シリーズ(1977年ほか)を観ていました。何が面白いのかはわからなかったけど、子供ながらにハマっていて。…

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  • 『エルヴィス』カリスマを蘇らせたオースティン・バトラーが語る! エルヴィスとの奇跡的な共通点とは? | 映画 | BANGER!!!

    誰もが知るアイコン的存在を、そのイメージを損なわずに演じること。これは多くの俳優にとって、一度は試みたいチャレンジだろう。 しかし、そのアイコンが偉大であればあるほど、プレッシャーも大きくなる。まして歌やステージのパフォーマンスを、長年のファンの期待を裏切らずに再現するとなれば、その覚悟と決意の大きさには計り知れぬものがある。そのすべてを乗り越え、カリスマを蘇らせることに成功した映画に、われわれは心が震えずにはいられない。 エルヴィス・プレスリー役に挑んだオースティン・バトラーは、まさにその最高の例となった。 『エルヴィス』©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved 「友人に突然“君はいつかエルヴィスを演じるべき”と言われて……」 1950年代、圧巻のボーカルと、観客を熱狂させる過激なステージパフォーマンスで、ロックというジャンルを超え、音楽の歴史を変えたと言ってもいいエルヴィス。42歳の若さで逝ったカリスマの人生を描いた『エルヴィス』は、背景となる主な時代が1950〜1970年代だが、エルヴィス役のオースティン・バトラーは、その時代にもぴたりとハマる独特のムードを醸し出している。 『エルヴィス』©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved どこかクラシック映画の俳優も思わせるそのたたずまい。あこがれの俳優を聞いてみると、その理由が納得できる。…

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  • 児玉徹郎監督&エグゼクティブPに聞く!『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は世界が求める“クールな”アニメ | アニメ | BANGER!!!

    世界が待っていた『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』 『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の公開がいよいよ迫ってきた。思いもよらないアクシデントにより公開が遅れていたが、前作『ドラゴンボール超 ブロリー』から4年ぶりという劇場版への期待感を抱きながら、児玉徹郎監督と伊能(いよく)昭夫エグゼクティブプロデューサー(以下、EP)のインタビューに臨んだ。 『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会 集英社でも初めてという単独作品部署「ドラゴンボール室」は2016年の設立当時から話題になっていたが、改めてその経緯をドラゴンボール室の室長でもある伊能昭夫EPに聞いてみた。 伊能:集英社としては作品の部署を立ち上げるのは初めての試みでした。私が編集長を務めるVジャンプで「ドラゴンボール超」が連載されていたのですが、これからはテレビや映画も含め総合的にチャレンジしていこうという動きがあり、ちょうど本作がスタートする時期と重なっているという経緯があり設立されました。具体的にはテレビアニメや劇場アニメをどのように展開していくか、さらにライセンスや商品化、特に世界中でプレイされるようになっているゲームについては、かなり突っ込んだ姿勢でプロデュースに参加しています。 本作について聞きたかったのは、予告編で垣間見えた世界観についてである。実写版バットマンなども連想させるアメコミ的要素クールな絵柄について、その意図を伊能EPにうかがったところ、控えめな返答の中にも本作は壮大な戦略作品なのではないかという予感にとらわれた。実際、2022年4月16日にフジテレビで放映された『ドラゴンボール超 ブロリー』(2018年)に対し「世界興行収入135億円」という打ち出しがあったので、あながち間違いでないのではないか。 伊能:確かに、ドラゴンボールの大きな命題は世界展開にあります。すでに世界中で人気があることは確かなものの、なかなかそれを視覚化(数値化)することができなかったのですが、前作『ドラゴンボール超 ブロリー』の興行収入が北米を中心としていい数字を残せたことで目標が見えてきました。今回は過去のそういったデータを踏まえ、国や地域ごとの展開を考えたいと思っています。 『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022…

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  • 年の差58歳、共通点は「BL」が好き!『メタモルフォーゼの縁側』 少女と老婦人の友情物語 | 映画 | BANGER!!!

    「BL」が繋いだ17歳と75歳 17歳の女子高校生と75歳の老婦人が、思いがけず知り合い、友情を育む。年の離れたふたりを繋いだのはBL、すなわちボーイズラブ漫画だった。芦田愛菜と宮本信子がダブル主演を務める『メタモルフォーゼの縁側』は、鶴谷香央理による漫画を映画化した作品だ。 『メタモルフォーゼの縁側』©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会 原作漫画は2017年にウェブ連載を開始し、2020年に全5巻で完結。繊細な日常描写を積み重ね、優しくあたたかい人々の心のふれあいと創作の力を描き出した人気作である。<このマンガがすごい!2019>オンナ編1位、第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞に選出されるなど、漫画好きに愛される漫画だ。 何年か前に夫に先立たれた雪は、自宅の一軒家で近所の子供たちに書道を教えながらひとり暮らしをしている。ある日、ふと立ち寄った書店で「きれいな絵」の漫画に目を止め、気まぐれに購入してみると、それは男子高校生が主人公のボーイズラブ作品だった。続きが気になってふたたび書店に向かった雪は、そこでアルバイトする高校生うららと出会うのだった。 『メタモルフォーゼの縁側』©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会 芦田愛菜と宮本信子の魅力的なキャラクター造形 20世紀の昔に比べれば、現在はアニメや漫画やゲーム、それにBLに熱中するのも、「よくある一般的な趣味」として社会に受け入れられている。タレントやモデルなど華やかな世界で活躍している女性にも、BL好きを広言する人がだいぶ増えてきた。 『メタモルフォーゼの縁側』©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会 しかし、うららはテンション高く自己主張したりはしゃいだりするのは気が引けてしまう、いわば古風なオタクである。きれいな女の子たちを眺めて「自分はキラキラできない」と思ってしまうし、学校では趣味の合う友達を作れないでいる。だが、そんなうららも、雪と出会い、好きなBL漫画について語り合ったり、同人誌即売会に出かけたり、さまざまな経験を重ねるうちに少しずつ変わってゆく。 『メタモルフォーゼの縁側』©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会 うららを演じるのは芦田愛菜。聡明なスーパー優等生というイメージの強い彼女だが、この映画ではまだ小さな世界でおずおずと日々を生きている平凡な少女に見えるからさすがである。見た目に無頓着で髪はぼさぼさ、それでも若いエネルギーがはちきれんばかりで、中高年からしたら愛おしくてたまらない生命体として目を引きつける。 『メタモルフォーゼの縁側』©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会 雪役の宮本信子も、軽やかに楽しげなところをたくさん見せて笑顔を誘う。臙脂色に白のドット柄のシャツなど、時代を超えてかわいらしいスタイリングがお似合いだ。「漫画の続きが楽しみで生活にハリが出る」という経験が映画になるのは、そういうことは確かにあると知っている人間として素直に嬉しい。 『メタモルフォーゼの縁側』©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会 2022年の映画として“もっとできた”気になるポイント 池袋のジュンク堂や、その並びの今では閉店してしまったマルゼンカフェ、高円寺の文禄堂など実在の書店でのロケ、にぎやかな同人誌即売会場の風景など、東京の書店および同人誌周辺の文化を紹介する観光映画的な楽しさもある。また、作中に登場するBL漫画を、原作者の鶴谷に加え、「黄昏アウトフォーカス」シリーズなどで人気のBL漫画家、じゃのめが描き下ろしているのも見どころだ。 『メタモルフォーゼの縁側』©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会 だが、特に同人文化に関しては、「察してね」という部分が多いわりに、察せる人は違和感を覚えてしまうであろう描写が目につくのも事実。主に原作から変更された部分における登場人物の行動が、押しが強く不自然になってしまっているのだ。映画鑑賞後に原作を再読して、人との距離を縮めるのが得意ではない、周りに気を遣って萎縮しがちな人が一歩を踏み出すまでの過程が、漫画ではたいへん周到にきめ細かく描写されていることに改めて感銘を受けた。そういった原作のディティールの豊かさや群像劇としての味わいを考えると、2時間の映画でなく30分8話ぐらいの連続ドラマで見たかった気もする。 『メタモルフォーゼの縁側』©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会…

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  • カタギを目指す半グレと裏社会の泥沼『JOINT』 新鋭監督と俳優たちが慣習を無視して作り上げたリアルな犯罪映画 | 映画 | BANGER!!!

    何かが大きくズレている 役者のセリフが日本語なのに聞き取れない。光が回ってなくてよく見えない。やたらと顔のアップが多い。芝居が上手いのか下手なのかわからない。そもそも出演している役者をほとんど知らない。 ヤクザ、裏社会、暴力をテーマにした作品は日本にも数えきれないほどあるが、どの映画にも似ていない。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 『仁義なき戦い』(1973年)を70年代以降の暴力映画のメルクマールとするならば、『孤狼の血』(2017年)はそれを受け継いでいるとも言えよう。『仁義なき戦い』が公開される前、「こんなメチャクチャなもんが当たるわけがない」と東映内部でも揉めたらしいが、深作監督が作り上げたもので日本のノワールは成り立っている。 そこにいきなりこれまでの約束事を無視して、『JOINT』がノーマークで出現した。正当な日本映画と大きくズレているのである。手探りでズレを探り出し、丁寧に組み立て、乱暴に撮っている。正直戸惑いもし、新しさにこそばゆさを感じながらもスクリーンに没入していった。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 混沌の裏社会 1992年に暴力団対策法が施行されて以来、暴力団員の方々は辛い毎日。「ヤクザに基本的人権はないのか」と愚痴ってもまともに相手にされないし、しのぎは減るばかりで食っていくことさえままならない。じゃ、組を抜けてカタギになるといっても、この時勢簡単に仕事は見つからない。過去の経歴がついて回るから、さらに働ける場所は限られてしまう。表看板を綺麗にしても、そう簡単に正業を回すのは難しい。 そこに半グレという厄介な連中、外国人犯罪者グループが緩い組織で、かつて自分たちのものだった金の木を囲ってしまうので、ますます窮地に追い込まれる。『仁義なき戦い』の時代はとうの昔に終わってしまったのだ。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 この作品の主人公、石神は暴力団に属してはいなかったが、下手を打って刑務所に入る。石神が出所するところからこの映画は始まるが、半グレであったことはあまりハンデにはならない。暴力団構成員の後輩、表は焼肉屋をやっている韓国人の友人ジュンギ、堅気のヤスと幅広いつながりを持っているので、泳ぐように裏社会、表社会を行き来できる。まずは手始めに得意分野だった個人情報「名簿」の売買から始めるが、どこで一線を超えるのかはっきりしないビジネスは、すんなり成功を収める。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 しかし、美味しく見えるビジネスを続けたとしても、先は知れている。正業のことは何もわからないが、表で胸を張って歩きたい。ベンチャー投資はどうだ。技術はあるが世渡りが下手な若い経営者のケツを叩くのは簡単だ。出資者の当然の権利だし、弱気になっている連中に腹をくくらせ、やる気を出させるのも半グレで暴れていたときのことを思えば少し頭を使うだけのこと。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 しかし、出所してからの短期のツキは長くは続かない。後輩の所属する暴力団は分裂し抗争を始める。半グレだから全然関係ない、というわけにもいかない。友人の韓国人も外国人組織とのつながりで、妙な具合に捻れてしまう。 石神よ、どうする。道はあるのか。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 誰がこんな映画を作る? 冒頭に書いた“ズレ”をずっと感じながら観ていたのだが、鑑賞後に資料を読んで、ようやくモヤモヤしていたことが全て腹に落ちた。自主映画なのに撮影に4ヶ月かけている。その前のオーディションにも400人を呼んでいる。作る前の段階から「おかしい」のである。…

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  • ハリウッドも絶賛! 谷垣健治がアクション演出『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』日本ロケ現場レポート | 映画 | BANGER!!!

    最新の“日本ロケ”ハリウッド大作 『ワイルド・スピード』シリーズ(2001年~)や『ジョン・ウィック』シリーズ(2014年~)などハリウッドのアクション大作には、たびたび日本のシーンが登場するが、空撮や一瞬の風景ショットなどを除き、日本でロケは行われていない。ドラマはたまに撮影があるが、大作映画の場合、多くはセットで再現されているので、作品によってリアルさにバラつきがある(それも楽しいのだが!)。 『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』©2021 Paramount Pictures. Hasbro, G.I. Joe and all related characters are trademarks of Hasbro. © 2021 Hasbro. All…

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  • 斎藤工は、小津安二郎・ワイズマン・成瀬巳喜男で出来ている! 父から受けた映画の洗礼と特殊な関係とは【第2回】 | 映画 | BANGER!!!

    監督・斎藤工、大いに語る その独特な画風と唯一無二の表現力で絶大な人気を誇る漫画家・大橋裕之の幻の初期作集を実写映画化した『ゾッキ』が、2021年4月2日(金)より全国公開(3月20日より蒲郡市、3月26日より愛知県内で先行公開あり)。 『ゾッキ』© 2020「ゾッキ」製作委員会 今回は、『ゾッキ』で竹中直人と山田孝之と共に監督として共同制作を行った斎藤工にロングインタビューを敢行。撮影エピソードやキャスティング秘話に続き、自身の映画原体験や敬愛する名監督たちへの想い、そして映画界の今後のビジョンに至るまで、超・濃密なインタビューを全3回に分けてお贈りする。 斎藤工、『ゾッキ』は「ギリ“失敗じゃない”ライン」を狙った⁉ 竹中直人&山田孝之との共同製作秘話を明かす【第1回】 いつも心にフレデリック・ワイズマンを ―余白というか自分の中になかったものと、事故のように出会って幅ができたり、引き出しになったり、色々あると思うのですが、“自分を壊す事故のような映画”というと何を思い浮かべますか? フレデリック・ワイズマンの『ボクシング・ジム』(2010年)。アメリカ・テキサスの田舎町にある小汚いボクシングジムを撮った映画なんですけど、ワイズマンってとにかく筋書きを用意しないので、そこに集う人たちに思いきりドラマを起こして欲しいとも思ってないっていう(笑)。そういうことが、やっぱりすごく勇気のいることで。 ドキュメンタリーっていろんな手法があると思うんですけど、森達也さんは「土俵を作って、あとは相撲をとってもらう」。でもワイズマンは、むしろ土俵を平らにして構えさせないというか。だから他の作品(『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』[2016年])でも、パティ・スミスが空気的に映されてるというのは衝撃的で。彼は朝鮮戦争に従軍していて、そのあと刑務所に入り、出所して撮ったのがデビュー作『チチカット・フォーリーズ』(1967年)。1991年まで裁判にかけられて映画館で上映できなかった。 そのあと病院や学校、いろんな場所をとにかく撮る。映画スターを撮るのが映画だと思ってたのにワイズマンは場所、すなわち時間を撮ってるんだということに気づいて。(『ニューヨーク公共図書館』は)3時間くらいあるのでやはりしんどい時間も来るんですけど、ドキュメンタリーって編集次第だと僕は思っていて。彼がどの時間を切り取って一本にしたか、というのが見終わって完成する。 彼自身ボクシングファンなんですよね、習っていた時期もあって。僕もジムに通っていたことがあるんですけど、試合の体感を植え付けるために3分おきにゴングが鳴るんですよ。ジム自体にリズムがあって、そのリズムで編集したり、足元のフットワークだけ映していたり。顔と同じくらい足元が映ってる。そこに来る、中高年になってからボクシングを始めた人とか、日本だったら絶対に民放のドラマにならないような、何気ない普通の人たちが画面の中央にいて。“躍動しない躍動”みたいなものがある。ワイズマン作品に価値を見出せる人間にならないといけないんだっていう、ショックみたいなのはありました。衝撃でしたね。 ―ワイズマンはもう90代ですが、まだ元気に撮っていますよね。 2020年にも新作(『City Hall(原題)』)を発表しましたね。彼の撮り方は、現場を見ていないので分からないですが、おそらくディレクション自体はローカロリーだと思うんですよ。据え置きで、(監督がその場に)いない時も絶対あるだろうし。でも、いつどの場所を撮ってどう仕上げるかというのが彼の映画製作だと思うので、自分がディレクションや制作側で入る現場は、どうしてもそこにいる人を撮りすぎちゃう。でも『ゾッキ』でいう蒲郡だって場所を撮る、その空間ロケーションに僕らも身を置く。だからロケハンもありますけど、それを忘れちゃうと現代的なマンガのコマ割りみたいな、いわゆる“損をしないコンテンツ”的な映画の作り方になってしまう。それを全面的に批判はしないですが、ワイズマンをどこかに置いておかないと、自分の場合は映画を作れないなと。ひとつの画角みたいな人です。 『ゾッキ』© 2020「ゾッキ」製作委員会 「父とは会話はなくても、映画のDVDを送り合うという関係(笑)」…

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  • 映画監督・池田エライザの“今後のビジョン”は?「日本人だからって国内で作り続ける必要はない。そこは大いに、ずかずかと行けたら」 | 映画 | BANGER!!!

    監督デビュー作『夏、至るころ』が2020年12月4日(金)に公開を控える女優・池田エライザは、いつ、どんなきっかけで映画や音楽といったカルチャーに強い関心を持つようになったのか? 故郷・福岡のシネコンで受けた映画の洗礼から、10代のカリスマと呼ばれたモデル時代、女優として焦りを感じたハリウッド作品や目指すロールモデルの存在、そして今後のビジョンに至るまで、たっぷり語っていただいた。 <1回目>池田エライザが初監督作を語る! あえて青春映画の王道を貫いた『夏、至るころ』に込めた若者へのメッセージとは? <2回目>『夏、至るころ』で監督デビュー! 池田エライザが影響を受けた映画は?「技術が発達しても超えられない“何か”がある映画に憧れる」 「SNSは用法容量を守らないと危ない」 ―影響を受けた作品に挙げていただいた『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年)は比較的新しい作品ですね。 これはもう、マーゴット・ロビーの熱演に尽きますね。観て、初めて「女優辞めよう」って思った。「無理無理! 辞める辞める! こんなことやれる女優がいるならやってらんないよ!」って。なんか、そんな芝居されちゃったら……もちろん全うできるように頑張っているけど、(現場と現場を)縫うように行って「今日どっちの現場だっけ?」とか言っている自分が、すっごい恥ずかしくなっちゃって。別に体を酷使することが良いっていうわけじゃないけど、誰かの人生を代弁するわけじゃないですか。それで大成功と言わしめるだけの仕上がりを、ちゃんと努力で見せてくるって、すごいなと。これは視点が監督っていうことよりは、普通に女優として焦った映画だったというか。 ―『裸足の季節』(2015年)はトルコの映画なんですね。 これは、日本ではあまり一般的ではない宗教(※イスラム教)下での少女たちのお話。思春期で外の世界について知り始めても、檻から出してもらえない。彼女たちも学校には行くけれど、男子生徒とは絶対に関わっちゃいけないとか、常に監視された状態で生きているなか、ちょっとずつ自意識が芽生えて自分たちの意志で動き始める。『夏、至るころ』の(主人公の)翔ちゃんもそうだけど、初めて“自分の意志を無視しない瞬間”が描かれていて、すごく好きなんです。おすすめ! 「好きな俳優はショーン・ペン、浅野忠信、おすすめ映画は……」 俳優 村上淳の“映画に取り憑かれた”半生 ―映画はどれくらいのペースで観ていますか? 映画マニアと言われるほどではないと思います。観るときは毎日観るし、Netflixとかも観る。意外とミーハーなので、もう『クイーンズ・ギャンビット』とかも観ました。めっちゃ良かったです。あとは、フランスのちょっとマイナーなアニメ映画とかも。自分の好きなものだけ観ますね。選び方は、ポスタービジュアルとかを見て「私、これ好きそう!」って思うようなもの。 ―それは直感で?…

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  • 日本アニメのアカデミー賞獲得が困難に? なぜ『天気の子』ではなく『失くした体』がノミネートされたのか | アニメ | BANGER!!!

    世界がアッと驚いた『パラサイト 半地下の家族』の第92回アカデミー賞4部門制覇(作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞)。アジアが世界にグッと近付いたが、日本にとって馴染み深いのは、何と言ってもアニメーション部門(長編アニメ映画賞)。受賞は『トイ・ストーリー4』に落ち着き“お約束”通りの展開となったが、あれっ? と思ったのは、期待度の高かった『天気の子』ではなく、ノーマークの『失くした体』がノミネートされたこと。これが長編第1作目となる無名監督の作品に、日本人ではなくとも、なぜ?と思った人間は多いのではないか。 Netflixオリジナル映画「失くした体」独占配信中 ほとんど知名度のない『失くした体』がなぜノミネート? 今年のノミネート作品は『トイ・ストーリー4』を含む5作品で、日本でも2019年末に公開済みだった『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』は、かつてピクサーと覇権を争ったドリームワークスの人気シリーズ3作目。2020年秋に日本公開予定の『ミッシング・リンク/Missing Link(原題)』は、アードマン・アニメーションズ(Aardman Animations:イギリス)と並ぶストップモーション・アニメーションスタジオ、ライカ(LAIKA:あのNIKEが設立!)制作で、アカデミー賞~アニー賞の常連。Netflixオリジナル作品『クロース』のセルジオ・パブロス監督は『怪盗グルーの月泥棒 3D』(2010年)の原作や、2012年にアニー賞でキャラクターデザイン賞にノミネートされた『RIO』のキャラクターデザインを務めた人間で、ハリウッド並みのクオリティを持つ大作。 ここまでの作品はノミネートされても充分に納得できるレベルのものだが、それに対して、同じくNetflixオリジナル作品『失くした体』は、カートゥーン・スタイルのテレビシリーズ(ディズニーチャンネル『手裏剣スクール』[2007年~]など)が主体のシーラム(Xilam:フランス)制作、監督もほぼ無名のジェレミー・クラパン。なぜ、この布陣で『天気の子』に勝てたのか? Netflixオリジナル映画「失くした体」独占配信中 キッズ/ファミリーのものだったアニメーション 『パラサイト』が頂点に立ったアカデミー作品賞部門では、「芸術性」「商業性」、さらに最近では「社会性・社会問題への視点」が重視されている。実写映画は伝統的に社会を映す鏡としての役割も担っており、アカデミー賞でもその時々の社会意識を反映した問題作がノミネート/受賞というケースが多い。 一方で、アニメーションは伝統的にキッズ/ファミリーが観る娯楽という枠にずっと縛られ続けていた。1937年という割と早い時期に『白雪姫』で芸術性の評価も獲得したものの、2001年度作品対象の第74回アカデミー賞で長編アニメ映画部門が誕生した時でも、子どもが安心して楽しめる娯楽性が重視されていたのは、初期のノミネート作品のラインナップ(※第1回目『シュレック』[受賞]、『天才少年ジミー・ニュートロン(ジミー・ニュートロン 僕は天才発明家!)』、『モンスターズ・インク』、第2回目『千と千尋の神隠し』[受賞]、『アイス・エイジ』、『リロ&スティッチ』、『スピリット』、『トレジャー・プラネット』)で理解できる。 そして、その中に宮崎駿やシルヴァン・ショメ(第3回目『ベルヴィル・ランデブー』でノミネート)といった天才肌で作家性の強い作品が織り交ぜられるという傾向がしばらく続くのだが、大きな変化が訪れたのが2008年、第80回アカデミー賞に『ペルセポリス』がノミネートされてからである。 『ペルセポリス』の衝撃 この作品は、イラン出身でパリ在住のバンド・デシネ作家、マルジャン・サトラピが自ら脚本・監督を務めた半自叙伝である。1978年のイスラム革命以降の激動のイランにおいて、旧弊にして堅固な戒律社会と自由で奔放な西欧社会の狭間で苦悩する女性が皮肉とユーモアを織り交ぜて描かれているが、従来のCartoon/アニメーションでは取り上げられることのなかった時事性の強いリアルなテーマが注目を集め、ノミネートを勝ち得ることが出来た(スティーヴン・スピルバーグ作品や『スター・ウォーズ』シリーズ、またジブリ作品の北米公開をプロデュースしたキャスリーン・ケネディの力も見逃せないが)。 それ以降、記憶を失ったイスラエル国防軍の歩兵を描いたアニメーション『戦場でワルツを』(2008年…

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