カタギを目指す半グレと裏社会の泥沼JOINT

  • カタギを目指す半グレと裏社会の泥沼『JOINT』 新鋭監督と俳優たちが慣習を無視して作り上げたリアルな犯罪映画 | 映画 | BANGER!!!

    何かが大きくズレている 役者のセリフが日本語なのに聞き取れない。光が回ってなくてよく見えない。やたらと顔のアップが多い。芝居が上手いのか下手なのかわからない。そもそも出演している役者をほとんど知らない。 ヤクザ、裏社会、暴力をテーマにした作品は日本にも数えきれないほどあるが、どの映画にも似ていない。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 『仁義なき戦い』(1973年)を70年代以降の暴力映画のメルクマールとするならば、『孤狼の血』(2017年)はそれを受け継いでいるとも言えよう。『仁義なき戦い』が公開される前、「こんなメチャクチャなもんが当たるわけがない」と東映内部でも揉めたらしいが、深作監督が作り上げたもので日本のノワールは成り立っている。 そこにいきなりこれまでの約束事を無視して、『JOINT』がノーマークで出現した。正当な日本映画と大きくズレているのである。手探りでズレを探り出し、丁寧に組み立て、乱暴に撮っている。正直戸惑いもし、新しさにこそばゆさを感じながらもスクリーンに没入していった。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 混沌の裏社会 1992年に暴力団対策法が施行されて以来、暴力団員の方々は辛い毎日。「ヤクザに基本的人権はないのか」と愚痴ってもまともに相手にされないし、しのぎは減るばかりで食っていくことさえままならない。じゃ、組を抜けてカタギになるといっても、この時勢簡単に仕事は見つからない。過去の経歴がついて回るから、さらに働ける場所は限られてしまう。表看板を綺麗にしても、そう簡単に正業を回すのは難しい。 そこに半グレという厄介な連中、外国人犯罪者グループが緩い組織で、かつて自分たちのものだった金の木を囲ってしまうので、ますます窮地に追い込まれる。『仁義なき戦い』の時代はとうの昔に終わってしまったのだ。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 この作品の主人公、石神は暴力団に属してはいなかったが、下手を打って刑務所に入る。石神が出所するところからこの映画は始まるが、半グレであったことはあまりハンデにはならない。暴力団構成員の後輩、表は焼肉屋をやっている韓国人の友人ジュンギ、堅気のヤスと幅広いつながりを持っているので、泳ぐように裏社会、表社会を行き来できる。まずは手始めに得意分野だった個人情報「名簿」の売買から始めるが、どこで一線を超えるのかはっきりしないビジネスは、すんなり成功を収める。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 しかし、美味しく見えるビジネスを続けたとしても、先は知れている。正業のことは何もわからないが、表で胸を張って歩きたい。ベンチャー投資はどうだ。技術はあるが世渡りが下手な若い経営者のケツを叩くのは簡単だ。出資者の当然の権利だし、弱気になっている連中に腹をくくらせ、やる気を出させるのも半グレで暴れていたときのことを思えば少し頭を使うだけのこと。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 しかし、出所してからの短期のツキは長くは続かない。後輩の所属する暴力団は分裂し抗争を始める。半グレだから全然関係ない、というわけにもいかない。友人の韓国人も外国人組織とのつながりで、妙な具合に捻れてしまう。 石神よ、どうする。道はあるのか。 『JOINT』©小島央大/映画JOINT製作委員会 誰がこんな映画を作る? 冒頭に書いた“ズレ”をずっと感じながら観ていたのだが、鑑賞後に資料を読んで、ようやくモヤモヤしていたことが全て腹に落ちた。自主映画なのに撮影に4ヶ月かけている。その前のオーディションにも400人を呼んでいる。作る前の段階から「おかしい」のである。…

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