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Kickstarter×講談社 世界へ発信すべき日本のクリエイティビティー – インタビュー : .

「クリエイティブなプロジェクトに生命を。」というミッションを掲げ、2017年に日本上陸を果たしたクラウドファンディングのプラットフォームKickstarter。2019年4月には講談社とパートナーシップ締結を結び、これまでに様々なクリエイターのプロジェクトをサポートしてきた。今回、Kickstarter 中田美樹と講談社 市原真樹の対談を敢行し、日本におけるクリエイティブの現状や、今後のビジョンについて話し合ってもらった。

モノカルチャーのリスクに警鐘を鳴らし、多様で活気あふれる文化の形成を目指すKickstarterは、すでに海外のクリエイターから圧倒的な支持を集めているが、日本での認知はまだこれから。日本独自のクリエイティブを世界に発信するためには、どのようなマインドセットが必要なのか? そもそもKickstarterとは、他のクラウドファンディングサービスと何が違うのか? 様々な疑問をぶつけてみた。

他のクラウドファンディングとは一線を画す、クリエイターをサポートしたいという理念

―まずはKickstarterが、講談社とパートナーシップを締結したそもそもの経緯を教えてもらえますか?

中田:講談社にKickstarterのガイドブックを作ってもらったのがきっかけで、そこから全てが始まりました。講談社の「クリエイターを支援していく」というミッションは、我々とも完全に一致していて、日本におけるKickstarterのパートナーとしては、この上なく理想の存在です。

Kickstarter日本担当のOutreach Leadとしてブルックリン本社に勤務。バイカルチュアルなエキスパートとして映像制作(ニューヨーク)、広告制作(東京)、スタートアップ企業(東京)の業務に携わり、現在に至る。” class=”zoom”/>
中田美樹(なかた みき)
Kickstarter日本担当のOutreach Leadとしてブルックリン本社に勤務。バイカルチュアルなエキスパートとして映像制作(ニューヨーク)、広告制作(東京)、スタートアップ企業(東京)の業務に携わり、現在に至る。

『キックスターターガイドブック入門編』講談社
『キックスターターガイドブック入門編』講談社(Amazonで見る)

市原:Kickstarterと同様、講談社もクリエイターに対し創業以来サポートをし続け、今年で111年目になります。Kickstarterは、クラウドファンディングという仕組みを利用する点が講談社とは大きく異なりますし、海外企業でオンラインを舞台にしているという点でも、今後学ぶべきことが沢山あると思っています。

市原真樹(いちはら しんじ)<br />講談社にてモーニング編集部、ヤングマガジン編集部などで漫画編集者として努めたのち、人事業務を経て経営企画部署へ。現在はKickstarter社とのパートナーシップ対応チームに属する。” class=”zoom”/><br /><span class=市原真樹(いちはら しんじ)
講談社にてモーニング編集部、ヤングマガジン編集部などで漫画編集者として努めたのち、人事業務を経て経営企画部署へ。現在はKickstarter社とのパートナーシップ対応チームに属する。

―パートナーシップ締結からおよそ1年半、実際に振り返ってみていかがですか?

市原:世の中には「才能」というものがたくさんあり、輝くこともあれば埋もれてしまうこともある中で、我々のような「他者」がその才能をサポートすることによって、さらに輝かせることができる、ということを再認識しています。

―締結の際、講談社からは「講談社が抱える編集者の企画力・編集力を出版分野に関わらず提供することで、クリエイターの才能を最大化し、世界へ発信します」というプレスリリースが発表されました。具体的に、講談社の「企画力・編集力」は、Kickstarterの活動にどう生かされているのでしょうか。

中田:Kickstarterは、クリエイターと世界をつなげる架け橋のような存在だと自認しているのですが、講談社は、そんなKickstarterと日本の皆さんをつないでくださる架け橋だと思っています。クリエイターは、自らのストーリー、世界観を紡ぎながら世界とつながっていくわけですが、その際にストーリーテリング、物語を紡ぐプロである講談社の編集者の力は心強いです。

市原:ありがとうございます。クリエイターの中には、個人でその才能や技術を磨いていける人もいらっしゃいます。でも、おそらく圧倒的多数のクリエイターは「もう1人の視点」を得ることによって、自分1人では持ち得ない「客観性」を手に入れ、さらに自分の才能を磨いていくことができるのではと考えています。

『DAYS NEO -デイズネオ-』講談社の担当編集者を逆指名できる漫画投稿サイト
『DAYS NEO -デイズネオ-』講談社の担当編集者を逆指名できる漫画投稿サイト(サイトを見る)

市原:私は漫画の編集業務に20年近く携わってきましたが、どんな才能を持つクリエイターも、自分の作品に対して他者がどのように感じるか、フィードバックを求めています。編集者としてクリエイターの方々の最初の他者となり、その才能に寄り添って共に考えていく存在は必要だと思っています。

こういう言い方は不遜になってしまうのかもしれませんが、全く自由に、たった1人で羽ばたいていけるクリエイターはごく一部の方々なのではないかと思います。それは編集という生業をしている講談社が、これだけ長く存続してこられた理由でもあります。

パートナーシップ締結に際して、握手を交わすアジズ・ハサン(Kickstarter CEO)と野間省伸(講談社社長)
パートナーシップ締結に際して、握手を交わすアジズ・ハサン(Kickstarter CEO)と野間省伸(講談社社長)

―このパートナーシップで、これから取り組んでみようと考えていることはありますか?

市原:私たちが接するクリエイターは、漫画家や小説家、イラストレーターが多いのですが、もしかしたら他のフィールドにいるクリエイターとも関わることができるのではないか。その可能性を探れるのではないかということがあります。

また、私たちは主に国内市場に向けて作ってきたのですが、私たちの作っているコンテンツはもしかしたら海外の方々にも届けられるのかもしれない。そしてKickstarterというパートナーとともに、様々な実験ができるのではないかという期待もあります。

そしてもう1つは、海外のクリエイターに対して何らかの形で貢献できるのではないか。まだまだ先の話なのかもと思いますが、海外のとある子供が描いたイラストを私たちが「編集」し磨き上げ、それが世界的なキャラクターへと成長していくかも……なんて、想像するとものすごくワクワクしますね。

―KickstarterはPBC(Public Benefit Corporation。ある基準を満たした公益性の高い企業に対して与えられる民間認証)であり、利益だけでなく社会や環境に与える影響を考慮する決定が、法的に義務付けられていることも大きな特徴の1つですよね。

中田:そうですね。Kickstarterのミッションは「クリエイターを支援すること」で、オンラインプラットフォームという立場を超えて、アーティストやクリエイターの問題解決に取り組んでいます。

そのために毎年、税引後の利益5%を芸術や音楽教育、社会の不平等と戦う組織などに寄付するミッションも含まれており、その寄付対象についても報告しています。

Kickstarterのベネフィットステートメント
Kickstarterのベネフィットステートメント(サイトを見る)

中田:例えば2019年は、ニューヨークのフードバンクやトランスジェンダーの支援団体、芸術に関する教育機構など14団体に売り上げの一定額が寄付されました。また、クリエイターに対して発表の場をオンラインだけでなくリアルでも提供してきました。

現在はコロナ禍で難しいのですが、様々なイベントを主催したり、Kickstarter本社内にある映画館で上映会を行ったりすることで、バッカー(支援者)以外の人々にも広く知ってもらう機会を提供しています。

2019年、Kickstarter本社内シアターで開催された『Radical Film Fair』
2019年、Kickstarter本社内シアターで開催された『Radical Film Fair』

市原:同じ企業として、本当に潔いなと思います(笑)。世界中のクリエイターをサポートしたいという理念を、突き詰めていくとPBCになる。

利益追求以外の取り組みをすることで、他のクラウドファンディングとは一線を画すことができますし、Kickstarterの元々の魅力を増していくこともできる。

そうした理念に共鳴し、より多くのクリエイターが参加する可能性もありますよね。10年後がどうなっているのか分からない変化の激しい今の世の中において、自分たちらしさを失わないための重要な選択だったのだと思います。

Kickstarterブルックリン社屋
Kickstarterブルックリン社屋

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