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「TENET テネット」特集 著名人コメント&クリストファー・ノーランインタビュー – 映画ナタリー 特集・インタビュー

「ダークナイト」「インセプション」「インターステラー」などで、世界中の映画ファンを沸かせたクリストファー・ノーラン。3年ぶりに満を持して放つ最新作「TENET テネット」が、アメリカをはじめ世界中で大ヒットを記録中だ。本作の公開を皮切りに再始動した劇場もあり、「観客を映画館に連れ戻した」と話題沸騰。日本でもいよいよ9月18日に全国公開を迎える。

映画ナタリーの特集では、日本のクリエイターたちが人類未体験の“時間の逆行”をひと足先に体感。アニメ界から「さらざんまい」の幾原邦彦、「HELLO WORLD」の伊藤智彦、マンガ界から「左ききのエレン」のかっぴー、「あさひなぐ」のこざき亜衣、「僕だけがいない街」の三部けい、「彼方のアストラ」の篠原健太、「プラネテス」の幸村誠、「東京卍リベンジャーズ」の和久井健、そしてイラストレーターの中村佑介にコメントを寄せてもらった。また日本映画界からも絶賛の声が続々と届いている。

さらにオンライン形式で行われたノーランのインタビューもお届け。「映画の可能性」を強く信じるノーランが、数あるジャンルの中からスパイ映画を作った理由とは? 「007」シリーズからの影響や大きな見どころとなっている“逆行する時間”描写の撮影方法も明かしてくれた。

インタビュー取材・文(P2) / よしひろまさみち

※五十音順で掲載

幾原邦彦(アニメーション監督)

幾原邦彦

このコロナ禍の中でこそ、観るべき映画だ。我々は、この危機の時に、何を選ぶのか、どう選ぶのか。ノーランの映画に共通して提示される「死と再生」のモチーフだが、今作は、まさにその決定版と言える。

「わからない映画」というのは山ほどあり、その大方はただ退屈なだけだが、何度も観たくなるのがノーランの映画だ。設定のロジックを追うことに逸れてからが、この映画の楽しみの醍醐味だ。観終わってからすぐにもう一度観たくなる。これほどワクワクする映画体験は稀有だ。

そう、この作品は「体験」することが一番大切で、このコロナ禍の喧騒と混乱を駆け抜ける時代的体験がここにあるのだ。今、だからこそ、観よ。

プロフィール
12月21日生まれ、徳島県出身のアニメーション監督。代表作にテレビアニメ「少女革命ウテナ」「輪るピングドラム」「ユリ熊嵐」など。2019年には原案、シリーズ構成、音響監督、監督を担当した「さらざんまい」がフジテレビのノイタミナで放送された。

伊藤智彦(アニメーション監督)

伊藤智彦

この現代に「悪の組織から世界の滅亡を防ぐ」という化石化されたプロットを全く観たことのないエンターテイメントに仕上げるノーラン恐るべし!

今、劇中で何が起きているのかを思考の限りを尽くして追いかけている2時間30分。観終わった時の疲労感は映画体験のそれとしてかつて味わったことのないものでした。

タイムトラベルを筆頭に「時間」を取り扱った作品は山のように存在しますが、ノーランの傑出したオリジナリティにより、他に類を見ない、時間芸術たる映画の新境地が開かれました。あえて言うなら子どもの頃に藤子・F・不二雄先生が見せてくれたものを大人になって再解釈したような感覚も抱いています。

視覚情報だけでなく全身で本作を体感するためにもIMAXフルサイズでの鑑賞を強くお勧めします。まずは「考えるな、感じろ」です。

プロフィール
1978年10月20日生まれ、愛知県出身のアニメーション監督。2012年に監督2作目となるテレビアニメ「ソードアート・オンライン」が話題を呼び、のちに「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」で長編初監督を果たす。2019年には「HELLO WORLD」が公開。現在は監督を務める「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」がフジテレビのノイタミナで放送中。

かっぴー(マンガ家)

かっぴー

久々に映画館で「誰かと語りたくなる映画」が観たかったところでした。あのシーンって実は伏線だったよねとか、あの台詞の意味ってさとか。ひとつのアイデアを徹底的に視覚化し、そのルールで最大限に遊び尽くすノーラン監督の特色がギラギラしています。「インセプション」が好きな人はもちろん、「インターステラー」で頭を抱えた人でも最後までノンストップで楽しめる映画です! 皆さん一緒に語りましょう!

プロフィール
1985年生まれ、神奈川県出身のマンガ家。2015年、Web制作会社に勤務しながらnoteに投稿した「フェイスブックポリス」が話題を集め、2016年にマンガ家として独立。「左ききのエレン」が2019年、「おしゃ家ソムリエおしゃ子!」が2020年に実写ドラマ化された。Web上で発表した小説「アイとアイザワ」はうめによりマンガ化され、2020年に舞台化もされた。現在、作画にnifuniを迎えた「左ききのエレン」リメイク版が少年ジャンプ+で連載中。株式会社なつやすみの代表取締役社長も務めている。

こざき亜衣(マンガ家)

こざき亜衣

凄い。何が凄いって、ちゃんと観たのに10%くらいしか理解出来なかった。なのに、めちゃくちゃ面白かった!!
一体なんだったの? これ一回で理解できる人いるの? スタッフやキャストは理解出来てるの? クリストファー・ノーランの頭の中はどうなってるの? 超難解な大人の映画ドラえもん?
何度でも言うけど、こんなにわからないのになんで面白いの??!?
……あと何回楽しめるんだろうこの映画。一生かな。

プロフィール
マンガ家。2007年に「さよならジル様」で、ちばてつや賞一般部門大賞を受賞しデビュー。2011年より週刊ビッグコミックスピリッツにて連載していた「あさひなぐ」がこのほど完結。同作は2015年に第60回小学館漫画賞一般向け部門を受賞した。2017年には実写映画が公開され、舞台も上演されている。

三部けい(マンガ家)

三部けい

正直結構構えて試写室に入った。「時間」をテーマにした作品だからと、勝手に難解な展開を予想して。でもそんな必要は全くなかった! 難しい理屈に拘らず、ただ楽しむのが正解。
「時間の逆行」の解釈、手法は本当に斬新。ただ、C・ノーラン監督が凄いのはその設定に拘り過ぎず、ある意味「ドンマイ」的(笑)手法も使い、判り易くユーザーフレンドリーな作りになっている所。
「済んだ事は仕方がない」に抗う主人公、仲間や敵を取り巻く状況、行動の「不可解」が謎解きと同時に次々カタルシスに変わっていく感じ! その過程を登場人物達と一緒にビジュアルとして体験していく感覚に拍手喝采です!

プロフィール
北海道出身のマンガ家。2012年から2016年にかけて連載した「僕だけがいない街」は実写映画、連続ドラマ、テレビアニメ、ノベライズなど、さまざまなメディアで展開された。現在は「夢で見たあの子のために」(KADOKAWA刊)、「水溜まりに浮かぶ島」(講談社刊)を連載中。

篠原健太(マンガ家)

篠原健太

いやあ映画監督は羨ましい。これは絶対に漫画では表現出来ない、悔しい!という映像だった。
とにかくブン回される映画だ。展開は複雑で目まぐるしく「ついて来れないヤツは置いてくぞスタイル」。順と逆の共存。伏線回収。脳はしびれ、ねじれ、裏返る。
よくこんなの思いつくなあ、と言うより思いついてもよく映像にしようと思うなあと感服せずにはいられない。このアイディアを聞かされたスタッフは耳から煙が出てたんじゃないだろうか。
でも思いついちゃったんだからしょうがない。作家は頭の中を表現せずにはいられないのだ。
しかしこのぶっ飛んだイメージを実写化するには一体どれほどの労力と実行力と統率力が必要だったのだろう…。
いやあ漫画家でよかった。

プロフィール
マンガ家。2007年から2013年まで週刊少年ジャンプで連載した「SKET DANCE」が、2010年に第55回小学館漫画賞少年向け部門を受賞し、2011年にテレビアニメ化された。2016年から2017年に少年ジャンプ+にて発表した「彼方のアストラ」は、マンガ大賞2019の大賞などを獲得。同作も2019年にテレビアニメが放送された。

中村佑介(イラストレーター)

中村佑介

「覆水盆に返らず」。一度してしまった失敗は取り返しがつかないという意味のことわざだが、この映画ではカセットテープの逆再生の如く時間を巻き戻し、ついに「覆水盆に返る」。しかしそれは同時に、水以外も戻ってしまうということ。つまり元々こぼれたことすら誰も知らない状態へ戻る。そこでノーラン監督はカメラを構え、主人公と我々だけに秘密を共有させた。それはそれは恐ろしくも愛おしい真実を。

プロフィール
1978年生まれ、兵庫県出身のイラストレーター。大阪芸術大学デザイン学科卒業。ASIAN KUNG-FU GENERATION、さだまさしのCDジャケットをはじめ、「謎解きはディナーのあとで」「夜は短し歩けよ乙女」、音楽の教科書など数多くの書籍カバーを手がける。画集「Blue」と「NOW」は13万部を記録中。

幸村誠(マンガ家)

幸村誠

出だしからテロ! 銃撃戦! 「名もなき男」絶体絶命に逆行する弾丸!
「え!? 今の何!?」とにかくこの、いつもの世界に「逆行」する物質があるということがボクの脳内を大混乱させましたが、同時に「あ、大丈夫だ。この映画は脳ミソ大混乱を楽しむ映画なんだな」と理解しましたので、安心して混乱に身を委ねながら楽しみました。「途中でわかんなくっても大丈夫だ、ノーラン監督にお任せしよう」と。
通常時間の物語進行の端々に逆行性の「結果」がチラ見えするのって面白いですね! 今までに観た事なかったです。なんだか物語に脈絡なく逆走する車、なぜか窓ガラスや服に銃撃された穴が開いてる、などなど。過程より先に結果が出現するんだもの、そりゃ混乱する。でもそこですよね、「あーこの人撃たれちゃうんだこれから、どうやって撃たれるんだろ」とか想像しながら観るという、前代未聞のネタバレスレスレの伏線。超面白い。
気が付くと同時に「えー!?? そんなことある!?」という驚き。なんにしろ「逆行」というアイデアがもたらす、これまでのタイムパラドクスものにない新しい表現ですよね。1週間前の事象に干渉しようとする時には、逆行状態のまま1週間どっかで時間を潰す必要があるというのも面白かったなあ。いわゆるよくあるタイムマシンには作り得ない状況で興味深かったです。「逆行」戦略が無敵ではなく、その性質ゆえに様々な制約や不都合があるのもいいですよね。通常のように空気が吸えないって、言われればなるほどと思います。
「インターステラー」でもそうでしたが、ノーラン監督の「観客が一度も見たことないものを見せたい」という熱意、パワーを本作にも感じました。もちろん設定上の無理も感じましたが、それはもうタイムパラドクスものには付き物ですもの。それはいいんです。「通常空間に時間が逆行する物がある」という無茶な映像を実現させたクリストファー・ノーラン監督、やっぱりスゲエ!に尽きます。繰り返しますが「混乱に身を任せる」が楽しむコツかなと思います。

プロフィール
1976年5月4日生まれ、神奈川県出身。1999年モーニングに宇宙ゴミの掃除屋を描いた「プラネテス」でデビュー。2002年に星雲賞コミック部門を受賞、のちにアニメ化もされ星雲賞メディア部門を受賞した。その後、2005年に「ヴィンランド・サガ」の連載開始。週刊少年マガジンから月刊アフタヌーンへ移籍して現在も連載が続く。2019年にはアニメ化もされた。

和久井健

和久井健

おもろー!!
難解なノーラン作品はそのままに頭使わないで映画観たい僕みたいなのすら置いてかない演出に感動!
全部が伏線で全部が回収!
ラストが分かった上でもう一回みたくなる!
あとこれだけは言わせて欲しい。
ロバート・パティンソンかっけー!!

プロフィール
マンガ家。2005年に別冊ヤングマガジンに掲載された「新宿ホスト」でデビュー。同年同誌にて「新宿スワン」の連載を開始する。2015年には実写映画化を果たした。現在は週刊少年マガジンで「東京卍リベンジャーズ」を連載中。同作は2021年に実写映画の公開、テレビアニメの放送が決まっている。

日本映画界からも絶賛の声が続々!

※公式サイトより抜粋

大友啓史(「るろうに剣心」シリーズ監督)

冒頭から、いきなり未体験ゾーンに放り込まれる。生々しさに満ちた迫真の映像と、全身を揺さぶる音響体験。時間軸の常識を破壊する、緻密に張り巡らされた迷宮世界。驚きのつるべ打ちに心を奪われ、一瞬たりとも見逃せない。“逆行”をめぐるノーランの壮大な実験は、コロナに喘ぐ我々の「生きる時間」をも逆行させ、観客を劇場での原初的な興奮に引き戻す。映画への圧倒的な信頼と、それを成立させる精緻な美意識と最先端の技術。そして、研ぎ澄まされた創造への狂気。たまらない。あと数回観ないとね。

「TENET テネット」

小泉徳宏(「ちはやふる」シリーズ監督)

もうなんか、なにもかもが“異次元”。そんなありがちな賞賛を言葉通りの意味で使えてしまう凄まじさよ。この時代にあってもなお、真に映画館で体験するべき映画を生み出せる、数少ない映画監督の一人。早々に業界を引退して、黄昏の時を生きながら、ノーランさんの新作を楽しみに待ち続ける人生も悪くないな、って思わせられた。

白石和彌(「孤狼の血」監督)

疾走感のある目まぐるしい展開に脳髄からドーパミンが溢れて逆流する。ノーランだけがたどり着くことのできる超絶映画。この映画体験を逃したら、これ以上の人生の損はない。可能な限りデカいスクリーンで見るべし!

羽住英一郎(「太陽は動かない」監督)

ノーラン監督によって複雑に張り巡らされた罠と驚きに満ちたこの世界を、圧倒的なまでにブレない主人公のヒロイズムが観客の心を掴んで離さずに一気に駆け抜けさせる! 観終わった瞬間からすぐにでも二度三度と観たくなる衝動を抑えきれない衝撃作!

樋口真嗣(「シン・ゴジラ」監督・特技監督)

凄い。凄すぎて一度観ただけでは その凄さが正確に把握できないではないか。普段使わない部位に刺激があったのだろう、一日経った今でも脳幹が痺れている。凄すぎて今まで観たどの映画も当てはまらないし凄すぎてこれから先、誰もマネができない。異生物も、ヒーローも、宇宙船も出てこない。我々が暮らしている世界にあるものを組み合わせただけなのに、その刺激的な体験に、後からじわじわと興奮がこみ上げてくる。二度、三度観ても、新たな発見と驚きが待っているだろう。映画って凄い!

「TENET テネット」

二宮健(「とんかつDJアゲ太郎」監督)

クリストファー・ノーランと共に時代を歩み、2020年に「TENET」を体験できる。僕たちはなんて贅沢を手にしてしまったのだろう。映画界の命運を握るこのタイミングで、彼が時代をアップデートしようとしている「TENET」は絶対観て欲しい。

山崎貴(「STAND BY ME ドラえもん」シリーズ監督)

まさに「ドラえもんスーパーハードバージョン」あるいは映像による150分の回文。始まりが終わりで終わりが始まりで、アレがこれでコレがあれで…脳みそが確実にオーバークロックします。ノーランはまたもや誰も足を踏み入れたことの無い場所にとんでもないエンタメの金字塔をうち立ててしまいました。

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クリストファー・ノーラン インタビュー
映画に何ができて、どこへ連れて行ってくれるか、
その可能性を感じてもらいたい

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