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ガチで怖すぎる『呪怨』のドラマ、人気の理由は…? | Lmaga.jp

主人公の小田島演じる荒川良々。Netflixオリジナルシリーズ『呪怨:呪いの家』独占配信中

見だしたら止まらない動画配信のドラマを、映画評論家の田辺ユウキがセレクト。今回は、2020年の数ある映像作品のなかでもピカイチのおもしろさを持つ、Netflixのオリジナル作品『呪怨:呪いの家』。元ネタは、世界的大ヒットを記録したJホラーの金字塔『呪怨』シリーズ。

とはいっても、今作は映画とはがらりと雰囲気が違っている。住人たちの変死、失踪が相次ぐ呪いの家の舞台に、心霊研究家・小田島(荒川良々)が事件の真相を追いかけていく、この物語。7月に全6話の配信がスタートするやいなや「ガチで怖い」と評判が拡大。なぜ『呪怨:呪いの家』はウケたのか? 今回は、そのおもしろさについていろんな角度から紹介していきたい。

まず、日本映画界で期待される男、三宅唱について・・・

インディーズ系の日本映画について詳しく知らない人には、まだまだ聞きなれない名前かもしれない──三宅唱(みやけしょう)監督。ボウズ頭にストリート系ファッションで、イマドキの兄ちゃん感あふれるその見た目はおよそ映画監督とは思えない。しかし、手がけた作品は「これぞ映画!」と思えるほど充実したものばかり。

代表作は、40歳を目前に人生に行き詰まる俳優(村上淳)が、プロデューサー(菅田俊)から「選択と結果の積み重ねで今があるんだろ?」と現状を突きつけられる映画『Playback』(2012年)。高校時代へとタイムスリップした彼が過去を再体験する展開と、「撮影現場で同じセリフと動きを何度も繰り返すことで演技を作りあげる」という役者の特性を結びつけ、「俳優とは何か?」について構造的にストーリー化した作品だ。

また柄本佑、石橋静河、染谷将太が共演した『きみの鳥はうたえる』(2018年)は、若者たちが夜遊びをする姿が印象的。なかでもクラブのシーンは、店内に鳴り響く音楽の音量、言葉の聞き取りづらさなど、それぞれのボリューム感が見事だった。踊り疲れて休む姿にもリアル感があり、とても肉体的な映画だった。

『呪怨:呪いの家』は、さまざまな時代を行き来するところや、街のざわめきなどで日常性を表現する部分など、これまでの三宅作品のテイストが見え隠れしている。

人気キャラ、伽椰子も俊雄くんも出てこないが・・・

かつての『呪怨』シリーズといえば、「ア“ア”ア“ア”ア“――――」の奇怪なうめき声(声を担当したのは監督の清水崇)を発する伽椰子、白塗りで神出鬼没な俊雄くんがおなじみだ。

ただシリーズがあまりにヒットし過ぎて、伽椰子や俊雄くんは、バラエティ番組などでもモノマネをはじめいろんな面でコスられまくり、パロディ化。作品外での露出が増えたことも要因となり怖さが薄くなってしまった。

たとえば、おなじくJホラーの代表作『リング』シリーズの貞子も、近年では新作公開にあわせて始球式のキャンペーンをおこなったりして、不気味さを笑いに変えたことでキャラクターの本質が変容。白石晃士監督の『貞子vs伽椰子』(2016年)は、かつては怖かったキャラクターの現状を批評的にとらえ、モンスターバトル映画にすることで1990年代から続いてきたJホラーブームのひとつの区切りを作った。

『呪怨:呪いの家』は、「俊樹くん」という俊雄くんをもじった少年は出てくるが、全編でホラーモンスター的な要素はほとんどない。むしろ今作は、呪いの家に漂う気配が怖い。何も映っていないのに「何かいるんじゃないか」というイヤな雰囲気が伝わってくる。

2020年7月10日に公開されたばかりの『透明人間』でも、透明人間のモンスター性に頼らず、誰もいないのに「誰かが息を潜めてそこにいるかも…」という気配の怖さを際立たせた。『呪怨:呪いの家』もまた然り。不穏な空気をどのように撮るかに挑戦している。

第5話より、豹変していく河合聖美を演じる里々佳。Netflixオリジナルシリーズ『呪怨:呪いの家』独占配信中

本当は何が、「人」を殺すのか!?

本作は、第1話「『呪怨』は実際に起きた出来事を参考に作られた」という荒川良々演じる小田島の語りから始まる。その言葉があらわす意味は、いったいなんなのか。

今回のドラマでは、各登場人物が巻き込まれたり、起こしたりする出来事は、実際の凶悪事件がモデル。男(松嶋亮太)が、妊娠中に不倫をしている妻(久保陽香)に対して凶行に走る第4話は、1988年の名古屋妊婦切り裂き事件や2000年の世田谷一家殺人事件を彷彿。また高校時代に心身を傷つけられた経験を持つ聖美(里々佳)の行動を映す第5話は、園子温監督『恋の罪』(2011年)の着想元でも知られる東電OL殺人事件がモチーフとなっている。

近年、ホラー作品は『ほん怖(ほんとにあった怖い話)』をはじめ、「実話が題材」と打ち出すものが多い。また『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)が起点となり、動画サイトの恐怖映像、テレビのオカルト番組はフェイクドキュメンタリーっぽいものが増えた。視覚的にも、心理的にもいかにリアルにみせるか。それを観賞者に自覚させて、恐怖を演出する時代になっていった。

『呪怨:呪いの家』も、「実際に起きた出来事を参考に作った」という導入でも分かるように、事実をもとにした小田島の創作怪談話であるという設定。小田島自身「僕はノンフィクション作家ではない」と言う場面もある。

ただ本作は、この社会には超常現象をこえるような出来事が多数起きていて、それらは人間の凶悪性、精神状態の不可解さがもとになっていることを描いている。先述した導入部分で小田島は、「実際に起きた出来事は、映画よりも遥かに恐ろしいものだった」と続けて語っている。

1988年の連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤をモデルにしたM君(柄本時生)というキャラクターも出てくるが、実際に宮崎勤の影響で事件翌年にはホラー映画が上映規制され、以降も犯罪の原因として映画、アニメ、ゲームなどがやり玉に挙げられるようになった。そんな背景もあってか、この『呪怨:呪いの家』では幽霊が人を殺す場面はない。つまり「ホラー」は人を殺さないのだ。では、みんな誰に殺されるのか? リアルに怖いものは何なのかを物語っている。

◆◆◆

『呪怨:呪いの家』は続編を待望する声が続々とあがっている。まちがいなく2作目は製作されるだろう。この新『呪怨』シリーズで、ネクストJホラーがはじまりそうな予感がする。

文/田辺ユウキ

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