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コロナ下の映画製作 どうする?フリーの不利益:東京新聞 TOKYO Web

 コロナ禍で映画界の混乱は続いている。6月から多くの映画館が開き、一部で撮影も再開されたが、製作陣は「密」の回避に追われるなど手探りの状況だ。中でも、フリーランスの製作者はスケジュールが白紙や大幅な変更になったり、無収入になったりと大きな影響を受けている。不安定な立場のフリーの映画人たちに苦悩を聞いた。 (竹島勇)

◆口約束改め契約書整備を

撮影助手の高橋直樹

 撮影助手の高橋直樹(48)は四月一日、撮影が始まって間もない新作の製作中止をロケ先で告げられた。五月中旬まで撮影する予定だったが、仕事がなくなってしまった。

 是枝裕和、岩井俊二ら名だたる監督の作品に携わってきた高橋。今回、契約書はなかったが交渉を重ね、満額ならば七十数万円の報酬のうち、何とか約五十万円を受け取ることができた。

 高橋は「きちんとした契約を結ばず、口約束で仕事が決まる業界慣行を変えるべきだ」と強調する。「『何日から何日まで空いてる? じゃお願い』のようなやり方がまだ続いている。感染判明などで急に撮影が中止になった時、報酬をどうするのか。契約書がなければ請求しづらい人もいる」と問題点を指摘する。

 米動画配信大手のネットフリックスが日本向けにスタッフの生活支援のための基金を設立し、受給者を募集した。しかし、高橋は「証明書類として過去の制作会社などとの契約書や発注書の写真などを求められたが、なくて困った。フリーの仲間も同じ。日本(の映画製作)のずさんさを批判された気がした」と漏らす。

 六月にCM撮影が四本あり、現場は整備された撮影ガイドラインに沿って行われたが「密な状態となっても撮影が続行されたのが実情だ」と明かす。

         ◇

◆仕事も収入もゼロ

大日方教史プロデューサー

大日方教史プロデューサー

 故若松孝二監督(一九三六〜二〇一二年)のもとで経験を積んだ大日方教史(おびなたたかひと)(54)は撮影現場の工程を調整するラインプロデューサー。今秋公開予定だった「のさりの島」(山本起也(たつや)監督)が来年に延期となり、六月に撮影開始予定の作品は四月末に中止を決めた。同月以降、仕事と収入はゼロになった。

 中止となった作品は、四国のある地域で全編ロケの予定だったが、「感染者が出れば撮影側もロケ地も大変なことになる。四月の段階で東京から行って『下見をさせて』と地元の人に言える状況でなくなった」と苦渋の表情で語る。

 大日方は「消毒などコロナ対策に気を配ると、時間もかかり撮影の予算が膨らむ。感染者が出れば撮影はストップし、死者が出る場合もある。今までにない撮影の脅威だ」と話す。

◆作品内容に影響 脚本書き換えも

大九明子監督

大九明子監督

 四月十日公開予定だった「甘いお酒でうがい」(松雪泰子主演)が延期となった大九(おおく)明子監督(51)は三月中旬、別作品の撮影を開始。検温や消毒、マスクやフェースシールドの着用を徹底してきたが、四月七日の緊急事態宣言直前にやむなく中断。六月末に何とか撮影を再開し、今月五日に終えた。

 日本映画製作者連盟などの撮影ガイドラインを守り、専任の衛生管理スタッフも配置した。幸い作品にハグやキスシーンは無かったが、海外ロケは中止、現地スタッフが撮影した映像を使うことにした。

 大九監督は今後、作品内容へコロナの影響が出るのは当然とみる。実際、撮影した新作では自身で手掛けた脚本を書き換え、繊細な登場人物に感染症対策のマスクを着用させるなど“コロナ仕様”にした。

 ウイズコロナ、ポストコロナ時代の映画製作を「現実と同じように、人々がマスクを着け感染におびえている状況なのか、それとも現実とは異なりマスクをせずコロナの脅威のない世界の物語を描くか。それをまず考えることになる」と思索を重ねている。

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