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PLAN 75 特集: あらすじ・キャスト 【大問題作】75歳の人が“死を選べる”日本… – 映画.com

本年度カンヌ国際映画祭・カメラドール特別表彰
ここは75歳の人が“死を選べる”社会になった日本…
あなたはどう生きる? ラスト、静かな希望が溢れ出す

誰もが予想もしなかったであろう未曽有のパンデミックを経て、映画ファンそれぞれの映画への向き合い方にも、少なからず変動が生じたのではないか。

例えば、ちょっとやそっとの「問題作」には動じなかったり、「衝撃作」が響かなかったり……。

そんな時代を切り裂く、正真正銘の問題作が誕生した。タイトルは「PLAN 75」(6月17日公開)、物語は「満75歳から“死を選べる”社会になった日本」を描いている。

この設定を聞いただけで、ぞくりとさせられるような衝撃性と現代社会への痛烈な批評性が伝わってくる。その中身は、何を映し出しているのか……? 我々の感情に強く訴えかけ、絶望と希望が胸に迫る問題作の魅力を、あらすじ、キャスト、作り手の想いを交えて紹介する。

【予告編】

衝撃の物語、胸に迫るテーマ、予想を覆すラスト――
初長編がカンヌで特別表彰、世界が驚愕した“問題作”

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世界3大映画祭であるカンヌ国際映画祭に正式出品され、カメラドール特別表彰を受けた、とのニュースで「PLAN 75」の存在を知った方も少なくないはず。あのカンヌが激賞した、というだけでも本作にかかる期待度がうかがえるが、その中身は設定の鋭さに負けず劣らず、どのパートにおいても高いクオリティを保った“傑作”である。

物語全体の緊張感と心を揺さぶるエモーション、現実社会とオーバーラップするテーマ性、スタッフ・キャストの仕事ぶり……。どこを切っても一級品の完成度に仕上がっている。革新的であり、確信犯的な問題作といえるだろう。

[あらすじ]近い将来の日本 満75歳から生死を選べる制度が施行された

まずは、物語設計の見事さについて語っていこう。舞台は「満75歳から生死の選択権を与える制度『プラン75』が国会で可決・施行された」日本。この制度に人生を左右される人々を、「対象者」と「施行する側」「その間に立つ人間」といった様々な立場で描いているのだ。

高齢を理由に、ホテルの客室清掃の仕事を解雇された角谷ミチ(倍賞千恵子)。プラン75の加入を検討し始めた彼女は、市役所のプラン75申請窓口で働くヒロム(磯村勇斗)や、コールセンタースタッフの瑶子(河合優実)と出会っていく。一方、フィリピンから単身出稼ぎにきた介護職のマリア(ステファニー・アリアン)は、娘の手術費を捻出するべく、プラン75関連施設に転職するが……。

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「プラン75」という制度が導入されると、人々の生活や思考はどのように変化していくのか。多様な年齢・立場から多角的に映し出していく本作は、見る者それぞれに「自分だったらどうするだろう」と考えさせ、共感させる“受け皿”の広さを有している。

つまり、ミチと同世代の人だけでなく、ヒロムと同じ若者世代を含め、誰が見ても“自分事”として刺さる作品なのだ。

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[テーマ]死ぬことは、生きること 強烈な問題提起が、あなたの人生と響き合う

超高齢化&少子化社会のひずみは、現代の日本を生きる我々が日々痛感しているところではないだろうか。「PLAN 75」は、そこに果敢にも切り込んでいく。

「死を選べる制度」を描く作品となると、倫理的には“問題作”に違いないのだが、現実問題として挙がっているテーマであるぶん、我々の実感と結びつき、得も言われぬ感情を呼び起こしていく。

本作はセンセーショナルな作品でありつつ、様々な議論を呼び起こす社会派サスペンスでもある。映画&ドラマで社会の闇をえぐった「新聞記者」、痛烈なメッセージが見る者を震撼させた「由宇子の天秤」「MOTHER マザー」、直近の作品であれば、イランの死刑制度の問題点を題材にした「白い牛のバラッド」といった作品群に連なる、新たな衝撃作が誕生した。

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[監督]早川千絵、長編デビュー作がカンヌに選出 是枝裕和監督も応援、注目の逸材

本作の脚本・監督を務めたのは、なんと長編初監督作となる早川千絵。長編デビュー作がいきなりカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品され、カメラドール特別表彰を受けるという快挙を成し遂げた。

その「PLAN 75」は、2018年に公開された是枝裕和監督総合監修のオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」内の短編を長編映画化したもの。いわば、是枝監督に認められた逸材であり、それ以前にもフランス・韓国といった各国の映画祭で短編賞を多数受賞してきた。見事なストーリーテリングと演出力、現代社会への鋭い目線――その手腕を、劇場のスクリーンで確かめていただきたい。

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[キャスト]主演は倍賞千恵子、共演に磯村勇斗ら 魂の“揺れ”を全身全霊で体現

早川監督の想いを体現するのは、幅広い世代の実力派俳優陣だ。

「男はつらいよ」シリーズで一世を風靡し、近年では不老不死を題材にした「Arc アーク」といった意欲作にも出演する名優・倍賞千恵子が、制度に翻弄されながらも人間らしく生きようとするミチを熱演。名もなき市民に扮しながらも、時に気高ささえ放つ圧倒的な存在感で魅せる。

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対して、「東京リベンジャーズ」から「ヤクザと家族 The Family」まで幅広く活躍する若き実力派・磯村勇斗はリアリスティックな演技を貫き、仕事としてプラン75の加入者を増やしていかねばならない苦悶を繊細に表現。タイプの異なる“人間性”の演技が、見る者の魂をかき乱していく。

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【監督インタビュー】早川千絵はかく語りき
「死を差し出す、手を差し伸べる…どう生きたいか?」

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カンヌ国際映画祭での上映を終え、この力作が日本で劇場公開されるのももうすぐ。早川千絵監督は、今後ますます映画ファンが熱視線を注ぐ存在になっていくに違いない。

演出力、独自性、問題提起、注目度――。日本映画界の新たなる旗手・早川監督に、作品に込めた思いを聞いた。

●作品の背景にある「不寛容な社会」への違和感

まずは、「PLAN 75」が生まれた背景について。早川監督は「自己責任論がはばをきかせている日本の社会において、社会的に弱い立場にいる人々への風当たりが強く、どんどん不寛容な社会になっていっていると感じていました」と語る。“不寛容”は、コロナ禍においてより一般的な問題意識になってきたところがあるものの、それ以前から顕在化していた。

とはいえ、2018年公開の「十年 Ten Years Japan」で自作のテーマに引き上げ、問いかけを行うところに、早川監督の感度の高さを感じずにはいられない。ある種の“予見”といえるのではないか。

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●「PLAN 75」は「生きることを全肯定した映画」――

さらに早川監督は、こう語る。

「『十年 Ten Years Japan』内の短編では問題提起をするだけに留まっていましたが、長編ではその先に見出す希望を描きたいと思いました」

「生きづらい人に対して死の選択肢を差し出すような社会と、共に生きようと手を差し伸べる社会と、どちらに生きたいか。私は後者を望んでいます」

「希望」を大切にした作品製作の裏には、“コロナ禍で作品を届けること”に対する作り手としての葛藤と信念があった。

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「コロナ禍の経験は、映画の方向性に少なからず影響を及ぼしたと思います。世界が厳しい現実に直面している中、さらに人々の不安を煽るような映画を作るべきか悩んだ時期もありましたが、ただ単に問題意識を提示する映画ではなく、生きることを全肯定する映画にしたいと思うに至りました」

この発言から感じ取られるように、早川監督には作家性だけでなく、観客へのリスペクトも備わっている。「自分が観たい映画、好きな映画に近づけたいと思って作りました。説明過多な映画が好きではないので、おのずとこういう作品になったのだと思います」と語るものの、個人の価値観の押し付けではなく「観客の感じる力を信じようということは、常に意識していました」「この映画をどう受け止めるかは観た人の自由だと思います」と、自らバイアスをかけてしまうことを望まない。

「観る人によって無限に形を変える映画となることを願っています」。早川監督の言葉通り、「PLAN 75」は観客それぞれの心の中でじっくりと育っていく作品となることだろう。

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