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児玉徹郎監督&エグゼクティブPに聞く!『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は世界が求める“クールな”アニメ | アニメ | BANGER!!!

世界が待っていた『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』

『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の公開がいよいよ迫ってきた。思いもよらないアクシデントにより公開が遅れていたが、前作『ドラゴンボール超 ブロリー』から4年ぶりという劇場版への期待感を抱きながら、児玉徹郎監督と伊能(いよく)昭夫エグゼクティブプロデューサー(以下、EP)のインタビューに臨んだ。

『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

集英社でも初めてという単独作品部署「ドラゴンボール室」は2016年の設立当時から話題になっていたが、改めてその経緯をドラゴンボール室の室長でもある伊能昭夫EPに聞いてみた。

伊能:集英社としては作品の部署を立ち上げるのは初めての試みでした。私が編集長を務めるVジャンプで「ドラゴンボール超」が連載されていたのですが、これからはテレビや映画も含め総合的にチャレンジしていこうという動きがあり、ちょうど本作がスタートする時期と重なっているという経緯があり設立されました。具体的にはテレビアニメや劇場アニメをどのように展開していくか、さらにライセンスや商品化、特に世界中でプレイされるようになっているゲームについては、かなり突っ込んだ姿勢でプロデュースに参加しています。

本作について聞きたかったのは、予告編で垣間見えた世界観についてである。実写版バットマンなども連想させるアメコミ的要素クールな絵柄について、その意図を伊能EPにうかがったところ、控えめな返答の中にも本作は壮大な戦略作品なのではないかという予感にとらわれた。実際、2022年4月16日にフジテレビで放映された『ドラゴンボール超 ブロリー』(2018年)に対し「世界興行収入135億円」という打ち出しがあったので、あながち間違いでないのではないか。

伊能:確かに、ドラゴンボールの大きな命題は世界展開にあります。すでに世界中で人気があることは確かなものの、なかなかそれを視覚化(数値化)することができなかったのですが、前作『ドラゴンボール超 ブロリー』の興行収入が北米を中心としていい数字を残せたことで目標が見えてきました。今回は過去のそういったデータを踏まえ、国や地域ごとの展開を考えたいと思っています。

『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

アメリカにおける日本映画の状況

最新作『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は、以前にも増して北米での上映を意識しているという伊能EPの言葉をうかがい、さっそく北米で公開された日本映画の興行収入を調べてみた。それが下表となるのだが、前作『ドラゴンボール超 ブロリー』は現在ランキングの4位である。2015年の『ドラゴンボールZ 復活の「F」』が8,008,363ドルで16位であったのが、『ブロリー』はその3倍強となる30,712,119ドル(36億8548億円、1ドル120円)となっている。

『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

そして注意深くそのデータを見ると、『ブロリー』の公開館数は1,267なので、1館当たりのアベレージは24,240ドルとなる。もしもの話ではあるが、『ブロリー』が2,000館規模で公開されていたとすれば、『鬼滅の刃 無限列車編』(2021年)とほぼ同じ興行収入となった可能性もある。近い将来、北米で公開されるであろう『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の公開規模が拡大すれば、歴代2位、いや宣伝と評価次第では1位獲得も夢ではないかもしれない。

新感覚世代の監督起用

そして今回、世界に向けての期待を担って起用されたのが児玉徹郎監督である。実は、これは業界的に見ればかなりのサプライズなのである。というのも、東映アニメーションが制作する劇場作品のほとんどは東映アニメーション所属、あるいは在籍経験者が務めるのが一般的なのだが、児玉監督は東映アニメーションでもアニメのスタジオ出身でもなく、デジタル・クリエイターとしてキャリアをスタートさせているからだ。

『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

これまで『映画 キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!』(2017年)、『HUGっと!プリキュア 』(2018~2019年)、『スター☆トゥインクルプリキュア』(2019~2020年)のエンディングダンス制作・監督や、『ドラゴンボール超 ブロリー』の3DCGパートなど数多くの東アニ作品に参加しているものの、外部スタッフであった児玉監督がこのような大きな作品に起用されたということは、当然期待されるものがあってのことであろう。

伊能EPは「児玉監督がつくった過去のビジュアルを見て、常に新しい表現を求めている原作者・鳥山明先生の思いが叶えられるのではないかと感じた。そして実際、制作に入ると全幅の信頼が置ける才能であることが分かった」と述べているが、プロデュースサイドの期待を一身に担った児玉監督に、「ドラゴンボール」という一大コンテンツのプレッシャーについてたずねてみた。

児玉:本作の制作に入る前に、“今まで関わった人が色々と言ってくる”と言われ、改めて「ドラゴンボール」ってすごいコンテンツなんだなと思いました。実際、多くの方々から様々な意見が聞けてありがたかったです。プレッシャーがあったのではと言われますが、東映アニメーションの作品には随分前から参加していたこともあって、リラックスしストレスなくやれました。そうした状況の中で、まず気をつけなければと思ったことは、鳥山先生のデザインをしっかり意識し、ファンの期待を裏切らないクオリティを出したいという思いでした。

そして本作でやはり一番心がけたことは、作画(手描き)アニメーションのキャラクターやタッチを3Dで表現するためには、どうすればいいのかということです。今までの「ドラゴンボール」を見ている感じを持ってもらいながら、さらに新しい要素を付け加えられたらと思っています。

『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

児玉監督は新海誠、吉浦康裕(『アイの歌声を聴かせて』[2021年])、市川量也(『すばらしきこのせかい The Animation』[2021年]、『セブンナイツ レボリューション -英雄の継承者-』[2021年])といった監督同様、2000年代からの“一人でアニメをつくりはじめた”デジタル・クリエイター世代の一人である。その児玉監督がつくる作品の大きな魅力は、作画アニメと親和性のある、CGとは思えない“動き”にあった。特に人間の動きには傑出したものがあり、初期の自主作品を見た故・今敏監督が「日本で一番のCGアニメーションの使い手」と語っていたのを直接聞いたことがある。常に時代のトップを走ってきた児玉監督だが、「今回のような日本の本流をゆく大作アニメにも制作手法に変化が見えはじめてきた」と語る。

児玉:大変だった点は、新たな要素を加味する際の説明でした。なかなか伝わりづらいところがありましたが、実際に自分のやり方を見てもらい納得していただけました。それは、10年前には先進的すぎると言われて受け入れられなかった技術や表現だったのですが、今では当たり前に実現できるようになったという点も感慨深かったです。3Dに対する理解や生産性が上がったということもあると思いますが、やっていくうちにスタッフの間で理解が広がりイメージが伝わるようになりました。

意外と苦労した点としては、いわゆる“日常芝居”にありました。「ドラゴンボール」が得意とするバトルアクションについては今までの蓄積もあって苦労しなかったのですが、今回のシナリオはとにかくキャラクターが多く、その掛け合いも多いので、シーンの表現が大変でした。そのキャラクターが何を考えているのか、どういう動機でそうした行動を取るかなどを常に考えながら、スタッフに演技指導をしていました。

『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

プレッシャーは全く感じていないと述べていた児玉監督だが、長期にわたる制作期間を通じて、苦労しながらも、自身が考えるアクションのイメージをスタッフが最終的に理解してくれた、と飄々と語るところにスケールの大きさがうかがえた。そんな児玉監督による本作の可能性を、伊能EPが語ってくれた。

伊能:児玉監督はとても柔軟でした。今回はキャラクターが多いのでそれぞれを展開するのは大変なのですが、そこは想像を正しい方向に膨らませてくれました。スタッフも非常にレベルが高く、監督の要望によく応えてくれたと思います。映像の世界は“正解がない”と言っていいくらいなのですが、児玉監督のディレクションによってどんどん気づきが生まれ、可能性が広がりました。

今回の作品は一段ステージアップした新機軸、と言ったほうが正しいかもしれません。作画アニメが非常にいい感じで3Dに乗った感はあります。もちろん、ディズニーなどとは違った“日本のアニメ”の強みを残した新しい表現を実現することができました。

『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

クールな大人向けアニメを求めているアメリカ

アメリカではクールなアニメーションが求められている。何のことかと思われるかもしれないが、実はアメリカもいまだにアニメーションの中心はキッズ・ファミリー向けの「Cartoon」(カートゥーン)なのである。それを端的に示しているのが、アカデミー賞の長編アニメーション部門。同賞に長編アニメーション部門が誕生したのは意外と新しく2001年からだが、過去21回の長編アニメーション賞を獲得したのはピクサーが11回、ディズニーが4回である。他の受賞者であるドリームワークスなどにしても基本はキッズ・ファミリーアニメなのだが、そんな状況下に登場したのが2018年に同賞を獲得した『スパイダーマン:スパイダーバース』であった。

『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

この作品に関し、ガンダムの生みの親である富野由悠季監督が、2019年5月に宝塚大学東京メディア芸術学部の講演で、「この作品はアメリカの映画人にとって、初めて一般の小屋で“子供向けじゃない”ということで上映したアニメじゃないか」と語った。そしてこの、アメリカのアニメで初めてとも言える大人向け作品は、「アニメ界のアカデミー賞」と言われるアニー賞(7部門)や、ゴールデングローブ賞など主要な映画祭のグランプリをも総なめにしたのだが、同年に公開され歴代北米アニメーション興行収入1位となった『インクレディブル・ファミリー』を評価的に全く寄せ付けなかったのは、アメリカでも「Cartoon」ではなく「クールアニメ」が求められているという証拠であろう。そんな時代に『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』が公開される意味合いは大きく、「世界進出」の大きな鍵となる北米での公開には大いに注目したいところである。

『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

そして最後になるが、インタビューを通じ、監督が日本のアニメ制作に関し考えている重要なポイントがあるので伝えておきたい。なぜなら、これが実現すれば日本のアニメは間違いなく進化を遂げるからだ。

児玉:最近増えてきたセルルックのアニメーション(手描きのように見える平面的で輪郭線のある3Dアニメーション)はまだ途中段階で、本作も日本におけるアニメ制作の主流である「リミテッドアニメ」(作画枚数が制約されている制作手法)を引きずっているんです。ただ、いずれリミテッドアニメからの脱却、タイムシート(動きのタイミングやカメラワークが指定されている指示書)からの脱却によって自由にならなければならない、ということが課題として見えてきました。今後これをやり遂げないと、本当の意味での新しい<アニメ>の夜明けはないと感じました。

『ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー』©バード・スタジオ/集英社 ©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

今までの日本の<アニメ>制作を支えてきたリミテッド手法から脱却し、その基本となっているタイムシートを消滅させてしまおうという発想は、CGアニメーションに対するネイティブな感覚を持つ児玉監督でなければ生まれないものであり、まさに革命である。そんな児玉監督が手掛けた『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は、海外でも大いに「クール」と言われそうな予感がある。『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』、公開が楽しみだ。

取材・文:増田弘道

『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は2022年6月11日(土)より公開

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