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【コラム/細野真宏の試写室日記】「ARASHI 5×20 FILM」が映画業界に巻き起こす現象とは?<2021年興行収入ランキング> : 映画ニュース

2022年1月21日 09:00

「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)

来週の1月25日に映連(日本映画製作者連盟)から【2021年(令和3年)興行収入10億円以上番組】が発表される予定となっています。

これは、基本的には昨年12月12日時点の「文化通信社速報」データと大きく変化はないのですが、今年は「邦画実写No.1」に変化が出る可能性があるのです。

しかも、それがこれまでの映画業界では異例な状況であるため、今回は2021年公開作品の興行収入ランキングと、その考え方について整理しておきたいと思います。

まずは、昨年の12月12日時点では「2021年公開作品の興行収入ランキング」は以下のようになっていました。

【邦画】2021年 興行収入ランキング・トップ10
1位「シン・エヴァンゲリオン劇場版」102.8億円
2位「名探偵コナン 緋色の弾丸」76.5億円
3位「竜とそばかすの姫」65.3億円(12/12時点)
4位「東京リベンジャーズ」44.7億円
5位「るろうに剣心 最終章 The Final」43.4億円
6位「新解釈・三國志」40.3億円
7位「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」40億円~
8位「花束みたいな恋をした」38.1億円
9位「マスカレード・ナイト」37.7億円(12/12時点)
10位「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション」33.7億円(12/12時点)

【洋画】2021年 興行収入ランキング・トップ10
1位「ワイルド・スピード ジェットブレイク」36.6億円
2位「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」27億円
3位「ゴジラvsコング」19億円
4位「モンスターハンター」12.5億円
5位「エターナルズ」12億円
6位「シャン・チー テン・リングスの伝説」9.6億円
7位「ブラック・ウィドウ」9.5億円
8位「ジャングル・クルーズ」8.5億円
9位「トムとジェリー」7.9億円
10位「DUNE デューン 砂の惑星」7.7億円

※上記ランキングは「文化通信社速報」を参照

この中で(12/12時点)となっている「竜とそばかすの姫」と「マスカレード・ナイト」と「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション」は基本的に、数字が変わります。

具体的には、12月13日からの「続映の興行収入の加算」と、終映している場合は、すでに発売済みの前売り券において使われなかった「前売り加算」が加わります。

中でも、(12/12時点)という表記にもなっていない「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」については、2021年11月3日からDolby Cinemaで7館の劇場で先行公開され、2021年11月26日から200館で公開されたものなので、特にこの作品が大きく変わることになるわけです。

「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」は、公開規模が200館となってから8週目の週末1月16日時点で興行収入42億6328万円となっていて、今もまだ高稼働しています。

そのため、映連の2021年公開作品の興行収入ランキングでは5位か6位になっているかもしれませんが、最終的な「続映の興行収入の加算」と「前売り加算」を加えると、現在の邦画実写No.1の「東京リベンジャーズ」44.7億円を超える可能性が高くなってきているのです!

「東京リベンジャーズ」「東京リベンジャーズ」

では、なぜここまでの急上昇が可能かというと、それは通常の映画とは少し違った料金体系も関係があります。

通常の映画では、大人の基本料金が1800円~1900円で、それに各種割引などが加わって、1人当たりの平均料金は1300円~1400円くらいになります。

その一方で「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」では、「特別興行」という形での上映で、チケット料金は大人(大学生以上)が3300円のように固定されています。【ドルビーシネマの場合は、他の映画と同様に追加料金が必要】

そのため、1人当たりの平均料金は3000円を超える水準になっているのです。

つまり、通常の映画料金の2倍以上の平均単価となっているので、上手くいくと、かなりのスピードで興行収入を高めることが可能になるわけです。

これは、「これまでの映画業界では考えられなかった新たなビジネスモデルを示した実例」と言えます。

そもそも「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」は、2019年末に行われた嵐の東京ドームでのコンサートを映画用に125台のカメラで撮影し編集した「映画」となっています。

ただ、コンサートを臨場感が溢れる劇場で見られる、という建付けになっているため、「特別興行」という設定になっているのです。

一般的にコンサートは料金が割高になるため、今回の「特別興行」の料金体系は(生のコンサートに比べると)割安になっていると言えます。

そのため、今回のような需要と供給がうまく合った珍しいケースとなっているのです。

そして、今回の事象で注目したいのは、そもそも映画ランキングでは「興行収入」と「観客動員数」という2つの指標がある点です。

そのため、「興行収入」という指標で見ると「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」は、2021年公開作品の興行収入で「邦画実写No.1」と言える状況にまで到達すると想定されます。

一方、現時点の邦画実写No.1の「東京リベンジャーズ」は、おそらく続編もあるので、その際には、2021年公開作品の「邦画実写No.1」(観客動員数)という称号を使えるわけです。

ちなみに、どちらの作品も洋画より上なので、「邦画実写No.1」は「実写映画No.1」という表現も可能になります。

このように棲み分けがキチンとできるため、「単価が高めのコンサート作品は映画なのか?」というような不毛な争いは起きずに済み、今回の嵐による「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」は映画業界の新たな可能性を広げ、喜ばしい現象を巻き起こしたと言えると思います。

(映画.com速報)

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