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不屈の闘志 権力に迫る 配信ドラマ「新聞記者」 ネットフリックスで13日から:東京新聞 TOKYO Web

ドラマ「新聞記者」から。信念に従って突き進む主人公・松田杏奈を演じた米倉涼子

ドラマ「新聞記者」から。信念に従って突き進む主人公・松田杏奈を演じた米倉涼子

 二〇二〇年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞など三冠に輝いた「新聞記者」がドラマで帰ってくる。米動画配信大手のネットフリックスが十三日から世界同時配信するオリジナルドラマ「新聞記者」(全六話)は、映画版から内容を一新。近年の政治スキャンダルを題材に骨太の物語が展開する。映画版に続き本紙が撮影協力した。配信開始を前に、不屈の主人公・松田杏奈を演じた米倉涼子(46)、映画版に続き監督を務めた藤井道人(35)が思いを明かした。 (藤原哲也)

 「今までの癖ややり方を覆してくれた。そういうものを一回解き放ってしまう勇気が必要な作品だった」。苦悩と忍耐の撮影を、米倉はそう振り返る。

主演・米倉涼子

 第一話の記者会見から、新聞記者の松田は激しい質問を浴びせ、忖度(そんたく)なしで政権の疑惑に切り込む。これまで米倉が演じてきた、強く負けないキャラクターを彷彿(ほうふつ)とさせる。米倉自身も撮影前は同様のイメージを思い描いていたが、実際は違った。

 「最初の撮影で、監督から『もう少し抑えて』『もっと小さな声で』と言われて…。自分の中でバランスが分からなかった」

 取材対象に寄り添う繊細さも兼ね備え、強さだけではない松田。彼女を内面から表現しようという手探りが試練の始まりだった。

 「一回でOKなんてない」という藤井監督の撮影手法。同じシーンを何度も撮影する中で「人間不信というより自分不信になった。松田杏奈もそうだが、米倉涼子として忍耐だった」。

 何が正しくて、何が求められているのか−。苦悩しながら、自らの特徴である手足の長さを生かして柔軟に体を使った芝居を封印。地味に闘う姿を貫くことも「忍耐だった」と語る。

 本作は、国有地の払い下げ、公文書改ざんという実際にあった社会問題をモチーフにしている。政権の闇と対峙(たいじ)しながら、松田をはじめ記者たちが真相に迫ろうとするヒリヒリとした展開が続く。

 演じるに当たって、フィクションでない部分をどう考えたのか? 「一国民としては、やはりうそがない政治にしてほしい」。苦悩と忍耐の日々を経て正義感が強くなった印象だ。

 元々ネットフリックスの大ファンで、配信作品への出演は念願だった。「海外の方にも見てもらえるチャンスがあるのはうれしい」と喜びは大きい。「耐える役をつくり上げてもらい、ありがたかった。四十五歳を過ぎて、ただかっこいいだけではない役にも挑戦できるきっかけになれば」。主演を張り続ける女優業にはプラスととらえる。

 ドラマがシリーズ化されたら?と尋ねると、含みのある笑みを浮かべた。「松田杏奈? また苦しい闘いが始まる…」。演じる覚悟はできているようだ。

<あらすじ> ドラマ版「新聞記者」 東都新聞記者の松田(米倉)は、総理大臣夫人と関係の深い学校法人に国有地が格安で売却されたという他紙のスクープから取材を始める。一方、総理夫人秘書として財務省に「総理のご意向」を伝え、裏で動いた若手官僚の村上(綾野剛)は、問題発覚で内閣情報調査室へ転属になる。新聞配達をしながら、そのニュースを遠い世界の出来事と見ていた大学生の木下(横浜流星)は、やがて問題に巻き込まれていく…。

 ほかに吉岡秀隆、寺島しのぶ、ユースケ・サンタマリア、佐野史郎らが出演。

◆藤井道人監督「若者目線で身近な問題に」

 映画版のヒットで評価を高めたが、藤井は引き続きの監督依頼に当初迷ったという。「映画版の栄誉は一回。それに執着する人生は送りたくなかった」。それでも、タッグを組む河村光庸(みつのぶ)プロデューサーの熱い思いから決断した。

 引き受けた理由もある。やり残した「若者の目線」を取り入れることだ。「映画版は記者と官僚が対峙する二軸構造。でも遠い世界の話ではなく、自分ごととして見てほしかった」。そこで生まれた役が、横浜流星演じる新聞配達をしながら就職活動をする大学生の木下だった。

 「二軸から三軸というか、もっと多面的に登場人物の感情の動きを群像劇として描くことがドラマの目的だと思った」

 今回は「声」をテーマにした。ロケ地になった本紙などへのリサーチを通じ、新聞製作の現場から感じたことがあった。

 「誰かの声を文字にして、印刷して、誰かが届けて、誰かの生活の中に…。一番感動したそこを表現できれば伝わると思った」。声なき声を届けようとする松田(米倉)と、新聞を配り続ける木下(横浜)が交錯していく物語は、まさに多面的で見どころだ。

 もう一つ描きたかったのが、組織決定に対する個人の苦悩だ。モチーフになった改ざんなどの問題を風化させたくない思いに加え、どの世界でも起こり得るストーリーとなるよう注力した。「映画版と違い、ここから自分たちが変わっていくという前向きな思いも込めた」と強調する。

 初タッグの米倉とは、人物像を説明する自作のシートで認識を共有した。「松田杏奈のバックボーンについてはよく話した。撮り直しもしたが、すっとのみ込んでくれた」。唯一映画版と同じ配役が内閣情報調査官の田中哲司。理由が出色で、「内調(内閣情報調査室)って、さまざまな大義の中で国を担っている一番のポイント。ドラマでも、哲さんが抱えている国の大義を他人に譲ることは想像できなかった」。

 映画版もドラマ版も、伝えたいことに違いはない。「三軸構造の中で自分らに置き換え、その姿や声に対して、いま一度見直してもらう作品になってくれたら」。「人ごとで終わらないように」とのメッセージが強く伝わってきた。

<映画「新聞記者」> 本紙社会部の望月衣塑子(いそこ)記者の著書「新聞記者」を原案に、権力とメディアの攻防や、その葛藤を描いた2019年公開の社会派サスペンス。内閣情報調査室のエリート官僚役を松坂桃李、日本人の父と韓国人の母を持つ新聞記者役を韓国の女優シム・ウンギョンが演じた。当時の政権の在り方を問うような内容が評判となり、この種の作品では異例のヒット。翌年の日本アカデミー賞では作品、主演男優、同女優の3部門で最優秀賞を獲得した。

◆本紙が撮影協力

 ドラマ版も本紙編集局の一角が、松田らが仕事場とする「東都新聞編集局」として撮影された。映画版と同じ場所での撮影に抵抗があったという藤井監督だが、「そこよりいい場所が見つからなかった。本の積まれ方一つとっても、新聞社でないと出ない雰囲気がある」。連日、緊張感のある撮影が行われた。



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