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韓国の格差社会を映し世界的ヒットでも…ドラマ「イカゲーム」を楽しめない地元の人がいる理由:東京新聞 TOKYO Web

世界的ブームとなっている韓国ドラマ「イカゲーム」のポスター=ネットフリックス提供

 韓国の格差社会で経済力や地位を持たざる人の死闘を描いたドラマ「イカゲーム」が、動画配信サービス「ネットフリックス」で9月17日に公開されてから1カ月、世界的なヒットを続ける。凄惨(せいさん)な暴力表現が続くドラマが、なぜ人気なのか。ソウルで話を聞き進めると、現実の生活苦にあえぎ、作品に抵抗感を覚える人も見えてきた。(ソウル・相坂穣)

◆遊びで次々に銃殺

 「ムクゲの花が咲きました」。少女の形をしたロボットの人工的な声で、殺人ゲームの幕が開く。日本の「だるまさんが転んだ」の韓国版の遊びで、ロボットが振り向いた時に動いた人たちが次々に銃殺される。

 「子どもの遊びが持つ『純真さ』と、『死』の不一致が与える驚き。舞台装置の非現実性と、意図的に使われた粗悪な音楽がかみ合って、残酷さを非現実的なものにしている」。韓国の江南(カンナム)大グローバル文化学部の姜由楨(カンユジョン)教授は分析する。

「イカゲーム」の1シーン。失業者や外国人労働者らが死闘を展開する=ネットフリックス提供

「イカゲーム」の1シーン。失業者や外国人労働者らが死闘を展開する=ネットフリックス提供

◆日本作品の盗作批判も

 タイトルは、イカのような絵を地面に描いて行う韓国の昔ながらの子どもの遊びの名に由来する。謎の仮面集団が支配する孤島に失業者や脱北者、外国人労働者、末期脳腫瘍の老人、暴力団員など事情を抱えた人が集合。緑色のそろいのジャージーを着せられて背番号で呼ばれ、456億ウォン(約43億円)の賞金がかかるゲームで文字どおりの生き残りを競う。

 あらすじを見て、福本伸行氏の漫画「賭博黙示録カイジ」や、深作欣二監督の映画「バトル・ロワイアル」など、過去に日本で発表された創作作品との類似点を感じる人は多く、盗作ではないかとの批判も出た。

◆生活苦の中で着想

 イカゲームのファン・ドンヒョク監督は韓国紙のインタビューで、ドラマの構想を考えたのは10年以上前で、経済的に苦しく、ネット難民のように暮らしていたと回想。当時、漫画喫茶で「カイジ」など日本作品に触れ、経済的に追い込まれた人たちが参加するゲームを思い付いたと認めた。

 東アジアのエンターテインメント事情に詳しいソウル在住の台湾人ジャーナリスト、楊虔豪(ようけんごう)さんは、イカゲームが日本映画を融合させるとともに、格差を描いて2020年の米アカデミー賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」の手法も参考にしていると分析した。

 「韓国社会特有の不当解雇、女性卑下、外国人労働者の搾取、高齢者介護、家計負債などの社会問題をドラマで提示。世界各国でますます深刻になっている貧富の不平等、差別を目撃した視聴者が共感しているのだろう」

◆自分否定されたよう

 ネットフリックスの世界ランキングで9月23日に首位に立ち、10月2日には配信先の世界83カ国・地域すべてでトップを独占している。ただ、地元の韓国で実は「アンチ」の人も少なからずいるようだ。

 韓国ドラマの字幕も手掛けるソウル在住の翻訳家、金光英実さんは「韓国といえば、格差、借金、競争というイメージだと、世界市場を意識した演出が海外でウケたのだろう。ただ、韓国では、ちまたにありふれた普通の話として、逆にピンとこない人も多い気がする」と話す。

ドラマ「イカゲーム」で型抜きの遊びをする主人公=ネットフリックス提供

ドラマ「イカゲーム」で型抜きの遊びをする主人公=ネットフリックス提供

 ソウル市北部の低所得層向け集合住宅が並ぶ地域で飲食店に勤務し、小学生の娘を育てる女性(40)は、イカゲームを見てみたが、全9話のうちの2話目でやめた。「このドラマを楽しめるのは、生活に余裕がある人ではないか? 毎日12時間以上働き続けても、娘と住む持ち家を買えない自分のような人間が否定されているようで、悲しかった」

 見た人の世代や性別、経済状況などによって評価は分かれる。それだけ韓国社会をリアルに描いたドラマということかもしれない。

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