特徴

入管告発ドキュメンタリー映画「牛久」 根底に流れるキリスト教信仰 : 社会 : クリスチャントゥデイ

茨城県牛久市の東日本入国管理センター(牛久入管)に収容された複数の在日外国人が実名顔出しで不正義を訴えるドキュメンタリー映画「牛久」

茨城県牛久市の東日本入国管理センター(牛久入管)に収容された複数の在日外国人が実名顔出しで不正義を訴えるドキュメンタリー映画「牛久」が、ドイツで開かれた日本映画祭「第21回ニッポン・コネクション」のドキュメンタリー部門でニッポン・ドックス賞を受賞した。映画を手掛けたのは、在日歴18年の米国人ドキュメンタリー映画監督であるトーマス・アッシュさん。牧師を父に持つアッシュさんは、日本聖公会聖オルバン教会の信徒だ。クリスチャンの友人らとボランティアで牛久入管を訪れる中、「この現状を変えるにはどうすればよいか、自分にできることは何か」と考え、本作を制作したという。

映画は、撮影が禁止されている収容所の面会室に隠しカメラを持ち込み、長期間収容されている外国人の被収容者ら9人の証言を撮影したものだ。証言が公開されることは被収容者にとっても大きなリスクになり得るが、一人一人から同意を得て公開にこぎ着けたという。収容所でどのような心理的・身体的状況に置かれているかを、それぞれの被収容者が自分自身の言葉で語る。無期限の収容、貧弱な医療体制、そして暴力――。その表情や声、話し方に表れる感情は、従来の取材方法では伝えきれなかった彼らの心からの訴えを映し出す。

アッシュさんはこれまでも、主要メディアがタブー視してきたテーマをあえて選び映画化してきた。東日本大震災で起きた福島第1原発事故の11日後から現地で取材を行い、甲状腺にのう胞やしこりが発生したことが検査で分かった子どもたちを追ったドキュメンタリー作品「A2ーBーC」(2013年)などが知られている。

第21回ニッポン・コネクションでの映画公開に先立ち、5月20日にはアッシュさんと映画に登場する元被収容者2人が日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を開いた。会見では予告編を上映し、作品についての質疑に答えた。

元被収容者の一人、デニズさんはトルコ出身のクルド人。07年に来日し、11年に日本人女性と結婚。最後に入管に収容されていた期間は3年で、入管職員から暴行を受けたという。違法行為はなかったと主張する国を相手取り現在、訴訟を行っている。デニズさんの弁護士が裁判所に請求して開示された収容所内の記録動画は、19年にテレビや新聞で大きく報道された。会見では「精神的暴行、いじめ、いっぱい、いっぱい、ありました」と訴えるとともに、「国(トルコ)で殺されないようにここに来た」と来日した経緯を説明。暴行を受けた人は自分だけではなく他にも多くいると言い、この映画で自分たちの心が伝わると思うと語った。

映画「牛久」でインタビューに応じる被収容時のルイスさん(写真:トーマス・アッシュさん提供)

中央アフリカのクーデター未遂事件に巻き込まれ、02年に日本に逃れてきたルイスさんは、来日してから7日後に証拠を添えて難民申請をした。しかし申請は通らず、2年後に収容された。仮放免中に出会った日本人女性と09年に結婚したが、入管職員は妊娠していた女性に対し「(ルイスさんは)ビザを取得さえすれば離婚する」などと言い、離婚や堕胎を勧めるなどしたという。「彼らは、私が日本にいる理由を壊そうとします。とにかく強制送還になるように、あらゆる手を尽くすわけです」。ルイスさんの収容年数は計7年に及ぶが、多くの被収容者が報復的措置を恐れて収容所内の経験を語れず、メディアでも内実がほとんど取り上げられていない現状があると訴えた。また、入管難民法改正案の今国会成立が見送られたことにも触れ、「法律を変えても入管のやり方を変えなければ状況は改善されない」と語った。

アッシュさんは会見で、インタビューに応じたすべての被収容者から撮影と映画公開について同意を得ていることを何度も強調した。これは映画に関して誤った情報がネット上に流れ、支援者らの中にも一部で反対する人がいるからだ。アッシュさんらは会見で、映画の妨害ではなく、本来の支援活動に時間と労力を使ってほしいとし、支援者同士が分断することこそ入管の思うつぼだと訴えた。

ネットで拡散された誤情報は、映画に登場するAさんについて、本人の同意なく映画が公開されたというものだった。しかし、今月1日になってAさん本人が声明を発表し、映画の出演に同意していたことを自ら明らかにした。その後、アッシュさんは映画の公式サイトに一連の経緯を説明する声明を掲載。批判は真摯(しんし)に受け止めるとしつつ、「Aさんはじめ現状の入管法によって苦しんでいる皆様のことを思い、祈り続けます。彼らの声が世界に届き、人権が守られる日本社会となるよう願っております」と述べている。

入管告発ドキュメンタリー映画「牛久」 根底に流れるキリスト教信仰

被収容者からの電話に応答する映画「牛久」監督のトーマス・アッシュさん(写真:同上)

映画に登場する被収容者の中にはクリスチャンもおり、作中で交わされるアッシュさんとの会話の中には、復活祭を祝い、神の祝福を願い、イエス・キリストの名で祈る主にある兄弟姉妹としての姿も垣間見ることができる。

アッシュさんは、被収容者の支援を行う他のクリスチャンと会う中で、「キリストの愛を経験するのに、必ずしも教会の中にいる必要はないと気付かされます」と話す。支援者仲間であるカトリックのシスターはそれを「恵みの交換」と呼ぶという。「その交換は面会室でなされるのですが、私が今まで教会で得たどんな経験よりも聖なるものでした」とアッシュさんは言う。

「牛久収容所やその他の施設で見た、強くそして尽きることのない被収容者のクリスチャンたちの信仰は、この映画を作る中で強く感じたテーマの一つです。ノンクリスチャンの人たちには、彼らの信仰が戸惑いにならないよう願っていますが、そのようなものを進んで受け入れる人たちのために、彼らの信仰を必ず映画の中に入れたいと思いました。彼らの信仰が、この映画を見るキリストにある兄弟姉妹にとって、対話を呼び、一つに結び付けるものとなるように願っています」

■ 映画「牛久」公式サイト

Source Link

もっと見せる

関連記事

Close
Close