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細野晴臣と映画音楽(後編) | 細野ゼミ 3コマ目 – 音楽ナタリー

活動50周年を経た今なお、日本のみならず海外でも熱烈な支持を集め、改めてその音楽が注目されている細野晴臣。音楽ナタリーでは、彼が生み出してきた作品やリスナー遍歴を通じてそのキャリアを改めて掘り下げるべく、さまざまなジャンルについて探求する連載企画「細野ゼミ」を展開中だ。

ゼミ生として参加しているのは、氏を敬愛してやまない安部勇磨(never young beach)とハマ・オカモト(OKAMOTO’S)という同世代アーティスト2人。第3回では映画音楽をピックアップし、前編では細野が衝撃を受けたという作品、サントラの制作手法などに迫った(参照:細野晴臣と映画音楽(前編))。そして後編では、好きなサントラや現代における映画音楽の役割などについて語ってもらった。

取材 / 加藤一陽 文 / 望月哲 題字 / 細野晴臣 イラスト / 死後くん

昔の映画音楽家は特徴がある人が多かった

細野晴臣 最近のサントラは映画音楽というよりも、音響っていうか効果音に近いような印象がある。以前に比べて、あまりサントラ盤も出なくなったでしょう?

ハマ・オカモト そうですね。売れてるものは古い音楽のミックステープみたいなセンスがいいやつとか。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のサントラはすごく売れたみたいですけど。

安部勇磨 よかったね! あれ。

細野 ああいうサントラには監督の趣味が出てるよね。

ハマ 「シング・ストリート 未来へのうた」と「はじまりのうた」はMaroon 5のボーカル(アダム・レヴィーン)が音楽を監修してるんですけど、すごくよかったです。でも個人的にいいなと思うサントラって、昔の音楽をセンスよくコンパイルしたようなものが多くて。確かに現行の音楽を使っているもので気になるサントラって、あまりないかもしれませんね。

細野 昔は、メロディが心に残ったりするような映画音楽がいっぱいあったと思うんだよ。個人的には「ニュー・シネマ・パラダイス」が最後かな。日本人が大好きなエンニオ・モリコーネのあのメロディ。その前に映画音楽としていい歌を残したのが「バグダッド・カフェ」だ。あの2本はすごくヒットしたよ。

──「ニュー・シネマ・パラダイス」は1988年の作品です。

細野 うん。90年代以前の映画音楽はそういうものだった。そこから先は今に至るっていう。

ハマ 細野さんはジョン・ウィリアムズとかはどうなんですか?

細野 好きだったよ。「スター・ウォーズ」とか観に行って。いいよね。「インディ・ジョーンズ」「スター・ウォーズ」みんな同じで(笑)。

ハマ安部 あははは(笑)。

安部 気持ちの上げ方が全部一緒だもんね(笑)。

ハマ 子供の頃、「これ、同じ人が音楽やっているのかもしれない」って子供ながらの勘で当てたのがジョン・ウィリアムズだったんですよ。「ハリー・ポッター」を観に行ったときに「これ『ホーム・アローン』と同じ音楽じゃない?」って。

細野 すごい。いい耳してるね(笑)。

ハマ で、映画を観たあとにサントラ盤を買ったら、同じ名前が書いてあって「やっぱり!」って。細野さんがおっしゃるように、曲の感じが同じじゃないですか(笑)。でもちょっとずつ違う。初めて自分の耳で「これあの人かも」って思えた人なので、ジョン・ウィリアムズはすごく印象深くて。

細野 僕も映画を観ながら、そうやって音楽を聴いてるよ。昔の映画音楽家は特徴がある人が多かったんだよね。

ハマ それこそ手癖みたいな。

細野 80年代日本のニューウェイブシーンですごく人気が出たのが、さっきも話題に挙がったニーノ・ロータ。フェデリコ・フェリーニの作品で音楽を担当してる。あとはモーリス・ジャールとか。みんなそれぞれ個性があるんだよ。今の人は個性がないからね。職業だから。すごいオーケストレーションを作るけど、みんな同じで誰が誰だかわからない。

ハマ 細野さんに映画音楽の依頼が来るのも、そういう風潮に対する反動なのかもしれませんね。大先生みたいな人もいらっしゃると思いますけど、どこか似通っちゃうというか、そういう意味で色が付かないっていうので、じゃあ細野さんにお願いしようってことで。

細野 まあ、こじんまりした作品で、監督が非常にパーソナルな感覚で作っていくような映画は自分でも音楽をやりたくなるよね。反対に、ビッグプロジェクトで予算が30億みたいな映画のオファーが来たら僕はできない。怖くて(笑)。

映画音楽を作るときドルビーアトモスを意識してしまう

細野 2人は「TENET テネット」はもう観たの?

ハマ 「TENET」観ました。

細野 音楽がすごくいいっていう人が多いけど。

ハマ そうですね。僕はIMAXで観ました。

細野 どうだった?

ハマ 確かに音楽の使い方はよかったです。ただ、ちょっとズレちゃいますけど、IMAXで映画を観るとき、たまに「音が大きすぎないか?」って思うことがあるんですよ(笑)。音がデカすぎちゃって「ビクッ!」ってなっちゃう(笑)。僕けっこうビックリしちゃうタイプなんで。「あ、この感じ、絶対大きい音来るな」「うわあ!」みたいな(笑)。でも「TENET」はすごく面白かったですね。画と音のマッチングもよかったし。ストーリーもわかりやすくなくて。

安部 2回観ないとダメっていうよね。

ハマ うん。想像の余地があって、さすがクリストファー・ノーラン監督だなと思いました。

──今、ちょうどそういう話になりましたけど、皆さん映画館の音響についてはいかがですか?

細野 音楽の次元を変えちゃったよね、映画が。ドルビーサラウンドの影響かもしれないけど、バーチャルな空間を構築できるようになって。だからそんなに音が大きくなくても、大きく聴こえちゃうのかもしれない(笑)。今の映画館は実際すごくいい音だと思う。それは昔と違う。

──なるほど。

細野 例えば「ゴーストバスターズ」とか映画の最後にテーマ曲が流れるよね。あれ、そんなにいい音じゃなかったんだよ。レコードと同じような音で。でも今の音響システムで再生すると、CDよりも音がよくなるんだよ。鈴木惣一朗くんから聞いたんだど、The Beatlesのマスタリングも、ドルビーのアトモスというシステムを使って再編集していたり、そこにすごく興味があるけど、日本のポップシーンはどうなってるんだろう。

──ドルビーアトモスの登場で音がすごくよくなったって聞きますね。

細野 すでに異次元な音響なんだよ。10年ほど前からそういう世界が確立されてきているから、いつも映画音楽を作るとき、そのことを考えながら作っちゃう。

ハマ 特にローの音とか細野さんもすごく気を遣われると思いますけど、ウルトラローのさらに先みたいな世界になっていくわけですもんね。

細野 ただ実際に重低音が出てるかと言うと実はそうでもないんだよ。倍音で聞かせてるんで。あたかも重低音が出ているように聞こえるっていう。だからもうバーチャルの世界だと思う。

──映画音楽の作り手としては劇場での音響も気にして作らなければいけないという。

ハマ そうなんです。実際に「劇場ではこう聴こえるんだ!」っていうことがありましたし。スタジオで聴く音とは全然違うので。

ハマ&安部の好きな映画サントラは?

──ちょっと根本的な質問に戻るんですが、皆さんそれぞれ好きな映画音楽を挙げるとしたら、どんな作品になりますか?

ハマ 僕は「ファンタスティック・プラネット」のサントラですね。フランスのアニメーション映画なんですけど。

細野 観てないな(笑)。

ハマ いわゆるカルト映画ですが、サントラがすごくカッコよくて。あとは前回もお話ししたんですけど、大野雄二さんが手がけた一連のカドカワ映画のサントラも。なんか「Shaft」みたいじゃないですか?

細野 ああ、そうだね。

ハマ ブラックムービーのサントラっぽい。あのファンキーな感じを日本に持ってきたのって、大野さんなんじゃないかと僕は思っていて。井上堯之さんが手がけているサントラも同じようにファンキーで好きです。あとは以前、細野さんともお話しさせてもらったんですけど、「ミッドナイト・イン・パリ」。僕、シドニー・ベシェがすごく好きで。

細野 シドニー・ベシェを好きなのは2人目だな。もう1人は伊藤大地くん。

ハマ あの古い録音にすごく感動して。映画もすごくいいですし。アナログ盤も作ってくれればいいのになと思います。

──安部さんは?

安部 僕は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のサントラですね。単純に聴いててテンション上がっちゃうような曲ばかり入ってるから。でもホント恥ずかしいんですけど、映画音楽を意識して聴くようになったのは最近です。

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「西部警察」の劇中音楽はめっちゃファンキー

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