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ローリングストーン誌が選ぶ、2020年の年間ベスト・ホラー・ムービー10選 | マイナビニュース

ローリングストーン誌が選ぶ、2020年の年間ベスト・ホラー・ムービー10選

幽霊物語、暴力シーン満載のコメディ・スプラッター、先住民のゾンビ、透明人間など、2020年屈指の悪夢の世界を紹介。

2020年は、必ずしもホラー映画がなくてはならない年ではなかったかもしれない。直近の出口の見えないパンデミックから大統領選という悪夢にいたるまで、私たちの実生活は、恐怖に事欠かなかった。2020年のトランプ政権下のアメリカの1日より恐ろしいものなんてあるのだろうか? 私たちの多くが必要としていたのはカタルシス的な何かであり、例えばそれは終末論を説くTwitterの投稿や延々と垂れ流される新型コロナ関連の統計ではなく、私たちの恐怖を投影する空間だ。ここで紹介するホラー映画のお手本のような10本は、どれも自宅に閉じ込められた私たちのドアの外で起きていた出来事と直接的な関係はない。だが、それより重要なのは、どの作品も現実世界を無視していないだけでなく、このランキングの中でももっとも現実逃避的な作品でさえ、ジェンダーや社会階層など世間を賑わせた話題に対する見解を何らかの方法で表明している点だ。幽霊物語、暴力シーン満載のコメディ・スプラッター、先住民のゾンビ、透明人間など、本誌が選ぶ2020年のホラー映画ベスト10を紹介しよう。

10位『ズーム/見えない参加者』
Photo : Shudder Films

私たちは、これから数年間にわたって2020年の日常の恐怖を再現しようとする無数のホラーまたはその他のジャンルの映画に苦しめられることになりそうだ。2020年の日常の恐怖とは……ウェブ会議ツールZoomを使った会話にほかならない。だが少なくとも、イギリスのロブ・サヴェッジ監督と米ホラー映画配信サービスShudderのパトロンたちは、『ズーム/見えない参加者』によって気弱なビビりを怖がらせるための基準を最高レベルに設定した。劇中では、グループのリーダー的存在のヘイリー(ヘイリー・ビショップ)という若い女の提案で20代の若者たちは霊媒師と連絡を取り、Zoomを使った”オンライン交霊会”を開催しようとする。遊び半分の気楽なムードは、誰かが誰か——あるいは何か——を怒らせたかもしれないと霊媒師が言いはじめたとたん一変する。絶叫が響き渡るのは、ここからだ。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)や同作によって誕生した数多のファウンド・フッテージ(訳注:他者によって制作された既存の映像を作品の全体または一部に使って新たな作品をつくる手法で、映画やTV番組のジャンルのひとつ)系ホラー映画のように、『ズーム/見えない参加者』はローファイ技術とおなじみの演出(スプリットスクリーン、視点の切り替わり、背景のループなど)を見事に屈指した模範的な事例であり、2020年の混乱に救いの手を差し伸べる方法をしっかり心得ている作品だ。(日本公開:2021年1月15日)

9位『ブラッド・ブレイド』
Photo : Jan thijs/Shudder Films

”レッド・クロー”と呼ばれるネイティブアメリカンの居留地では、不可解な出来事が続いていた。そこでは、はらわたを抜かれたシャケが跳ね回り、安楽死させられた犬が吠えつづける。それに、血を吐いている街の酔っ払いは、人間の肉にやたらと飢えているようだ。その半年後、同地で暮らすミクマク族の人々は、生き残りをかけたゾンビとの壮絶な死闘に巻き込まれる。脚本も手がけたジェフ・バーナビー監督は、TVドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズ、葛藤する保安官という主人公(マイケル・グレイアイズが主役にふさわしいシリアスなオーラを放っている)、さらには徹底的に包囲された安全地帯といった数々の要素を過去の作品から拝借して『ブラッド・ブレイド』に取り入れている。生存者が先住民の人々で、おぞましいゾンビのほとんどが白人であるという点も見逃してはならない。同作は、古典的なジャンルにネイティブアメリカンというツイストを効かせた良作であり、殺戮シーン(看護師とチェーンソーの生々しすぎるスプラッターシーンなど)を出し惜しんだり、反植民地主義的かつ生態系を懸念する解説をカットしたりもしていない。「これは我々への罰なんだよ」とカナダの先住民・アボリジニのベテラン俳優、ゲイリー・ファーマーは言う。「神のせいじゃない。地球は人の愚かさに激怒している」。(一部劇場にて公開)

8位『ココディ・ココダ』
Photo : Dark Star Pictures

遠く離れた場所でキャンプをするときは用心しよう。童謡の世界から飛び出してきたかのような風変わりな三人組があなたのテントを襲い、何度も何度も延々とあなたを殺しつづけないとは限らないから。スウェーデンのヨハネス・ニホルム監督が放つ傑作ホラー『ココディ・ココダ』は、ある家庭を襲った悲劇で幕を開ける。そのせいで夫婦(レイフ・エードルンド・ヨハンソンとイルバ・ガロン)は悲しみで放心状態になり、心に傷を負う。それから3年後、ふたりはキャンプに出かける。ここで待っていましたといわんばかりに凶暴な男、ゴスルックの浮浪児、白スーツがトレードマークの米作家トム・ウルフ顔負けの晴れ着に麦わら帽子という出立ちの変人(ペーテル・ベッリ)が登場する。ハッピーエンドなんて存在しないとあなたは言うかもしれないが、『ココディ・ココダ』にはそもそも終わりというものが存在しない。というのも、夫婦は見知らぬ三人組の手でサディスティックにいたぶられて死んだ挙句、すべてが振り出しに戻ってしまうのだ。そしていくつかのツイストとともに、またすべてが繰り返される。観ている人は、何週間も忘れられそうにない悪夢を見ているような気分を味わう。ありがとう、スウェーデン!(日本劇場公開終了)

7位『Freaky(原題)』
Photo : Brian Douglas/Universal Pictures

スプラッターと入れ替わりという1980年代が誇る2つの映画ジャンルが見事に融合した『Freaky(原題)』。ヴィンス・ヴォーンが演じるのは、”ブリスフィールド・ブッチャー”と呼ばれる連続殺人鬼だ。この殺人鬼は、卒業生たちが帰省するホームカミングの時期にキャスリン・ニュートン扮する冴えない女子高生のようなティーンエイジャーたちを恐怖に陥れる。ある日、魔法の短剣でニュートン扮する女子高生を襲った殺人鬼は、殺害した女子高生の体に憑依していることに気づき、そこからいじめっ子に復讐したり、教師たちをボコボコにしたりと女子高生の逆襲が始まる。たしかに、クリストファー・ランドン監督によるマッシュアップがウケを狙いに行っているのは見え見えだが、同作はおどけと血の素晴らしいブレンドであり、異質な要素の組み合わせ以上の作品である。ランドン監督の『ハッピー・デス・デイ』シリーズ同様、『Freaky』は笑いと衝撃のどちらかを優先しようとは思っておらず、観ている人は両者の調和を感じる。というのも、失恋の痛手を負ったおっちょこちょいの女子高生に憑依した殺人鬼を観ながらクスクス笑っていた次の瞬間、マルノコ盤で体が真っ二つになるシーンに切り替わるのだから。これこそまさにエンターテイメントだ!(日本公開:未定)

6位『獣の棲む家』
Photo : Aidan Monaghan/NETFLIX

南スーダンの内戦と筆舌に尽くしがたい悲劇から逃れてきたある難民夫婦のボル(ショペ・ディリス)とリヤル(ウンミ・モサク)は、亡命先のロンドンで新たな生活を送りはじめる。国からあてがわれたアパートメントは、古びているなんてものじゃない。彼らのアパートメントは幽霊でいっぱいなのだ。やがて夫婦はこんな問題にぶつかる。この古びた住居を”ホーム”と呼ぶ悪霊たちは、もともとここの住民なのだろうか……それとも、夫婦の歴史に深く根ざした何かなのだろうか? 脚本家・監督のレミ・ウィークスの長編デビュー作『獣の棲む家』は、単なるタイムリーなお化け屋敷物語ではない。同作は、現代の難民体験につきまとう危険と人間性喪失のプロセスをホラー映画というレンズを通して巧みかつ鮮やかに描いており、不気味で非現実的な要素によって社会的な主張が埋もれるようなこともない。「過去は死なない」という米作家ウィリアム・フォークナーの言葉をご存知だろうか? この言葉を頭の隅に置きながら、同作を観てほしい。(Netflixにて公開中)

5位『Swallow/スワロウ』
Photo : IFC Films

家庭が舞台のホラー映画に女性のエンパワーメントを描いた不気味なストーリーが盛り込まれた(あるいはその逆?)『Swallow/スワロウ』。脚本家・監督のカーロ・ミラベラ=デイヴィスによる同作は、”完璧な”妻ハンター・コンラッド(ヘイリー・ベネット)が壊れていく様子を描いた不穏な作品だ。おとなしいハンターは、1950年代のシットコムに登場する主婦のような服を着、サスペンス映画『ステップフォードの妻たち』(1975)の従順なロボット妻の一歩手前といったところだ。そんなハンターは、ビー玉、画びょう、チェスのこまといった異物を飲み込みはじめ……突如として自信のようなものが湧いてくるのを感じる。極めて大胆不敵なパフォーマンスに支えられた精神障害と体がテーマの『Swallow/スワロウ』は、痛いところを突いてくるだけでなく、いろんなことを噛みしめさせてくれる作品だ。(日本公開:2021年1月1日)

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4位『透明人間』
Photo : Universal Pictures

見えないのにそこにいる男を描いた英作家H・G・ウェルズの名作が#MeTooストーリーという形でアップデートされた。セシリア・カシュ(エリザベス・モスのキャリア史上最高の名演であることは間違いない)は、オリバー・ジャクソン=コーエン扮する天才科学者との虐待的な人間関係から抜け出せずにいる。セシリアは身を隠し、恋人は遺体で発見され、すべてがハッピーエンドに向かうと思われた。ただセシリアは、どういうわけか、元恋人がいまも自分を苦しめているという感覚を拭えず、ひょっとしたらその感覚は(物が勝手に動き出す不思議な現象の原因も含め)、実験室で彼が取り組んでいたことに関係しているのかもしれない……。恐ろしいながらも美しい、リー・ワネル監督の計算された悪夢は、普遍的なホラー映画を怒り狂うモンスターよりもっと恐ろしいものに変えている。原因が見えないせいで、苦しんでいると言っても誰にも信じてもらえない、心理的虐待の物語だ。お見事。(日本劇場公開終了)

3位『ヴァスト・オブ・ナイト』
Photo : Amazon

1950年代のアメリカの小さな町で起きた不可解な出来事を振り返る、スピルバーグ監督ふうの傑作を想像してほしい。そこに天才的な頭脳を持つ若い理系オタク(ジェイク・ホロウィッツとシエラ・マコーミック)、謎の送信信号、そしてひとつまみほどのロズウェル事件のパラノイアを加える。そして予算をカットする代わりに、想像力を大量に注入しよう。アンドリュー・パターソン監督による独創的な長編デビュー作『ヴァスト・オブ・ナイト』は、TVドラマ『トワイライト・ゾーン』シリーズのノスタルジックな第三世代コピーではなく、同作のレトロな魅力を活かす方法をしっかり心得ている(ナレーションの隙間に別世界からのモノクロのTVアンソロジー番組を挿入するなど)。それだけでなく、監督によるSFホラー映画の巧みなボキャブラリー使いは、『トワイライト・ゾーン』の影響をひけらかすよりもっと重要な効果を生んでいる。『ヴァスト・オブ・ナイト』を観る人は、恐怖がふつふつと煮立ち、やがて完全に沸騰するような感覚を抱く。そしてその瞬間、パターソン監督が現代のオーディエンスにいまの時代にふさわしい『Watch the Skies』(1977)のような映画を届けてくれたことに気づく。(Amazon Primeにて公開中)

2位『ラ・ヨローナ〜彷徨う女〜』
Photo : Shudder Films

中米グアテマラの年老いた将軍(フリオ・ディアス)は、何十年間にわたって反対派の政治家たちを迫害、投獄、拷問した疑いで戦犯法廷に立つ。「過去を振り返らないで」と言う将軍の妻(マルガリタ・ケネフィック)は、夫を権力の座に居座らせるために何らかのことに関わっているかもしれないし、そうでないかもしれない。ハイロ・ブスタマンテ監督は、『ラ・ヨローナ〜彷徨う女〜』でじりじりと募る恐怖と自業自得の感覚とともに過去と、亡霊たちはいつも私たちのすぐとなりに座っているというコンセプトを見事に掘り下げる。一家の新人メイドとして突然登場するマヤ族の若い女(マリア・メルセデス・コロイ)が虐げられた人々による何らかの復讐だというあなたの予想は正しい。同作は、中枢神経系に衝撃を与えるというよりは、じわじわと広がっていくことを好む、ミステリーとイマジネーションの物語であり、それによって窒息させられるような不吉な感覚がより強く感じられる。(日本劇場公開終了)

1位『She Dies Tomorrow(原題)』
Photo : Jay Keitel/Neon Films

明日死ぬかもしれない、という拭い去れない感覚があなたの精神的なウェルビーイングを蝕むパラサイトであると同時にそれが伝染病だとしたら? エイミー・サイメッツ監督の衝撃スリラー『She Dies Tomorrow(原題)』は、明日死ぬという感覚にとらわれる、ひとりの女(インディペンデント映画のMVP女優ケイト・リン・シール)で始まる。彼女のことを心配した友人(ジェーン・アダムス)もどういうわけか、自分の死期が迫っていることに気づく。この虚無的な絶望は爆発的に周囲に広がる——それはまるで、死という現実を無視して生きる彼女たちに死のほうからOutlookにドクロマーク付きの招待状が送信されてきたようなものだ。彼女たちが共同的な自滅行為に走る姿を見れば見えるほど、観る人は、彼女たちの集団的な狂気に気づきはじめる。宿命論的な社会交流と存在主義の恐怖を描いたサイメッツ監督の不気味な作品が昨年撮影されたものであることは気にしなくていい。2020年の閉塞感をここまで正確にとらえた作品は、なかなか珍しい。(日本公開:未定)

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