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『犬部!』殺処分&多頭飼育崩壊ゼロを目指すには?人間と動物の共生を一緒に考える<アーカイブ> | .

シネマカフェでは7月28日(水)、「Let’s Keep Updated」と題し、動物のリアルを伝えるWebメディア「REANIMAL」との共同イベントを開催。進行役にライターのSYOさん、ゲストに映像作家で『犬部!』脚本の山田あかねさんを迎え、林遣都や中川大志らが出演する『犬部!』から見る【殺処分&多頭飼育崩壊(※)ゼロを目指すには?人間と動物の共生を一緒に考える】について語り合った。

SYOさんも保護猫カフェから猫を、山田さんも動物愛護センターなどから2匹の犬を引き受けて共に暮らしており、最後には山田さんの愛犬ハルが映画本編同様に“特別出演”を果たした。

(※)犬猫などが増え、飼育不可能になってしまっている状態

>>『犬部!』あらすじ&キャストはこちらから

『犬部!』印象的なシーンは? いま映画化される意義とは?

山田「犬猫の問題は10年くらい前から取材を始めているので、ドキュメンタリーはたくさんやってきましたが、劇映画となると興行成績だったりとか、いろんな人に観てもらわなきゃというハードルがあります。

一方で、ドキュメンタリーだとどうしても意識の高い人だけが観て『ここ困るよね』『そうだよね』となって終わる感じがあるんですけど、こうやって人気者の林遣都さんや中川大志さんたちが出てくれることによって、それまで保護犬・保護猫に興味のなかった人たちも“思わず”観に行きますよね。思わず観に行った人のうち何人かが『そうか、こんなことが起こっているんだったら、自分もちょっと考えよう』となってくれるといいので。こういう時期に劇映画でやれるっていうことはすごく意義のあることだと思います。」

SYO「過去の爽やかな物語から、大人になったときのテイストの変化、トーンの変化というのが印象的でした。最初に爽やかなところ(学生時代)から始めていることがすごく利いているなと感じました。犬猫の避妊・去勢手術についても、ここまで克明に描いている作品は国内ではなかったのではないでしょうか。」

山田「最初に脚本の依頼があったときに、“犬猫の置かれている現状をリアルに伝えるものにしたい”と思っていました。どれだけ避妊・去勢が大切かなどは、ちゃんと伝わったらいいなと。そういうところはちゃんと見せてくださいと、打ち合わせで主張はしていました。」

『犬部!』(C)2021『犬部!』製作委員会
(主人公が逮捕されてしまうシーンもありますが)ドキュメンタリーを撮っていると、動物保護団体と多頭飼育崩壊の現場に行くことも多いのですが、多頭の飼い主さんて最初すごく揺れるんです。途中でやっぱり犬を連れていってほしくない、となります。『でもこの状況じゃだめでしょう?』という話になると、いきなり警察を呼ばれて『出ていけ』って言われたりすることはある。すごまれたりとかあったので、リアリティとして入れていこうと思いました。」

なぜ多頭飼育崩壊は起きてしまう?「犬猫だけじゃない、結局は人間の話」

山田「犬猫がかわいいいっていうだけでは割り切れないようなシーンがいっぱいあるんです。多頭飼育崩壊に陥る方というのはいろいろなマイナスを抱えている人が多いので、そこはもう単に犬や猫を救えばいいという話ではなくなってくる。その人と人間関係を構築しないと、本当の意味では犬と猫は救えないんです。それはいろいろな現場に行って印象を受けたので反映させました。」

SYO「『このような映画が公開されることが今の日本には必要だと思っていました』と視聴者からコメントもいただいています。多頭飼育崩壊を劇映画として描く、ぎりぎりを攻めているように感じました。」

山田「多頭飼育崩壊のシーンはちゃんと再現されている、と思いました。私も、何回も現場に入っています。それを綺麗事に描かれてしまうとリアリティがなくなってしまいますが、かなりリアルな感じで描かれていると思いました。映画なので臭いは伝わらないですけど、とにかく多頭の現場は臭いがすごいんですよね…。

『犬部!』(C)2021『犬部!』製作委員会
多頭の方の話を聞いていくと、一緒に住んでいた方が亡くなった方がきっかけで多頭崩壊する方が結構多いんですよ。お母さんと飼ってたんだけど亡くなって、ほかに誰もいないし、誰も訪ねてこないし、どうでもよくなっちゃって…みたいな。

前に作った『ザ・ノンフィクション犬と猫の向こう側』で多頭崩壊を描いたんですが、なぜ『犬と猫の向こう側』っていうタイトルにしたかというと、犬と猫の向こう側には必ず人間がいるんです。犬と猫だけで生きてないから。その人の問題を解決しなければ犬猫問題って解決できないんですよね。結局は人の問題なんだといつも思っていて。なので、人間として林さんが演じる人物を描いていったし、中川さんに対しても、そういうふうに人として深みのある人として描きたいなと思って書かせてもらいました。」

保護活動を行う獣医は特別な存在?

SYO「主人公の『生きているものは全部助ける』はすごくいいセリフだと思いますが、ある種の理想がある一方で、『保護活動は獣医の仕事じゃない』という現役の獣医師がいることも映画の中では描かれます。2021年現在で、主人公のモデルになった太田(快作)先生のようなタイプは異端児にならざるを得ないのでしょうか。太田先生自身も、自分が特別視されてしまうことに忸怩たる思いがあると語ってらっしゃいました。」

山田「異端児というよりは、動物保護をする獣医さんと、飼い猫・飼い犬だけをやる獣医さんとでちょっと分断が起こっているといいますか。よく太田さんもお話しますが、例えば、杉並にある太田さんの動物病院から埼玉の崩壊現場に助けに行くとします。車で東京から埼玉まで走っている間にも動物病院はいっぱいあるわけなんです、現場の近所に。本来ならば、近所の獣医が助けてあげればもっと早く済むことなんだけれど、周りに助けてくれる人がいないから東京からわざわざ行く。日本にいま、大体3万人ぐらい獣医がいて動物病院が1万ぐらいある。その皆がちょっとずつ保護猫・保護犬を助ける社会になればいいのですが…。

『犬部!』(C)2021『犬部!』製作委員会
動物愛護先進国のイギリスなどの動物病院では、自分たちの仕事の1割ぐらい保護猫・保護犬のために働いてもいいと思っている、それが常識みたいになっています。だから、子猫を拾ったとしてもその地域の動物病院にまず連れていって、ということが可能なんです。特別な獣医だけが活躍するんじゃなくて、利益の一部は保護猫・保護犬に使ってもいいよね、という感じ。それを保障する団体もあるので、システムとしてはそういう形を日本も導入できればいいなと思っています。

だから、例えばこういう作品を観て、自分はちょっと助けることをやってみてもいいかなというふうに変わってくれたらいいなという希望を託してます。浅香航大さんが演じる秋田先生のお父さんの病院には、そのテーマを乗せました。」

『犬部!』(C)2021『犬部!』製作委員会

いま現在、日本の動物保護は改善に向かっているといえる?

山田「圧倒的に、改善に向かっていると思います。殺処分についても令和元年(2019)で32,743匹じゃないですか。でも、平成21年(2009)10年前は229,832なんです。つまり7分の1に減っているんです。すごいと思います。こんなに減るんだっていう。日本、捨てたもんじゃないなというか、本当にみんなの努力でどんどん減っているというのはすごく実感しています。」

殺処分状況などの統計資料(環境省)はこちら
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html

『犬部!』(C)2021『犬部!』製作委員会
“保護犬”とか“保護猫”という言葉が、この10年ですごくみんなが知るようになったじゃないですか。それはすごくいいことだと思っていて。昔はこの言葉を流行らせようと思って映画を作っていたんですけど、なかなか広まらなかったけれど、最近みんな保護犬・保護猫というようになって、やってみるもんだなと思いました。広まるなぁと思って。

SYO「保護犬・保護猫活動をされている著名人の方も、自分から発信されていくようになりましたね。」

山田「特別なことじゃない感じになってきて、保護犬を飼ってるといっても、だんだん普通のことになっているから、どんどん普通になってほしいですね。」

『犬部!』殺処分&多頭飼育崩壊ゼロを目指すには?人間と動物の共生を一緒に考える SYO&映像作家・『犬部!』脚本の山田あかねが登壇

『犬部!』は全国にて公開中。

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