俳優

鮮烈な記憶 三浦春馬さん「罪と罰」最後の場面 – 舞台雑話 – 芸能コラム : 日刊スポーツ

2020年7月25日13時0分

「罪と罰」 三浦春馬(右)と大島優子(2019年撮影)

三浦春馬さんの最近の舞台はすべて見ていた。12年の劇団☆新感線「五右衛門ロック3」をはじめ、大竹しのぶと共演した「地獄のオルフェウス」、ミュージカル「キンキブーツ」、「罪と罰」、最後の舞台となった今年3月の「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」、そして、映画「ハリエット」でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたシンシア・エリヴォと共演したコンサート。

単独で取材したことはないけれど、コンサート直前のシンシアの来日会見を取材した時、三浦さんも同席した。海外での活動に意欲的な三浦さんは彼女と一緒のステージに「一瞬一瞬を大切に過ごしたいですし、この経験を未来に生かせたら」と話した。そして、シンシアの印象を答えていた三浦さんは突然、シンシアに英語で質問をした。「体を動かすことは、声帯のトレーニングにもなりますか」。ミュージカル俳優として歩みを始めた三浦さんにとって、これは聞いておきたいと思ったのだろう。自然な感じで、たゆまぬ向上心の一端を見た気がした。

「キンキブーツ」のはじけたドラァグクイーンのローラ役は印象的だったけれど、彼の舞台で鮮明な記憶となって残っているのは、ドストエフスキー原作の舞台「罪と罰」の最後の場面だった。老婦人殺しでシベリア送りとなったラスコリニコフが、後を追い掛けてきたソーニャと向かい合った時、背景の真っ白な光の中に十字架が浮かび上がった。キリストとマグダラのマリアのようで、ラスコリニコフの心の浄化、再生を暗示させる、宗教画のような美しい場面だった。キリスト教がベースにある作品とあって、三浦さんはキリスト教関連の本を読むだけでなく、牧師にも長時間にわたって話を聞きに行ったという。役作りに時間をかけて取り組む人だった。

そんな三浦さんが今年12月に挑むはずだったミュージカル「イリュージョニスト」は、さらに飛躍する作品になるはずだった。演出のサザーランドは「タイタニック」などを演出した英国で最も勢いのある演出家だし、脚本、音楽も英国の気鋭の若手が担当した。昨年秋にはワークショップを行い、11月からの本格的な稽古を待つばかりだった。これまで、ニューヨーク・ブロードウェー、ロンドン・ウエストエンドの舞台に主演として立った日本人俳優は松本白鸚、渡辺謙がいるが、三浦には2人の名優に続く可能性があった。シンシアはインスタグラムで「友よ、ゆっくり休んで」「あなたのエネルギーや愛は生き続ける」と追悼した。世界の演劇人も三浦さんの死を悲しんだ。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)

このコラムにはバックナンバーがあります。

もっと見せる

関連記事

Close
Close