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夏の映画戦線 異状あり 座席制限 感染拡大…大入り望めず:東京新聞 TOKYO Web

8月21日公開予定のディズニー映画「2分の1の魔法」(C)2020 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 新型コロナウイルスの感染者が再び増加傾向にあるが、映画館は感染拡大の防止対策を施して、新作の封切りを再開している。例年、大作や話題作などが盛りだくさんの夏、今年はほとんどの映画館で座席制限せざるを得ず、「大入り」「大ヒット」などは見込めそうもない。終息が見えないコロナ禍に危機感を強く抱く映画界は「映画館は安全な場所」と必死に呼び掛けているが…。 (藤原哲也)

 「コロナショックを乗り越えて、日本映画がもっと豊かで誇らしくなるように頑張っていきたい」

 6月30日、東京都内の映画館であった「『映画館に行こう!』キャンペーン2020」の記者会見。日本映画の顔としてキャンペーンアンバサダーに就任した俳優の役所広司はそう決意を語った。ピンチが続く映画界のために「こういう役目は苦手だが、長年映画界に世話になっているので、役に立つことがあればと思い引き受けた」と一肌脱ぐ気概を示した。

 キャンペーンは日本映画製作者連盟など4団体が参加。映画館の安心や安全を発信するため、8月末まで公式ホームページで映画館の感染予防の安全対策を紹介するほか、ユーチューブで役所ら10人の映画人による「リレー動画」を公開する。この時期に公開する作品の俳優や監督らが登場する動画も準備するという。

 春から公開延期が相次ぎ、政府による緊急事態宣言が発令され、全国的に上映がストップした。6月に入り、徐々に新作の公開が始まっているが、興行会社は映画館で前後左右を空けるなどの座席制限を設けていて、観客は入場による感染の不安が拭えない状況が続く。配給会社は満席での上映ができないこともあり、興行面で期待できる作品の公開は少ない。会見に出席した同連盟の岡田裕介会長(東映会長)は「やはり作品が面白くないと映画館には来てくれない。それがそろう8月上旬には元に戻したい」と語った。

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 例年、夏休み映画は子どもや若い世代を動員できる作品が目立つが、今年は事情が大きく異なる。

 映画ジャーナリストの大高宏雄さんは「今日から俺は!!劇場版」(17日公開予定)、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」(同23日)はコロナ禍がなければ、30〜40億円ほどの興行収入が期待できたと指摘。コロナの状況で2作が“起爆剤”となるか注目している。

8月7日公開予定の「映画ドラえもん のび太の新恐竜」(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK2020

8月7日公開予定の「映画ドラえもん のび太の新恐竜」(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK2020

 そして、春から延期され、満を持して公開の「映画ドラえもん のび太の新恐竜」(同8月7日)、ディズニーの新作「2分の1の魔法」(同8月21日)といったファミリー向けの話題作にどれだけ動員できるかにも注目している。しかし、「座席間隔があると、親子の距離が離れてしまい、ファミリー映画にどこまで人が集まるのかは未知数。子供の夏休みが短くなるのと、最近再び感染者数が増えているので、先が読めない」と懸念を示す。

 今夏の“目玉”となる2作だが、配給会社や宣伝会社の担当者たちも宣伝方法に頭を悩ませている。「2分の1−」の担当者は「『映画館に来て』と通常通りに言えない“暗黙の了解”があるので、言葉のニュアンスを柔らかくして伝えている」と苦しい胸中を明かした。

 大高さんによると、米国で感染拡大が続く影響で、日本での洋画の公開延期の可能性がまだありそう。「しばらくは邦画作品に頼らざるを得ないのでは」と指摘する。新たなキャンペーンで夏の興行を盛り上げたい映画業界。しかし、感染者数の動向とにらめっこする苦悩の日々が続きそうだ。

◆全国映画ランキング 上位3作いずれもジブリ

 直近の6月27、28日の全国映画ランキング(興行通信社調べ)によると、注目作だった米作品「ランボー ラスト・ブラッド」を4位に抑え、上位3本は「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」「風の谷のナウシカ」とスタジオジブリの旧作が占めた。映画館の苦境を救うために企画された再上映(「ゲド戦記」を含む計4作)とはいえ、まだ新作の少なさを表しているともいえる。

 この状況を大高さんは「やはりジブリ作品は特別で、旧作の中でも飛び抜けている。全国300スクリーン以上の上映なので、映画館は非常に助かっている」と分析。今夏の新作の動向については、「ランボー−」などの動きを参考にすると、コロナ禍がない場合と比べて5〜7割程度の動員に落ち着くとみる。「感染拡大が続けば、さらにマイナスになる」と危機感を募らせた。

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