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「それでも、家族~All is Well~」が日本初放送!中国で社会現象を巻き起こした笑って泣ける大ヒットドラマの魅力を解説 – 映画ナタリー 特集・インタビュー

中国で社会現象を巻き起こしたドラマ「それでも、家族~All is Well~」がCS放送「女性チャンネル♪LaLa TV」で10月27日より日本初放送。10月26日まで第1話、第2話の無料オンライン試写会が同チャンネルの番組ページで開催されている。ヤオ・チェンが主演を務めた本作は、両親の愛情を体感できずに育った主人公を軸に、さまざまな悩みに直面する家族の姿を描いた笑って泣けるヒューマンドラマだ。

映画ナタリーでは応援したくなるヒロインを生み出し、親の介護、男尊女卑といった中国の社会問題に切り込んで大ヒットした本作の魅力をレビューで深掘り。ドラマを楽しむためのQ&Aや本作に登場する生きた中国語表現も紹介する。

文 / 沢井メグ

「それでも、家族~All is Well~」
第1・2話 無料オンライン試写会実施中!

番組ページ

観る前に押さえておきたい3つのポイント

30秒でわかる「それでも、家族~All is Well~」

本作の主人公は、2人の兄が両親に愛されているのを尻目に、親の愛を体感できずに育った妹のスー・ミンユー。彼女は大学時代のある出来事から家族と絶縁状態に。10年以上が経ったある日、仕事で成功を収めた彼女のもとに母の死の知らせが……。ひとり暮らしになった父を誰が引き取るかをきっかけに、家族は再び関わり始める。一見、家族に対し冷淡なミンユーですが、家庭内の様々な問題を陰からサポートするのはいつも彼女。その心にあるのは捨てきれない家族への愛と諦めにも似た悲しみでした。和解と衝突を繰り返した先で副題の「All is Well(全てうまくいく)」が示すものとは? 共感の嵐を呼んだラストは必見です!

「それでも、家族~All is Well~」より、ヤオ・チェン演じるスー・ミンユー。

doubanで7.7点ってどれぐらいすごいの?

「それでも、家族」はdoubanで7.7点を獲得! doubanは中国最大のコミュニティサイトで、作品レビューではユーザー評価をもとに10点満点で点数がつけられます。doubanユーザーはとにかく辛口なことで有名です。作品に少しでも粗(あら)があると低評価がつけられがちですが、シビアな分、信頼と影響力は大きいと言えます。他の人気作の点数を見てみると、日本でも大ヒットした「陳情令」は7.7、「瓔珞<エイラク>~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~」は7.1。「それでも、家族」の7.7点はかなり高い評価なんです。

中国の大人たちが直面している問題とは?

中国は約30年続いた一人っ子政策の影響で、世界有数の少子高齢化大国。子供1人で親2人と祖父母4人を支えなければならず、「親の介護問題」は本当に切実です。しかも、現在、一人っ子世代は子育て世代でもあり、介護も含めた経済的な負担はかなりのプレッシャーになっているようです。さらに中国の経済成長が鈍化したことで将来に対する不安も。私達もなんだか共感できますね。ドラマと同様に、現実でも市民の不安や「少しでも収入を増やしたい」という気持ちにつけ込んだ投資詐欺問題も起きています。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からニー・ダーホン演じるスー・ダーチャン、ガオ・シン演じるスー・ミンジョー。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からニー・ダーホン演じるスー・ダーチャン、ガオ・シン演じるスー・ミンジョー。

ドラマの魅力をレビューで徹底解説!

中国では「女性のリアル」を描く現代ドラマが人気

かつて華流ドラマと言えば、時代劇が中国、現代劇が台湾と住み分けがありましたが、中国でも多くの現代ドラマが作られるようになり、特に都市部の女性のリアルを描いたドラマが人気です。

その中で社会現象になるほど大ヒットしたのが「それでも、家族~All is Well~」。これまで家庭を舞台にしたドラマと言えば嫁姑問題、教育問題などが定番だったところ、親の介護、男尊女卑など現代中国人が抱えるリアルな悩みに切り込んだことで絶大な共感を得ました。

中国って男尊女卑が残っているの? 中国の女性と言えば強いイメージがあり、現代ドラマで男尊女卑の問題が語られることを意外に思う方もいるかもしれません。ですが、実際に男児や男性を重視する「重男軽女(zhòng nán qīng nǚ / ジョンナンチンニュ)」の思想が残っている家庭があるのも事実。劇中のエピソードで「兄に遊ぶお金はあげるのに、妹には受験の問題集さえ買ってあげない」というように、男兄弟と待遇に差をつけられて育ったという女性は決して珍しくありません。「寵妃の秘密」シリーズや「夢織姫~秘密の貴公子に恋をして~」のようにフィクション要素が強い時代劇のヒロインが、男性に引けをとらないほど強く、夢をどんどん叶えていくというのは、もしかしたら「重男軽女」が残る中国を生きる女性にとって理想の姿なのかもしれません。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からヤオ・チェン演じるスー・ミンユー、ガオ・シン演じるスー・ミンジョー、グオ・ジンフェイ演じるスー・ミンチョン、リー・ニエン演じるジュー・リー。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からヤオ・チェン演じるスー・ミンユー、ガオ・シン演じるスー・ミンジョー、グオ・ジンフェイ演じるスー・ミンチョン、リー・ニエン演じるジュー・リー。

家事分担は当たり前!? ドラマから見える働く女性の日常

「重男軽女」の思想が残る一方で、中国は女性の社会進出、つまり働く女性がとても多い国です。また中国の女性は上昇志向が強いと言われており、「それでも、家族」の主な女性キャラもバリバリと働いていますね。

では家事は誰がするのでしょう? 中国では家事は必ずしも女性メインではありません。劇中でも男性が家事をするシーンが何度もありました。中国の男性、特に若い世代は家事全般をこなすと言われますが、物語の舞台である蘇州や隣の上海の男性には“尽くす系男子”が多いと言われ、家事や育児を率先してすることで有名。劇中でも、兄達が家事の他に妻の足をマッサージして疲れを労う姿もありました。兄達には「妻にそんなに優しくできるなら、ミンユーにもう少し優しくすればいいのに」と思わずにはいられませんが、人が持つ矛盾をナチュラルに描いたことで彼らの人間臭さがより一層際立ちました。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からヤオ・チェン演じるスー・ミンユー、トニー・ヤン演じるシー・ティエンドン。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からヤオ・チェン演じるスー・ミンユー、トニー・ヤン演じるシー・ティエンドン。

なぜか愛おしくなる登場人物たち

兄達もそうですが、ミンユーも家族との対話を諦めなければいいのに……父親だって自己中心にならずもう少し親として子供たちに向き合えば……欠点だらけのスー家の4人ですが、なぜか愛おしくなるのはリアリティあるキャラクター設定と俳優の演技力の賜物でしょう。

特にミンユーを演じたヤオ・チェンは強さと、心に抱えていた脆さの出し入れが絶妙。初登場時は共感されづらいヒロインかと思われましたが、物語が進むにつれ視聴者をどんどん魅了していきました。そして、父のスー・ダーチャンを演じたニー・ダーホンは本作で大ブレイク! 情けない父親ぶり、思わぬ病気にかかったことでようやく娘への本当の思いを伝えた姿……その演技が評価され中国版エミー賞とも呼ばれる白玉蘭賞で最優秀主演男優賞を受賞。ダーチャンのセリフやSNSのスタンプが大流行し、改めて「恋愛先生 MR・RIGHT」などの過去の出演作が注目されています。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からニー・ダーホン演じるスー・ダーチャン、ヤオ・チェン演じるスー・ミンユー。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からニー・ダーホン演じるスー・ダーチャン、ヤオ・チェン演じるスー・ミンユー。

スー家の4人のほか、2人の兄嫁と心優しきレストラン店主シー・ティエンドンにも注目したいところ。兄嫁達は小姑としてミンユーに辛く当たるのでは?と心配になりますが、2人は女性としてミンユーの気持ちを最も汲み取れる存在。ミンユーに理解を示し、それぞれの家庭の問題にも向き合いながら、夫の凝り固まった家族観を解きほぐしていく様子も見どころです。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からニー・ダーホン演じるスー・ダーチャン、ガオ・ルー演じるウー・フェイ、リー・ニエン演じるジュー・リー。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からニー・ダーホン演じるスー・ダーチャン、ガオ・ルー演じるウー・フェイ、リー・ニエン演じるジュー・リー。

そして家の外からミンユーを支えるのがトニー・ヤン演じるシー・ティエンドンです。時にミンユーをそっと見守り、時にしっかりとそばに寄り添う距離感が最高。彼はミンユーの心のよりどころであると同時に、様々な問題が起きるドラマの中で、視聴者にとっても癒しの存在だと言えそうです。

「それでも、家族~All is Well~」より、ヤオ・チェン演じるスー・ミンユー(手前)、トニー・ヤン演じるシー・ティエンドン(奥)。

「それでも、家族~All is Well~」より、ヤオ・チェン演じるスー・ミンユー(手前)、トニー・ヤン演じるシー・ティエンドン(奥)。

「それでも、家族」を楽しむためのQ&A

Q. 「それでも、家族」のキャストってどんな人たち?

ミンユー役のヤオ・チェンはWeiboのフォロワー数が8400万人超と中国でトップクラスの影響力を持つ女優。「それでも、家族」ではヒロインの強さと弱さを巧みに演じ、特に終盤、ようやく父の心に触れたシーンは視聴者の胸を打ちました。出演作には「失踪、発見」「西遊記2~妖怪の逆襲~」などがあります。

ミンユーを陰ながら支えるシー・ティエンドンを演じたのは台湾出身の俳優トニー・ヤン。そのイケメンぶりから独身時代には台湾で“国民的彼氏”と呼ばれたことも。本作のほか台湾映画「祝宴!シェフ」、香港映画「アニタ」など各地の映画やドラマで活躍中。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からヤオ・チェン演じるスー・ミンユー、トニー・ヤン演じるシー・ティエンドン。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からヤオ・チェン演じるスー・ミンユー、トニー・ヤン演じるシー・ティエンドン。

Q. ミンユーが進学を反対された清華大学ってどれくらいすごいの?

中国No.1の超名門大学です。さらに、イギリスの高等教育専門誌・Times Higher Educationが発表した大学ランキングによると世界16位、アジア1位。同ランキングで、東京大学が世界35位、アジア6位であることを考えるととんでもなく優秀な大学ということが分かりますね。長兄に続いて妹も清華大学に行くとなれば、それこそスー家の名誉だと思いますが、ミンユーは母親が決めた師範学校に進学することに……。ミンユーと母親の間に一体何があったのでしょうか。

Q. 中国は一人っ子政策じゃないの?スー家が3人兄妹なのはなぜ?

中国では人口増加抑制のため1979年から2015年まで「一人っ子政策」が実施されました。文字通り「一組の夫婦に子供は1人だけ」なのですが、例外規定もあったんです。

例えば農村部では働き手確保のため、また少数民族は民族の保護のためなど。他にも多額の罰金を納めることで第2子以降を産むというケースも。罰金の額がかなり高額だったため、一部の富裕層の間で第2子を持つことがステータスと言われた時期もあるくらいでした。

一人っ子政策にもいろんな例外があったんですね。スー家がどのような経緯で3人兄妹になったのかは、ぜひ本編でご覧ください!

Q. 中国では親孝行の義務が法律に明記されてるって本当?

中国では2013年改正の「高齢者権益保障法」で「高齢の親と離れて暮らす子供は頻繁に帰省し、親に顔を見せなければならない」と規定されました。物やお金のサポートだけでなく、精神面での親孝行も促そうということです。

中国では古来から「百善孝為先(百の善行はまず親孝行から)」と言われるほど、親孝行を重視しています。一方で現在は子供の生活が多様化し、昔ながらの親孝行は難しいわけで……。道徳として親孝行の大切さはわかっているけど、現実問題として親の望みを叶えることは難しい。「それでも、家族」でもその葛藤が色濃く出ています。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からグオ・ジンフェイ演じるスー・ミンチョン、ニー・ダーホン演じるスー・ダーチャン。

「それでも、家族~All is Well~」より、左からグオ・ジンフェイ演じるスー・ミンチョン、ニー・ダーホン演じるスー・ダーチャン。

中国ドラマを楽しむためのQ&A

Q. 中国ドラマ、俳優さんが好きになったらどんなところで情報をゲットすればよいの?

なんと言ってもまず中国のSNSサイトWeiboです! アイコンの下に「V」マークのバッジがついていれば本人やマネジャーが運営している公式と見て間違いありません。画像を見るだけでも楽しめますね。中国のSNSを使いこなすのはちょっとハードルが高い……という方は、TwitterやInstagramでドラマ公式、放送局、アジアエンタメに強いメディアや編集者、ライターのアカウントをフォローしておくと情報が入ってきますよ。

Q. 現地のファンはどんな“推し活”をしているの?

ファン同士で議論したり、グッズや推しがアンバサダーを務める商品を買ったり、推しのアクリルスタンドやぬいぐるみを連れてお出かけしたり……日本の推し活と似ていますね。また聖地巡礼も欠かせません。「それでも、家族」でも、蘇州にあるミンユー達の実家やティエンドンが経営するレストランなどのロケ地は聖地巡礼をする観光客でいっぱいになったそうです。

「それでも、家族~All is Well~」で学ぶ
大人の中国語会話術!

現代を舞台にした本作には、まさに生きた中国語表現がたくさん登場します。そう、学習者が知りたいのは実際に使える中国語、欲を言えばTPOにふさわしい表現を身につけたいですよね。ということで、劇中に登場した大人の会話表現を2つピックアップします。

「貴姓?」と「免貴」

まず、第3話でミンユーがレストランの店主シー・ティエンドンに名前を聞くシーン。ここでミンユーは「贵姓? / 貴姓?(guì xìng / グイシン)」と尋ねました。多くの教科書で第一課くらいに登場する表現ですが、「日常では使わないのでは?」という声もよく聞かれます。

「貴姓?」は「ご芳名をお聞かせください」というような敬語表現です。確かに大学生同士のようなカジュアルな関係で使うと大げさな感じがします。でもミンユーのように社会的な地位があり、自立した大人の女性の場合は好感を持っている相手に対しサラッと使うのですね。

名前を聞かれたシー・ティエンドンの返答も技ありです。彼は「免贵 / 免貴(miǎnguì / ミエングイ)」と言って名刺を差し出します。免貴は「貴姓」に対して謙遜の返事で、直訳すると「(尊敬表現である)貴はつけないでください」、つまり「名乗るほどの者ではありませんが」と言ったところ。「貴姓」と言われて瞬時に「免貴」が出てくるあたり、ティエンドンの教養の高さと相手との距離感を上手にはかる力が伺い知れます。息ぴったりのかけ合いは、2人の今後を予感させるようです。

四字成語の量がすごい

セリフ内に四字成語が多用されるのも注目ポイントです。学生時代、ミンユーと長兄のミンジョーが「約束だよ!」と指切りするシーンでは「一言为定 / 一言為定(yī yán wéi dìng / イーイェンウェイディン)」、次兄のミンチョンが独立後も母親から金銭的な援助を受けていたことが判明して夫婦喧嘩になったとき、ミンチョンが親が子供を可愛がるのは「当たり前のこと」と言うところで「天经地义 / 天經地義(tiān jīng dì yì / ティエンジンディーイー)」と発言するなどなど……1つの話で4~5回も成語が出る回もありました。成語というと難しいイメージですが、日常会話はもちろん喧嘩のようにヒートアップしているときでも自然に使うのですね。筆者も中国の方から「中国人は成語をよく使います、逆に使わないと文法的に間違いはなくても子供っぽく聞こえます」と聞いたことがあります。敬語表現に成語の使い方など「それでも、家族」からは大人の会話表現が学べそうです。

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