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“一重スターの宝庫” 韓国芸能界と日本の二重信仰 第4回 一重まぶたの扱い方 | 酒井順子「消費される階級」

“一重スターの宝庫” 韓国芸能界と日本の二重信仰 第4回 一重まぶたの扱い方 | 酒井順子「消費される階級」 | よみタイ

あってはいけない差別、使ってはいけない言葉。
昨今の「反・上下差」の動きは、2015年に国連加盟国で採択されたSDGsの広まりにより急速化した。
差別や格差を無くし、個々の多様性を認め横並びで生きていきましょう、という世の中になったかに見えるものの……。
貧困差別、ジェンダー差別、容貌差別等々、頻繁に勃発する炎上発言に象徴されるように、水面下に潜った上下差への希求は、根深く残っているのではないでしょうか。
名著『下に見る人』の書き手、酒井順子さんが、生活のあちこちに潜む階級を掘り起こしていく連載です。

イラストレーション:石野点子イラストレーション:石野点子

第4回 一重まぶたの扱い方

 よくあるパターンではありますが、コロナ時代となってから、韓国ドラマを見るようになりました。こんなに面白いんだ……、という驚きと同時に、私が感じたもう一つの驚きは、「一重まぶたの扱い方」の、日韓の違いです。
 韓国ドラマにおいては、日本のドラマよりもずっと、一重まぶたの俳優、それも特に女性俳優が重用されていました。たとえば、日本でこの夏「六本木クラス」としてリメイクされたことでもお馴染みの、「梨イ泰テ院オンクラス」。レストラン経営者である男性主人公の頭脳となって彼を成功へと導く女性を演じたキム・ダミは、一重まぶたです。
 スタイルが良く、演技力もある彼女ですが、顔だけを見ると、意外に地味。おそらく日本であれば主役級としては配役されず、主役の友人とか同僚として登場するタイプです。しかし彼女は、大人気ドラマのメインキャストとして活躍し、ドラマの中でも美人として扱われているのでした。
 はたまた、「トッケビ」で主演を務める、キム・ゴウン。彼女もくっきり一重まぶたですが、数々の恋愛ドラマで主役を張る人気者なのです。
 東アジアにおいてお隣同士である韓国人と日本人は、顔立ちはほぼ同じと言っていいでしょう。だというのに韓国では、一重まぶたの女性俳優が恋愛ドラマで主役を張っているのに対して、日本でその手の立場にいるのは、ぱっちり二重の女性ばかりとは、これいかに……。
 不思議に思って韓国の知人に聞いてみると、韓国ではもちろんぱっちり二重の女性も人気だけれど、キム・ダミやキム・ゴウン的な一重まぶたの女性が好き、という人もかなり多いのだそう。韓国といえば整形大国ということでも知られていますが、皆が皆、二重まぶたを求めているわけではないようです。
 この現象を見て私は、「韓国、先んじている」と思ったことでした。日本のまぶた事情を見ると、一重と二重の格差は相当に大きいのであり、特にテレビなどに映る女性の世界においては、一重差別が如実に存在するのです。
 たとえばキー局における女性アナウンサーに、一重まぶたの人はほぼ、存在しません。NHKでは例外的に、有働由美子のように一重の女性アナウンサーが存在したものの、それでも一重率はごくわずか。民放各社を見れば、一重まぶたの女性アナウンサーはゼロパーセントであり、一重まぶたの女性は、どれほどアナウンス能力に優れていようとも、アナウンサーを志望すること自体が現実的ではありません。
 一方、男性アナウンサーはと見ると、二重まぶたの人の割合は減少するのでした。どのテレビ局を見ても、男性アナウンサーは一重と二重が混在しており、二重は必須条件にはなっていない。
 この状況は、俳優やアイドルにおいても同様と言えましょう。芸能界でも、男性の場合は、一重まぶたでも人気者になることができるのに対して、女性は二重まぶたでないと、そもそもスタートラインに立つことすら難しかったりするのです。一重まぶたの女性がテレビに出るとしたら、お笑いもしくは文化人系の枠なのであり、俳優業界では自動的に、「個性派」とか「演技派」、はたまた「性格俳優」といった枠に入りがちです。
 芸能系の仕事においては、男性は容姿もある程度は大切だが、それよりも実力重視。対して女性は、実力も大事だがまずは容姿が整っていてこそ。……という事実を、この現象は示していましょう。

  • 連載目次
    酒井順子「消費される階級」


酒井順子

さかい・じゅんこ
1966年東京生まれ。高校在学中から雑誌にコラムを発表。大学卒業後、広告会社勤務を経て執筆専業となる。
2004年『負け犬の遠吠え』で婦人公論文芸賞、講談社エッセイ賞をダブル受賞。
著書に『裏が、幸せ。』『子の無い人生』『百年の女「婦人公論」が見た大正、昭和、平成』『駄目な世代』『男尊女子』『家族終了』『ガラスの50代』など多数。
最新刊は、京都に住んでいた小野小町から新島八重までをたどる『女人京都』(小学館)。

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