俳優

俳優・東啓介「“偶然のかたまり” が “写真” なんじゃないかと思う」 | エンタメ

東 啓介連載「tone0714」vol.6

今回は、東啓介さんの“写真にまつわるこだわり”について。何かの「ついで」に写真を撮るのではなく、写真そのものを「撮りにいく」、そんな東さんの写真論。
月島ロケの写真とともにお届けします。

「tone0714」の意味:東さんの愛称「とん」と、“音色”や“濃淡”を意味する「tone」を掛け、そこに誕生日7月14日の数字を組み合わせたタイトル。

東啓介が考える、写真の魅力

街を散策すれば、たくさんの風景が視界に飛び込んでくる。人物、植物、建物、風や光etc.。
あまたの被写体がある中、カメラを手にした東さんが思わずシャッターを切ってしまうのは、意外なもので……。

俳優・東啓介「“偶然のかたまり” が “写真” なんじゃないかと思う」_2

懐かしさと生活感のある被写体に魅かれる

“雑然としているもの” の面白さ

――月島でロケ撮影をしましたが、カメラマンと機材などについて、かなり盛り上がっていましたね。

:カメラ機材や構図についてはですね、まだまだ勉強中です。あたりまえだけど、覚えることもやることも多くて正直、大変(笑)。だけど、日常的に“写真を撮ること=アウトプット”ができているから、知識をインプットすることができているのかも。やっぱり、覚える過程であれもこれもって、いろいろ調べたくなりますし。
で、「なんでこの機材がいいのか」や「この写真は、なぜ人気なんだろう」といった疑問の答えへアプローチしていきます。いろんな方のネット上に挙げられている作品を見て、「この人が撮る写真は、こういう色合いが特徴なんだな」とか、「この機材だとこういう仕上がりになるのか」ということを、自分なりに答え合わせする感じで。
そうしているうちに自分が好きな感じの作品と出合ったらポチっちゃいます(笑)。

――写真をポチるんですか?

:さすがにフォトパネルみたいな大ぶりのものはまだですが、写真集や、写真を探していく過程で出合ったアクセサリーなどは買います。
たとえば、自分が使っているスマホケースのイラストは、ブラジル出身のアーティストの作品なんですけど、これも、たまたまインスタグラムで見つけて。ちょっと懐かしさがあるというか、キレイめではない感じが好きなんですよね。

俳優・東啓介「“偶然のかたまり” が “写真” なんじゃないかと思う」_3

――(スマホケースを見て)個人的には日本の伝説的バンド「はっぴいえんど」の1stアルバム『はっぴいえんど』のジャケットのような、昭和の香りとポップさを感じます。素敵なイラストですが、海外のアーティストさんなんですね。

東:「好き」を掘り下げると、また別の「好き」との出合いも増えますよね。僕の写真も今後、懐かしさと生活感のある風景や物、そのようなものが多くなっていくと思います。
というのも、最近は、あんまり新しいものやキレイなものを撮っていないんです。風景も東京スカイツリーより、東京タワーを撮りたくなりますし。東京タワーがキレイではない、という意味ではないですよ。今は、“わかりやすく美しいもの”にはアンテナが向かないみたいで。
ほら、こんな感じですもん(と、スタッフにスマホの写真フォルダを開いて、何枚か写真を見せる)。これは商店街の八百屋さんの前に停めてある配達用バイクと段ボールと回収待ちのゴミを、サッと撮ったもの、こっちの写真は自宅の居間です。

――ゴミに居間!? でも、言われてみれば確かにそう見えます。

東:その「一瞬何かわからない」っていうのが好きで(笑)。

――なるほど、被写体全体ではなく、被写体の一部に着目するんですね。

東:なんか「見えすぎちゃわないくらい」がいいなって。汚いもの……という表現はよくないな(笑)、「雑然としているものを、サッと撮ってみる」、そんなイメージでシャッターを切ってます。普通に見たらなんでもないのに、切り取ったら面白いっていうのは、写真の醍醐味ですよね。

俳優・東啓介「“偶然のかたまり” が “写真” なんじゃないかと思う」_4

“撮ること” で、“撮られること” も深まる

――前回(連載第5回)、自分の撮った写真にタイトルを付けなくなったとおっしゃいましたが、もう少し具体的な理由を伺いたいです。

:事務所のコンテンツにアップするために写真を撮っていた時期があって、その時は、それぞれにタイトルを付けてました。でも、やめちゃった。名前を付けちゃうと、僕の思ってることが伝わりすぎちゃうなと思ったので。
たとえば、僕が何かの写真に「夜明け」っていうタイトルを付けてアップしたら、どう思いますか? 「これから夜明けが来るのかな」「何かから解放されるのかな」と、写真そのものより「夜明け」に込められた作者の意図を意識しちゃいませんか?
 
写真は1枚勝負。
せっかく僕の写真を目にしてもらえたのなら、自由に想像してもらいたいです。僕の思いを押し付けることは、なるべく避けようと思って。感想を聞いたうえで、「実はこう思って撮りました!」とネタバラシしたいですよね!

――受け取る人の感性も大事にしているんですね。

:そんなたいそうなことではなく……、写真集の古典的作品や大御所カメラマンさんのフォトブックには、タイトルを付けているものが少ない気がしたので、それでです(笑)。
そういえば、被写体を窓越しに撮る、誰かの日常をのぞき見しているような感じで写真を撮る、そんな海外のカメラマン(ソール・ライター)がいるんです。その方の写真集にもタイトルはなく、フィルム番号だけでした。

俳優・東啓介「“偶然のかたまり” が “写真” なんじゃないかと思う」_5

――国内外の写真集もよく見ているんですね。

東:いいなと思ったカメラマンさんの写真集は、すぐ手に入れます。作品を撮る過程から学ぶことも多いですよ。
去年、僕が出した写真集(『何色』/KADOKAWA)でご一緒させていただいたカメラマンの神藤剛さんは創意工夫が半端なくて、僕、ずっと現場で「すげえ」ばっかり言ってましたもん(笑)。
その時は砂丘で撮影をしたんですけど、1枚目は大自然の中に、めっちゃバカでかいアルミホイルみたいなのを4本くらい地面に差して、それらをババーッとなびかせた真ん中に僕が立って、「ちょっと宇宙人かなんかが来たぞ」みたいな感じに見えるような写真。2枚目は砂丘に鏡をめいっぱい落とした後、直接僕を撮るんじゃなく、鏡の中に映る僕を撮る、とか。
びっくりするような工夫を次々になさっていた。めちゃめちゃ考えないとできないし、毎日考えたから必ず出てくるっていうわけでもない。だから余計にすごいなと。

――カメラマンのセンスと熱意に直接触れることで、東さんの写真への感度も上がっているわけですね。

東:僕にとって写真は表現のひとつではあるけれど、その写真が自分の感性を磨くというよりは、「自分がカメラで撮る」ことによって、「自分が相手に何を求められているのか」も理解できるようになる。そんな利点があるんです。
たとえばドラマの撮影で、スタッフさん同士が「今(撮影で使っているカメラのレンズは)何ミリです」というやりとりをしていることがあります。それを聞いて僕は「このシーンは全身が入るんだな」「寄りなんだな」ということがわかるんですけど、それは写真撮影の場合も同じ。使っているレンズのサイズを見れば、相手がどういう写真を撮ろうとしているのかがわかるんですよ。
写真は、いろんな意味で僕の生活に根差した趣味と言えるのかもしれない。

俳優・東啓介「“偶然のかたまり” が “写真” なんじゃないかと思う」_6

「“偶然のかたまり” が “写真” なんじゃないかと思う」

誰かのありのままを1枚で表現できる写真って、すごく魅力的

――たとえば友達と、“写真”について話したりしますか?

:僕が「写真を撮ってるよ」という話はよくするけど、「僕はこうやって撮ってる」みたいな具体的な話は、したことがないかも。

今って、動画も手軽に撮って作品にできる時代ですけど、「その瞬間を残す」のなら、やっぱり写真がいいな。
シャッターを切る時、僕はいつも「撮らせていただいてる」って思っちゃうんです。自分が作品を作るのではなく、「その場に生まれた、とある瞬間」を撮らせてもらってる、その感じがいいなぁと。

たとえば、何かの打ち上げで誰かが笑っている写真を撮るとしますよね。その人の笑顔やその場の空気は、僕が意図的に作ったものじゃなく、「その場に生まれた、とある瞬間」です。誰かの、どこかの、ありのままの日常を1枚で表現できるって、写真ってすごく魅力的じゃないですか? 
そしてそういう瞬間は、自分が見つけないと生まれないし、そういう場所に行かないと切り取れない。
僕と僕以外のいろんなめぐりあわせの中で生まれた「“偶然のかたまり”が“写真”なんじゃないか」って思います。

俳優・東啓介「“偶然のかたまり” が “写真” なんじゃないかと思う」_7

前回(連載第5回)の2枚目の写真、覚えてますか? あの写真の手前には緑の木があるんですけど、もしこの木がなくて、蛇口と桶とホースだけだったら、僕はシャッターを切っていないと思うんですよ。あのバランスで配置されていたから撮りたいと思った。そんな“偶然のかたまり”が僕らしい写真なんじゃないかなって。

僕は写真以外にも絵や書道や歌、演技といった「僕自身を表現する方法」をいくつか持っています。たとえば、僕の発した何かの表現について「こういう絵が好きなんだ」とか「こういう写真の撮り方するんだ」「演技でこんな表情も見せるんだ」といった、誰かが感じた「僕らしさ」が影響し合って「僕らしく」なっていく。そうやって「自分流」みたいなものを作っていけている……。そう考えると、意外と僕は「僕」を気軽に提示できる存在なのかもしれません。

――さて、“東啓介写真展”はいつ頃見られそうですか?

東:あくまで「いつかできたらいいな」って話ですよ! まだまだ勉強中ですから。

俳優・東啓介「“偶然のかたまり” が “写真” なんじゃないかと思う」_8

プロフィール

ひがし・けいすけ ●1995年7月14日生まれ。東京都出身。2013年、『テニスの王子様』(2ndシーズン)で俳優デビュー。その後はミュージカル作品を中心に活躍し、『ダンス オブ ヴァンパイア』(2019年)では帝国劇場の舞台にも立ち、近年では『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』や『マタ・ハリ』(ともに2021年)などに出演。また、映像作品にも活躍の幅を広げる。2022年1月からオンエアされたTBSドラマ『ファイトソング』に烏丸薫役で出演。6月、フジテレビドラマ『ナンバMG5』に“最後の敵”として出演。今年の10月6日~29日、日生劇場で上演されるミュージカル『ジャージー・ボーイズ』に、ボブ・ゴーディオ役(Wキャスト)で出演。
■日生劇場ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』公式ホームページ https://www.tohostage.com/jersey/

東 啓介:公式サイト&公式SNS

取材・文/中川 薫 撮影/北浦敦子 ヘア&メイク/加勢 翼 スタイリスト/青木紀一郎

もっと見せる

関連記事

Close
Close