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西島秀俊 日本映画に身をささぐ 「グッバイ・クルエル・ワールド」で危ない役:東京新聞 TOKYO Web

 今年の米アカデミー賞で、主演作「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞に輝いた西島秀俊(51)=写真。新たな主演映画「グッバイ・クルエル・ワールド」(大森立嗣監督、9日公開)では、強盗団の一員の元ヤクザという近年なかった危険な役に挑んだ。「人間の業みたいなものを掘り下げた作品はもっとやっていきたい」。日本映画界を代表する俳優の一人となった今、その矜持(きょうじ)が言葉ににじむ。 (藤原哲也)

 世代も経歴もバラバラで互いに素性を知らない五人組が、目出し帽と銃を手にヤクザが集うラブホテルの一室を襲い、一億円近くを手に入れる。金を分け、それぞれの人生に戻っていくはずだったが…。ファンクやソウルなどの洋楽に乗せて激しい銃撃戦が展開する異色の娯楽作だ。

 西島が出演を決めた一番の理由は、人間ドラマに定評のある大森監督だった。「俳優たちがすごく生々しく作品に存在している。自分も演出を受けたかった」。いつもの大森作品と趣向は違うが、世代や社会の断絶といった現代的テーマがしっかり描かれていることも響いた。

 撮影に入ると、生々しさを引き出す監督の手腕に目を見張った。演技プランを徹底的に解体され、名付けようのない感情のままカメラの前に立つよう求められている感覚が「すごく印象に残っている」と明かす。

映画「グッバイ・クルエル・ワールド」から

映画「グッバイ・クルエル・ワールド」から

 追う者と追われる者、一人一人の物語で群像劇でもある本作。西島演じる安西は家族と平穏に暮らすことを望むが、次第に過去に引きずられていく。「自分の過去を後悔しながら、まっとうに生きようとする血肉を持った人間と見てくれたらうれしい」。劇中にはめったにない優しい語り口でほほ笑む。

 世界最高峰の映画賞での受賞で、今年の日本映画界の顔になった。「居心地の良いすてきな場所だった。ただ、あそこに再び行くのは大変なこと。参加させてもらったのは濱口(竜介)監督の力なので、今まで以上に精進し、もっと深く繊細な演技をしなければと思っている」。深く息をつき、こう付け加えた。

 「(俳優として)背負う物があればきちんと背負いたいし、これからも自分の身を日本映画にささげたい」。立場を踏まえた上での覚悟の言葉に聞こえた。

 出演はほかに斎藤工、宮沢氷魚、玉城ティナ、大森南朋、三浦友和ら。R15+指定。東京・TOHOシネマズ日比谷などで上映予定。



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