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Vol.1111 俳優 川瀬陽太(映画『激怒』について) | OKWAVE Stars

OKWAVE Stars Vol.1111は映画『激怒』(2022年8月26日(金)公開)にて主演を務めた川瀬陽太さんへのインタビューをお送りします。

Q 本作は映画評論家の高橋ヨシキさんが初監督を務めましたが、本企画の経緯をお聞かせください。

A川瀬陽太一番重要なのは、この映画が自主制作映画だということです。つまり、誰も待っていないものを、映画を作りたいという一心で始めた作品です。高橋ヨシキさんはもともと映画ライターやデザイン、アートディレクター等をされている方です。僕や高橋監督は80年代から90年代のビデオブームの時代に同じようなところに出入りしていたことが知り合ってから分かりました。当時は海賊版のソフトを置くレンタルビデオ屋が結構あって、たとえばデヴィッド・クローネンバーグの『ヴィデオドローム』(1983)が日本で公開される前に、輸入したビデオに勝手に字幕をスーパーインポーズしたようなものがあって、僕も彼もそれを観ていたとか、サム・ライミが日本で注目される前に輸入ビデオで観ていたり。そういったものから海外の映画を吸収していた共通点がありました。それで飲み友達になってからも、「あの時はこんな映画を観たよね」という映画的追憶が共通していたこともあって、この映画を作る原動力になっていきました。
映画を作ろう、という話になったのは2017年です。題材や台本以外にも資金など考えなければならないことはたくさんあり、それらの準備を経て2020年に撮影に到りました。

Q 主演と同時にプロデューサーも務めています。

A川瀬陽太高橋監督は長編映画製作という面では初めてですので、もちろんスタッフ集めやキャスティングの経験もありません。本来のプロデューサーの役割の方は別にいますが、僕がキャスティングやスタッフィングを担ったので、「川ちゃんもプロデューサーだね」という話になりました。主演でプロデューサーなんていうと、出しゃばりな感じがしてしまいますが、名前を連ねることになりました。

Q 今の時代に非常にスカッとする内容です。題材や台本作りはどのように進められたのでしょう。

A川瀬陽太(映画『激怒』)川瀬陽太高橋監督のパブリックイメージはホラーなどのジャンル映画への造詣ですが、逆に彼への世間的な印象のない、興味をもっていなさそうな題材でやったらどうかと刑事ものを提案しました。そもそも、飲み屋での会話というと、世の中の風潮についての話題になりがちです。「最近は窮屈な世の中だよね」といった世間に対する感覚も近しかったんです。ヨシキが良く言っているのは歌舞伎の隈取りのような、にらむ目のシールがよく貼られていますが「一体誰が誰を見ているのか」と。今の時代の空気は自分で檻の中に入って鍵を閉めることを良しとして、鍵を閉めていない人に文句を言うような、自ら管理される側に流されてしまっているように感じているという話をお互いにしていました。この映画の撮影直後にコロナによる緊急事態宣言が出て外出自粛になりましたが、その時も自粛警察のような人たちが出てきました。致し方ない面もありますが、本当の意味での人と人との断絶が始まってしまったと感じました。この映画で作ったものが現実に起きてしまっているので、まさにスカッとしていただけるというのは、映画のもつ効能として一番良いものだと思います。そういったものを高橋監督が台本にも反映していきました。
台本そのものは初稿からずっと見てきました。映画の構造自体は難しくなく、拳で解決する刑事の話ですので、演技で悩むことはなかったです。それよりも、主人公がその行為に至るまでを、カリカチュアに描いてはいますが、世の中の抑圧や窮屈な空気のような世界観をどう構築していくかに時間をかけました。

Q キャスティングやスタッフィングを務められたとのことですが、お声がけされた方々の反応はいかがだったのでしょう。

A川瀬陽太僕は90年代の自主映画、その後のピンク映画やVシネマの出身で、その当時からの知り合いに声をかけて参加してもらいました。僕がこのような自主制作映画に携わることに違和感を持つ人はいなかったと思います。予算は多くなかったので、参加してもらうことを逡巡することもありましたが、むしろ、話を聞きつけて面白がって参加してくれた人たちが何人もいますので、そんな人たちの力で作られた映画だと思います。

Q 高橋ヨシキ監督の初監督の現場はいかがでしたか。

A川瀬陽太非常にスムーズでした。見聞きしているものが近しいですし、それが口先だけではなく、初監督とはいえ、彼自身が映画の撮り方を学んで、のめり込んで現場に入っていました。スクリーンサイズや撮影方法などが明確で、「このシーンでこれをやるんだ」といった、映画的な喜びのある画面作りをしていました。ですので現場に入ってからは俳優として役に集中できました。

Q 音楽も印象的です。

A川瀬陽太渡邊琢磨君は冨永昌敬監督の映画『ローリング』(2015)で知り合い、その後も交流がありました。こういった小規模な映画では成立しづらい、いわゆるスコアと呼ばれる映画音楽が作れる人です。彼が参加してくれたことがこの映画を豊かなものにしてくれたと思います。
中原昌也君は同世代で飲み友達ですし、90年代から彼の音楽を知っていますので、望んだ形でこの2人のコラボレートができました。中原君のミニマムな音楽、渡邊君のゴージャスなオーケストレーションという特徴も出ていますので、彼らの音楽はこの映画の良さを倍にするくらいの効果をもたらしてくれたと思います。

Q 本作に携わって印象深かったことは。

A川瀬陽太(映画『激怒』)川瀬陽太2020年2月に撮影を終えて、その後にコロナによる自粛が始まったんです。そのため本来は映画の中に出てくるNYでも撮影するはずでしたが、想定外過ぎて難しくなってしまいました。
完成に向けてクラウドファンディングを行った際には、こちらの希望額よりも多くの資金が集まりました。大変ありがたかったですし、お金以上に、人々の期待感が自分たちの想像以上で、飲み屋での話から始まったこの企画への期待感が広がっていると感じられたことが思い出深いです。
本編の撮影がほぼ終わった時に、現場で高橋監督とふたりだけになる機会がありました。本来の僕らは照れ症なので普段ならまずしないのですが、そのふとしたタイミングに握手をしてハグをしたのが思い出深いです。心からありがとうと思えた瞬間で、この映画に取り組んで良かったと感じました。

Q 特にどんな人に観てほしいですか。

A川瀬陽太世の中つまらないなとか世の中が窮屈だと感じている人でしょうか。リモート化が加速している時代の中で、この映画の主人公のような直接打撃のおじさんが出てくる映画はスカッとするのではないかと思います。

Q 本作に携わって、新しい発見などはありましたか。

A川瀬陽太この映画に携わってからは他の人の映画と比べることが今までよりも減りました。この映画を通じて映画を作る苦労をあらためて知りましたので、映画作りにおいて思ったことを表現することへの偏見がなくなりました。キャストがカメラの前に立つ前までにスタッフがどんな準備をしているかも再確認できましたので、ますます映画が好きになりましたし、この仕事は裏切れないという気持ちがさらに強くなりました。

Q 川瀬陽太さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A川瀬陽太端的に言えば、腹立つことにおじさんが殴って回る、そんな映画です。ひょっとしたらモラルに触れているかもしれません。でも、それくらいのことをせめて映画くらいはやって良いのだという、その自由を楽しんでいただけたらと思います。

Q川瀬陽太さんからOKWAVEユーザーに質問!

川瀬陽太僕は20数年、日本映画界におりますが、皆さんが日本映画に望むことは何でしょうか。

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■Information

『激怒』

川瀬陽太(映画『激怒』)2022年8月26日(金)より新宿武蔵野館、テアトル梅田ほか全国順次ロードショー

中年の刑事・深間には、いったん激怒すると見境なく暴力を振るってしまうという悪癖があった。かつてはその暴力を活かして街から暴力団を一掃した功労者と讃えられたこともあったが、度重なる不祥事に加え、大立ち回りで死者まで出してしまった責任を問われ、海外の治療施設へと送られることになる。数年後、治療半ばにして日本に呼び戻された深間は、見知った街の雰囲気が一変してしまったことに気づく。行きつけだった猥雑な店はなくなり、親しくしていた飲み仲間や、面倒をみていた不良たちの姿もない。一方、町内会のメンバーで結成された自警団は「安心・安全」のスローガンを掲げて高圧的な「パトロール」を繰り返している。一体、この街に何が起きているのか? 深間の中に、久しく忘れていた怒りの炎がゆらめき始める……。

出演: 川瀬陽太、小林竜樹、奥野瑛太、彩木あや、水澤紳吾、松㟢翔平、松浦祐也、中原翔子、森羅万象
企画・脚本・監督: 高橋ヨシキ
配給: インターフィルム

https://gekido-rageaholic.com

©︎映画『激怒』製作委員会

■Profile

川瀬陽太

川瀬陽太(映画『激怒』)1969年生まれ、神奈川県出身。
1995年、助監督で参加をしていた福居ショウジン監督の自主映画『RUBBER‘SLOVER』で主演デビュー。その後、瀬々敬久監督作品をはじめとする無数のピンク映画で活躍。現在も自主映画から大作までボーダーレスに活動している。近年の主な映画出演作に『まんが島』『シン・ゴジラ』『バンコクナイツ』(ともに16)、『月夜釜合戦』『PとJK』『blank13』『羊の木』『海辺の生と死』『息衝く』(ともに17)、『体操しようよ』『高崎グラフィティ。』『菊とギロチン』『億男』(ともに18)、『おっさんのケーフェイ』『天然☆生活』『ゴーストマスター』『JKエレジー』『たわわな気持ち』(ともに19)、『子どもたちをよろしく』『横須賀綺譚』『テイクオーバーゾーン』『とんかつDJアゲ太郎』『ファンファーレが鳴り響く』(ともに20)、『農家の嫁は、取り扱い注意!』『由宇子の天秤』(ともに21)、『マニアック・ドライバー』『この日々が凪いだら』『夜を走る』『遠くへ、もっと遠くへ』『ミューズは溺れない』『やまぶき』(ともに22)など。主なTV・配信ドラマに「anone」(18)、「ひとりキャンプで食って寝る」「監察医朝顔」(ともに19)「深夜食堂第五部」「竜の道」(ともに20)「レッドアイズ監視捜査班」「SUPERRICH」(ともに21)、「星新一の不思議な不思議な短編ドラマ」(22)などがある。冨永昌敬監督の『ローリング』、山内大輔監督『犯る男』などでみせた確かな演技により、2015年度第25回日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞を受賞した(染谷将太と同時受賞)。

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