俳優

気鋭の俳優のフィロソフィー。玄理、ボヘミアンな精神 – カルチャー&ライフスタイルトピックス | SPUR

text by Hyunri

今まで訪れた国は20カ国くらいだろうか。
イギリスと韓国に留学し、仕事でLA、NY、アラスカやメキシコ、東南アジアを巡り、ブルガリアとタイで撮影をして、一人旅も沢山した。

5歳で日本の幼稚園に入るまで、両親の都合で東京とソウルを行ったり来たりしてたから、おそらく今まで飛行機には100回以上乗っていると思う。家族以外とほとんど接触がなかった私は、幼稚園の年長さんから編入しても全然日本語がしゃべれなかった。相手が何を言ってるか分かるけど、話す言葉がなかった。家では家族にしか通じないような、日本語でも韓国語でもない言語を喋っていたらしい。大人の顔は全部色で覚えた。

だからだろうか、俳優の仕事をする前から、言葉の通じない国や誰も私を知らない場所に行くのが好きだった。
別にそういうところに行ったからといってはっちゃけたり、悪いことをするわけではない。ただ不自由だった言語の記憶とは裏腹に、私が本当に自由を感じられるのはそういう時だった。

ノルウェーで一人、誰もいない雪道をオーロラを求めて歩き回った夜
インドでリクシャーの乱暴な運転に体を揺すられてる明け方
思ったよりも日当たりの悪いリヨンのホテルの部屋でぼーっと天井を見上げた午後

孤独だったけど、私は確かに何かとつながってたと思う。人じゃない、地球とか大きな何か。

誰の期待も、私を守る鎧も、名前も年齢も国籍も、必死に追いかけてた夢さえどうでもよくなる。魔法の時間。

私が私であるところからの物理的な距離は、冷静さをくれる。親のために頑張ってたなと気づいたこともある。執着でがんじがらめになった関係にこれは愛じゃなかったんだ、と終わりを迎える決心をしたこともある。

一つ秘密を話すなら、空と少しだけ近くなるあの時間、飛行機に乗ると私はよく泣く。
精神状態を心配されそうだが、何も悲しいことのみを思い出すわけじゃない。むしろその土地で与えられた人の温かさを思い返して泣くことのほうが多い。

ついこの間まで、ひとは大人になると強くなるんだと思っていた。いろんなことを経験して、今はつらいことも全然平気になるんだと。でも実際は違っていて、歳を重ねれば重ねるほど涙もろくなった。痛みを知っているから、もう二度と傷つきたくなくて、安全なほうを選びたくなる。明日楽しいことがありますように、明日もより平和でありますように、と祈ることが多くなる。

すごく良いことがあると、いつか悪いことが来るって心のどこかで思ってる。

でもその逆もあって、今は、悪いことがあれば良いことが必ず来ることも分かってるのだ。それは大人になったから。
雨の日に飛行機に乗っても、雲の上に出れば必ず雨はやんでいる。雲を抜けるあの瞬間が好きだ。

何かを得れば得るほど、少しずつ臆病になっていく自分を抱えて、私は一生旅していたい。風のように。

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