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アンセル・エルゴートが日本語で語る!『TOKYO VICE』 ハリウッド俳優が見た日本文化とジャーナリズム|ニフティニュース

アンセル・エルゴート 『TOKYO VICE』

■アンセル・エルゴート in 東京

日米のテレビドラマ史が変わる。『ヒート』(1995年)のマイケル・マン監督が手がける、WOWOW&HBO Maxによる日米共同制作ドラマ『TOKYO VICE』が、いよいよ2022年4月24日から放送開始となるのだ。1990年代、東京の裏社会をリアルに活写する本作は、全編の撮影を東京ほか日本国内で敢行。出演者には渡辺謙菊地凛子伊藤英明笠松将山下智久ら豪華キャストが参加した。

物語の主人公、新聞記者であるジェイクを演じたのは、『ベイビー・ドライバー』(2017年)、『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021年)のアンセル・エルゴート。来日記者会見では流暢な日本語が話題を呼んだが、記者によるインタビューでも、こちらの質問になるべく日本語で答えてくれた。コロナ禍の日本での撮影や、入念な役づくりについて語る言葉は、日本語と英語をシームレスに行き来しながら、丁寧な人柄を感じさせるもの。今回は本人が口にした日本語をなるべく残しながら、アンセルの現在地をお届けしたい。

 ※記事内の青文字部分が日本語でお答えいただいた箇所

■「『TOKYO VICE』の現場=90年代の東京はとてもリアルでした」

―そもそも『TOKYO VICE』という作品のどこに興味を持たれたのでしょうか?まずは“東京”。とても興味を持ちました。初めて来たとき、視覚的にすごく特別な場所だと思ったんです。ここで作品を撮ることができたら、素晴らしいルックになるだろうなって。また、時代が面白いと思いました。90年代は携帯電話が普及していないし、今ほどネオンが眩しくなく、もっと危険。それに本を読んだらすごく面白かったんです。日本の文化が大好きだから、日本に来ました。

―ドラマを1シーズンすべて日本で撮影したことは、どんな経験になりましたか?とても良い経験でした。実際に日本に住んで撮影ができたことは、私の人生で最も貴重な経験となりました。そして今日みなさんに会えて、とても幸せです。役のため、一生懸命に日本語を勉強しました。合気道もしましたし、新聞記者の勉強もしました。とても良い経験、素晴らしいお仕事ができたと思います。

「アンセルは演技の幅を証明した」 新鋭ビル・オリヴァー監督が語る、多重人格スリラー『ジョナサン−ふたつの顔の男−』―90年代の日本が舞台ということで、時代や国、文化などご自身とのギャップが大きい作品だったと思います。どんなアプローチで演技に臨みましたか?(舞台は)90年代で、携帯がありません。だから広い世界とは繋がれないけれど、自分の周囲とは深く繋がっているような感覚がある。それが最初に考えた大きな違いです。また、「TOKYO VICE」の現場はとてもリアルでした。明調新聞の現場(セット)は本当に実在するかのようで、ここは90年代なのだと自然に感じられたんです。ヘアメイクのカナコさんが90年代の髪型を見せてくださったり、衣裳デザイナーの方が90年代の衣裳を見せてくださったりと、スタッフの皆さんにも手伝ってもらいました。また、90年代のヤクザは(現在より)ずっと強かったと聞きました。当時、彼らはどこにでもいて、非常に支配的で、ときには暴力的で、今よりもずっと怖かったというので、その違いを考える必要があったんです。そしてもうひとつ大きな違いは、当時は外国人が今より少なかったこと。

でも撮影はコロナの時(コロナ禍)だったので、たぶん外国人がずっと少なくなりました。だから東京にいると、まるで別世界にいるようで、少し寂しく感じることもあったんです。けれど、それもジェイクのように自分自身を作り直していく良い機会になりました。

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■「シェイクシャックすら、アメリカより日本のほうがずっと良い(笑)」

―日本語がとてもお上手ですが、短期間でそれだけ上手くなるコツは?ありがとうございます。でも、まだまだです。毎日、最高の先生と……最高「の」? 最高「な」? うん、今でも勉強しています。毎日4時間勉強していました。覚えた台詞を実際に使うことも良い勉強になりましたね。最初のシーンに「煙草を吸っても良いですか?」という台詞があったので、実際にバーで言ってみるとか、ほかにも「手伝って!」「手を貸そうか」とか。覚えた台詞が変更になり、覚え直さなければいけないこともありましたが、つねに新しい言葉を勉強できて良かったです。台本の英語の台詞もすべて日本語で覚えました。特に(渡辺)謙さんとのシーンは、リアルなジェイクを演じるため、できるだけ日本語を使いたいと思いました。

―これまで様々な都市で撮影に参加されてきたと思いますが、東京の街から演技のインスピレーションを受けたことはあったのでしょうか。日本の文化からは大きな刺激を受けています。養神館(の道場)で合気道ができたのはとても良い経験でした。それから、日本人は細かいことに気を配りますし、どんな仕事も一生懸命にします。面白いのは、シェイクシャックすらアメリカより日本のほうがずっと良いこと。10倍くらい美味しいので、もうアメリカのシェイクシャックには行けません(笑)。私は皇居も大好きで、すべてが完璧に手入れされていますよね。アメリカにも公園はありますが、これほど行き届いてはいません。これは日本だけのものだと思います。そういうところから刺激を受けたことで、「なるほど、だからジェイクは日本に来て、新しい言葉を学び、真実を暴こうとするんだな」と思えました。記者は危険な仕事ですが、彼は周りの人々から刺激を受けているんです。(日本では)誰もが懸命に仕事をして、シェイクシャックの方々もすごく真剣に働いている。100%、一生懸命、細かいことに気を配っています。ジェイクも気を配り、よく頑張っています。

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■「役柄にどっぷりと没入し、本当にリアルな撮影に参加することができた」

―新聞記者の役柄を演じるために、具体的にどんな役づくりをされましたか?マイケル・マンから最初に求められたのは、調査報道のジャーナリズムを学ぶことでした。まだ日本語の練習を始めるよりも前、ロサンゼルスでジャーナリズムの授業を受けたんです。ロサンゼルス・タイムズの元記者で、今は私立探偵の方から1週間学びました。警察の捜査報告書をもらい、「記者の仕事はこれを脚色し、引用し、事実確認をして、実際に何が起きたかを取材することだ」と。本当に良い勉強になりました。ジェイクは記事を書くと、莫(豊原功補)から「警察から言われたことを一字一句そのまま書け」と言われます。ジェイクは「こんなことをしに来たんじゃない、自分は人々のために真実を書き、正義がなされたことを確かめるんだ」と考えますが、警察も不正をしているかもしれず、渡辺謙さんの演じる片桐も真実を言っているかどうかわからない。そのミステリーが面白いところです。

日本でも記者の方々とご一緒する機会があり、とあるCEOの自宅に早朝から行ったことがありました。会社が訴えられていたので、小さなことでも聞き出せないかと。結局、その方は自宅にいらっしゃらなかったんですが、寒い早朝に(相手を)待ちながら「これが記者の仕事なんだ」と思いました。また、実際の記者さんと、彼が殺人事件を調査されている時、一緒に裁判所へ判決を聞きに行きました。彼に着いていくと、「ここまでしか入れないから待とう。判決が出たら、出てきた人が判決を教えてくれるから」と言うんです。テレビの中継クルーがいたので、「隣にいよう。彼らは(判決を)教えてもらえる」と。それで待っていたら、懲役4年の判決が出ました。テレビのレポーターが聞いたことを、彼は自分に言われたことのように書き留めて記事にしたんです。その時も「ジャーナリストであるとは、こういうことなんだ」と感じました。

ロサンゼルスでは捜査報告書をもらい、実際に街で聞き込みをしたこともありました。話をしてくれる人もいれば、話してくれない人もいます。先生がカメラマンのふりをしながら一緒にいてくれたので、「話してもらえませんでした」と言うと、「この言葉を5時までにもらえないとクビになるんです、とお願いしなさい」と言われました。適当な言い訳をして聞き込みをするのは後ろめたかったのですが、それもジャーナリストなんだとわかったんです。自分は時間に追われながら、話したがらない人を操作し、いろいろ手を尽くすのが仕事なんだと。第1話の撮影中、マイケル・マンには「何をしたかを思い出し、そのままやりなさい」と言われました。役柄にどっぷりと没入し、本当にリアルな撮影に参加することができたと思います。マイケル・マンとのお仕事は最高でした。

取材・文:稲垣貴俊撮影:白井晴幸ヘアメイク:Kanako Nishimura (WEST FURIE)ハリウッド共同制作オリジナルドラマ「TOKYO VICE」4月24日 WOWOWにて独占放送スタートWOWOWオンデマンドにて第1話配信中

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