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NYブロードウェーに日本人女性が24日デビュー コロナ禍も不遇も乗り越えて 初舞台は名作「ファニー・ガール」:東京新聞 TOKYO Web

米ニューヨークで3月25日、「ファニー・ガール」が上演される劇場前でデビューの喜びを語る岩井麻純さん

 全米一の劇場街ニューヨークのブロードウェーに、新型コロナウイルス禍を乗り越え1人の日本人女性が今月デビューする。観客の前に立てない日々にも練習を重ね、コネもなくつかみ取った舞台。俳優やスタッフの多様化が進むブロードウェーで「日本人やアジア系の代表として演じたい」と夢を膨らませている。(ニューヨーク・杉藤貴浩)

 デビューするのは、7年前に渡米しブロードウェーを目指してきた岩井麻純さん(29)。24日に約60年ぶりにブロードウェーで復活する名作「ファニー・ガール」で主人公の同僚ダンサー役など多くの場面で歌や踊りを披露する。出演者としては唯一の日本人でアジア系だ。

3月31日、米ニューヨークの劇場街ブロードウェー。コロナ禍での本格再開から半年が過ぎ、客足も戻ってきている

3月31日、米ニューヨークの劇場街ブロードウェー。コロナ禍での本格再開から半年が過ぎ、客足も戻ってきている

 現在は観客の前で演じながら作品全体の調整を重ねるプレビュー中。岩井さんは「役者やスタッフ全員で作品を仕上げるブロードウェーの質の高さを感じている」と笑顔を見せる。

 コロナ禍で途切れかけた夢だった。名古屋市で育った子どものころからミュージカルに没頭し、大阪芸術大からニューヨークのダンス学校へ。4年前には人気公演「王様と私」の全米ツアーにダンサーとして参加するなど着実に経験を積んできたが「コロナで突然やることがなくなった」。

 どの劇場も幕を下ろし、失業給付を頼りに生活を切り詰める日々。それでも帰国せず、オンライン講習で踊りの技術を磨き、演じる体力が落ちないよう走り込みを続けた。

岩井さんがオーディションに送ったビデオの一場面。多くの応募者はスタジオで撮影するが、時間と費用の節約のため近所のジムで一人で撮ったという=本人提供

岩井さんがオーディションに送ったビデオの一場面。多くの応募者はスタジオで撮影するが、時間と費用の節約のため近所のジムで一人で撮ったという=本人提供

 ブロードウェーの再開に向け、ファニー・ガールのオーディションが行われると知ったのは昨年の夏。コロナ対策として応募者が自身の踊りなどを収めたビデオを送付する一次審査を突破すると、二次も持ち前の歌唱力でパスし、一気にデビューを決めた。

 本来は所属事務所や人脈がものをいう世界。フリーの岩井さんは朝一番に会場に着いても演じる機会が回ってこないといった不遇も経験してきたが「コロナでビデオ審査になったことで公平にチャンスが訪れたのかもしれない」。合格を知らせる電話を受けると、道端で涙を流した。

デビューについて話す岩井さん=いずれも杉藤貴浩撮影

デビューについて話す岩井さん=いずれも杉藤貴浩撮影

 俳優団体の調査によると、ニューヨークで舞台に立つ俳優のうちアジア系は6%程度。岩井さんも「ブロードウェーの一線で演じる日本人は数人しかいないと思う」と話す。

 ただ、再開したブロードウェーでは人気公演「アラジン」のヒロインを初の南アジア系女性が演じるなど徐々に人材の多様化が進んでいる。コロナ禍の米国ではアジア系への憎悪犯罪が多発しただけに「米国の多様性の明るい部分を見せ、私も成長していけたら」と岩井さん。ファニー・ガールも、無名の女優がブロードウェーのスターに駆け上がる物語だ。



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