俳優

戦争体験伝える 89歳 主演舞台 俳優・前田昌明さん:東京新聞 TOKYO Web

公演を前に、自らの戦争体験などで構成した舞台を語る前田昌明さん=東京都世田谷区で

公演を前に、自らの戦争体験などで構成した舞台を語る前田昌明さん=東京都世田谷区で

 八十九歳の現役俳優前田昌明さんが、自らの戦争体験などを舞台化した演劇で主演を務める。一九六九年に始まったTBS系ドラマ「ケンちゃん」シリーズのお父さん役などで知られる前田さん。舞台では、先の戦争で米軍機から受けた機銃掃射や、木剣を敵に突き刺す軍事教練などの体験が描かれる。「人間は繰り返し戦争を続けている。その哀(かな)しさを伝えたい」と語る。 (五十住和樹)

 甲府市生まれの前田さんは俳優座養成所の出身。宮脇康之さん主演の「ケンちゃん」シリーズや「事件記者」などのテレビドラマに出たほか、映画「雨のしのび逢(あ)い」など多くの洋画の日本語吹き替えで声優を務めた。今も俳優の仕事や舞台の演出などを継続。米寿を迎え若手俳優らに囲まれた席で、「子どものころの戦争体験をオリジナルの舞台にしたい」と話したことで、今回の「正直私は立派な軍国少年でした〜青い空とM少年〜」の上演が決まった。

 台本は劇作家大西弘記さん(43)が前田さんに取材して作った。八十九歳の男性が、知人が入っている高齢者施設で偶然知り合った女性入居者の孫たちが企画した、戦時中の生活を描いた演劇の主役に志願するという物語だ。劇中劇の場面などに、神奈川県藤沢市の国民学校や旧制中学の生徒時代に前田さんが体験した戦時のエピソードが、ちりばめられている。

 「何度も空襲を受け、食べられるものは何でも食べた空腹の子ども時代。旧制中学の時は塹壕(ざんごう)掘りや、馬術部の馬にかやを食べさせて学校に戻る途中に米軍機の機銃掃射を浴びた」と振り返る。「どう考えても肯定できない当時の空気が(安保法制などで)戻りつつある今なのに、多くの人は関心がない」と前田さん。戦争をテーマにした舞台を何本も演出してきたが、今回は主演として戦争と庶民の生活の実像を伝える芝居をするため、「せりふの背後にある思いをどう表現するか」と思いをめぐらす。

本番に向けてけいこをする前田さん(手前)と共演する俳優座の岩崎加根子さん=東京都内で

 前田さんと同年齢で俳優座の先輩である岩崎加根子さんが、「軍国の母」をテーマにした紙芝居を作った高齢者施設の入居者役で登場。障害者たちの劇団「横浜桜座」の俳優が冒頭、「平和の空」と題した自作の詩を朗読する。

 今回の舞台をプロデュースした横浜桜座の飯田浩志さん(44)は「戦争の生々しさや空気を、世代を超えて演劇で伝える。戦争体験を舞台で引き受けた演劇人の責任です」と話している。

 公演は十一月四〜六日、東京都調布市仙川町の「せんがわ劇場」で。一般四千円、障害者と二十歳以下は二千円。問い合わせは飯田さん=電080(6523)6536。

もっと見せる

関連記事

Close
Close