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齊藤工 日本映画は変わる時期、『ゾッキ』はその象徴|NIKKEI STYLE

エンタテインメントの“表”に立つ俳優や芸人などのタレントたちが、映画監督、脚本家、プロデューサーなど“裏方”のクリエーターとして才能を発揮するケースが目立っている。公開中の映画『ゾッキ』も、大橋裕之原作のマンガを、竹中直人・山田孝之・齊藤工という俳優3人が共同監督で映画化した作品だ。

齊藤工の映画監督としてのデビューは、2012年のショートフィルム『サクライロ』。以降、初の長編監督作『blank13』(18年)は国内外の映画祭で8冠を獲得、『フードロア:Life in a Box』では、20年末にAACA(アジアン・アカデミー・クリエイティブ・アワード)で日本人初の最優秀監督賞を獲得するなど、その才能は高く評価されてきた。今回の『ゾッキ』は、彼のキャリアの中でどんな位置付けの作品と捉えているのだろうか。

1981年生まれ、東京都出身。HBOアジアのドラマ『Food Lore:Life in a box』では国際賞「Asian Academy Creative Awards 2020」で最優秀監督賞を受賞。主演作『シン・ウルトラマン』等が今年公開予定。移動映画館「cinema bird」主宰。ミニシアターを俳優主導で支援するプラットフォーム「Mini Theater Park」発起人(写真:中村嘉昭)

「僕は竹中(直人)さんの初監督作『無能の人』に感銘を受けて、20代の最後に監督業に思い切ってトライしました。前例のないところにぐんぐん進む“山田孝之の轍”にもすごく刺激を受けた。俳優の枠に収まらないお2人の影響は僕の活動にとっても大きいものです。

ただ一方で、僕がものを作るときに意識しているのは、分かりやすくいうと“外国の目線”みたいなもの。『ゾッキ』は、『俳優、竹中直人の監督作』とか『山田孝之初監督』とか『3人の共同監督』なんて認識をされると思いますが、実は、作品にとっては局所的なインフォメーションでしかない。僕は『いいか悪いか』というシンプルで大きなジャッジに作品を導いていくことを最大の目標にしていて、それは『ゾッキ』も同じ。

作品を実際に見てみると、全体は1本の映画としてまとまりながら、各監督のバイオリズムが全然違うし、編集のリズムや作品のオーラも三者三様で、オムニバスではないのにちゃんとオムニバスになっている。そこがこの作品の魅力ではないかと思います」

そしてこの、複数の監督がそれぞれの持ち味を出したエピソードの寄せ集め的な構成が、これからの映画のある種ベンチマークのようなものになるのではないかと考察する。

「今、正直、映画館での2時間って、我慢できないんですよ。お金を払って、面白いかどうか分からない映画を見る(笑)。今回の『ゾッキ』もそれぞれの監督の担当パートだけだと短編です。映画への個人的な思いとは別に、TikTokやYouTubeが現代の速度なのかなと。要点のみをキュッと見せる映像をユーザーが選ぶ時代、映画のあり方は分岐点に来ていると思います。

一説によると、僕らが今、1日で得ている情報って、江戸時代の人たちの一生分の情報量に当たるらしいんです。人間っていうハードウェアはほとんど変化していないにもかかわらず。バグだって発生しますよね。そんな中で、映画館で過ごす時間は、情報を遮断して、感覚を研ぎ澄ませて作品と向き合う、より特別な体験になると思いますし、そうなってほしいと願っています」

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