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『ゴッドファーザー』について、あなたが知らないかもしれない10のこと | Business Insider Japan
『ゴッドファーザー』より。
Mondadori Portfolio / Getty
- フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』は1972年3月(日本では1972年7月)に公開された映画だ。
- スタジオの幹部は、アル・パチーノやマーロン・ブランドに主な登場人物を演じさせたくなかった。
- 照明を少なくしたり、俳優のミスをそのまま使ったりしたのは、コッポラの監督としての選択だ。
アル・パチーノはマイケル・コルレオーネ役の第1候補ではなかった。撮影中、危うく解雇されるところだったと、パチーノは明かしている。
アル・パチーノ。
Paramount Pictures
ワシントン・ポストによると、幹部はロバート・レッドフォードのような有名俳優にこの役を演じて欲しいと考えていたという。しかし、コッポラはブロードウェイでパチーノを見て、”マイケル・コルレオーネ”を見つけたと確信した。スタジオは渋々これを認めた。
ただ、その後もスムーズには行かなかった。スタジオの幹部らはパチーノの演技に満足せず、「おもしろくない」と言ったと、パチーノはワシントン・ポストに語った。撮影中、彼らはパチーノを3度解雇しようとしたという。
スタジオはマーロン・ブランドにもヴィトー(ドン)・コルレオーネを演じさせたくないと考えていたが、彼らはその後、口にティッシュペーパーを詰めたブランドの伝説的なスクリーンテストを目の当たりにする。
マーロン・ブランド。
Paramount Pictures
The Hollywood Reporterによると、スタジオはブランドが撮影現場で問題になる、「有害」だと考えていたという。しかし、コッポラがブランドを強く推し、自宅を訪れてオーディションテープ作りを手伝った。
コッポラはインタビューで、ブランドがヴィトー(ドン)・コルレオーネになるために、口にティッシュペーパーを詰め、靴を磨くためのクリームを髪に塗りつけたのを覚えていると話した。スタジオがこのテープを見ると、ブランドをキャスティングすることが決まった。
ブランドはこの役でアカデミー主演男優賞を獲得した。
ブランドは台詞を全く覚えておらず、カンペ頼みだった。
『ゴッドファーザー』より。
Silver Screen Collection / Getty
ブランドが自分の台詞を覚えず、カンペを使っていることは業界ではよく知られたことだった。それは『ゴッドファーザー』でも同じだ。そうすることで台詞の1つ1つについて考え込むことなく、より自然に演じられるのだとブランドは語っていると、TIMEは報じた。当時、現場ではカンペを照明器具や他の俳優に貼って、カメラから隠していた。
ブランドが抱いているネコは野良猫で、映画に登場するはずではなかった。ネコが喉をゴロゴロ鳴らしていたせいで、危うくシーンが台無しになるところだった。
『ゴッドファーザー』より。
Paramount Pictures
TIMEによると、「マーロンに抱かれているネコは予定にはなかった」とコッポラは話している。
「ネコがスタジオの周りを走っているのを見て、それを捕まえて、何も言わず彼の手に置いたんだ」
コッポラとチームがこのシーンを聞き直すと、ネコがあまりにも大きな音で喉をゴロゴロ鳴らしていたため、ブランドの台詞がほとんど聞こえなかったという。
撮影中、俳優たちは悪ふざけを楽しんでいた。
『ゴッドファーザー』より。
Paramount Pictures
マーロン・ブランド、ロバート・デュバル、ジェームズ・カーンは撮影現場でパンツを引っ張り下ろし、互いに尻を見せ合うのが好きだった —— ブランドは約500人のエキストラの前で尻を見せたこともある。
Business Insiderでも報じたように、デュバルは「結婚式のシーンの最中、ぼくたちは皆、尻を見せ合っていたんだ」と2017年のトライベッカ映画祭で語った。
「中には、ぼくを見て『デュバルさん、あなたは大丈夫よ』と言った女性もいた」
コニーを演じたタリア・シャイアはコッポラの妹で、演技の経験はほとんどなかった。カメラを倒したこともある。
アル・パチーノとタリア・シャイア。
John Springer Collection / Getty
コッポラは妹のシャイアにコニーを演じさせたくなかった。コッポラはコニーをもっと「素朴な」キャラクターと考えていたからだ。「これはコッポラが自身の妹を説明するのに一度も使ったことのない形容詞だ」とVanity Fairは書いている。
加えて、シャイアには演技の経験がほとんどなかった。
「最初のシーンのうちの1つで、わたしはカメラに向かって歩いて行って、倒してしまったこともありました」とシャイアは2017年のトライベッカ映画祭でのリユニオンで語った。
「『大丈夫だよ』と言ってくれたのはマーロン・ブランドでした」
シャイアはこの役でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、結果的に全てうまくいった。
「銃は置いて行け、カンノーリは持って行け」は『ゴッドファーザー』の中で最も有名な台詞の1つだが、あれは即興だった。
『ゴッドファーザー』より。
Paramount Pictures
Insiderでも報じたように、もともとの脚本では、クレメンザを演じたリチャード・S・カステラーノはポーリーを殺害したあと、「銃は置いて行け」とだけ言うはずだった。だが、カステラーノの妻で女優のアーデル・シェリダンが彼に「カンノーリは持って行け」 を付け加えるようアドバイスした。前のシーンで、クレメンザはカンノーリを持って帰ってくるよう言われていたからだ。
カステラーノがこの台詞を追加すると、コッポラはそのまま残すことにした。そして『ゴッドファーザー』の中で最も有名な台詞の1つになった。
コッポラは俳優のミスをそのまま残すことが多い。その方が本物らしく感じられるからだ。
『ゴッドファーザー』より。
CBS Photo Archive / Getty
コッポラは撮影中に脚本を変えたり、台詞を追加することで知られている。俳優がミスをしたシーンをそのまま使うこともある。
例えば、ルカ・ブラージを演じたレニー・モンタナは、ブランドとのシーンであまりにも緊張して台詞がめちゃくちゃになってしまった。コッポラはその緊張ぶりが気に入り、そのまま映画に残した。
結婚式のシーンを撮影した後、パチーノとダイアン・キートンは一緒に酒を飲んで酔っぱらった。映画が大失敗するのが怖かったからだ。
ダイアン・キートンとアル・パチーノ。
United Archives / Getty
トライベッカ映画祭でのリユニオンで、パチーノは自分とキートン(パチーノの恋人役を演じた)が「結婚式のシーンの後、ものすごく酔っぱらった」ことを認めた。お互いにもともと舞台俳優だったことがきっかけで意気投合したのだが、パチーノはこの映画が失敗するのではないかと心配していることも話したという。
「ぼくたちは飲み始めて、『これからどうする? ぼくたちは終わった。これは史上最悪の映画だ』と話していた」とパチーノは語った。
スタジオの幹部らは映画の照明が暗過ぎると感じていた。だが、この芸術的選択がうまくいくのだと説得された。
『ゴッドファーザー』より。
Paramount Pictures
『ゴッドファーザー』は文字通り”暗い”ことで有名だ。これは撮影監督のゴードン・ウィリスのおかげだ。ウィリスは「プリンス・オブ・ダークネス(暗闇の王子)」として知られるようになった。ウィリスは意図的にそれぞれのシーンを薄暗くして、脚本に登場する陰のある、暗い出来事を描写した。
パラマウントの幹部らは、ウィリスはやり過ぎで、この映画は照明が足りないと感じた。コッポラとウィリスは彼らを説得しなければならなかった。
[原文:10 surprising things you didn’t know about the making of ‘The Godfather’]
(翻訳、編集:山口佳美)