俳優

演劇で人と人を結びたい 日韓合作の「沈黙劇」 東欧で上演へ:東京新聞 TOKYO Web

日韓の俳優が福岡やポーランドで上演する「水の駅」の一場面=2019年4月、韓国・釜山小劇場で(金世一さん提供)

日韓の俳優が福岡やポーランドで上演する「水の駅」の一場面=2019年4月、韓国・釜山小劇場で(金世一さん提供)

 日本と韓国の俳優、スタッフが今秋、東ヨーロッパにおける芸術の中心地、ポーランドでの公演を目指し、準備を進めている。東洋演劇の美を伝えるだけでなく、日韓友好の一助になればとの願いも込められている。 (五味洋治)

 企画したのは東京都豊島区在住の金世一(キムセイル)さん(45)。韓国南部・釜山(プサン)出身の俳優、演出家だ。

 韓国の大学で演劇と哲学を学び、十八年前に日本の文化庁の招きで来日した。

 日本の大学で、室町時代に能楽を完成させた世阿弥の研究をする一方、東京で劇団を設立し、毎年韓国で日本演劇を紹介。日本の俳優への演技指導も行うなど、日韓交流に努めてきた。

 ここ数年、日韓関係は元徴用工や元慰安婦に関わる判決の影響で、悪化の一途をたどっている。

 心を痛めた金さんは、「お互いを理解するには俳優が直接会って、お互いを知ること。そして、俳優と観客が出会うことが一番」と、両国の俳優が共同で演劇を行うことを思いついた。

 金さんの劇団の俳優と、公募に応じた韓国人三人、日本人十九人の計二十二人が集まった。照明などのスタッフも日韓混成だ。

 作品は、欧州で高い評価を受けている太田省吾さんの「水の駅」を選んだ。

 生活廃棄物の前に置かれた水道の蛇口の前で繰り広げられる人々の不安や痛み、孤独と死をセリフなしで演じる「沈黙劇」だ。

 今年九月には、まず日韓交流の拠点となっている福岡の「県立ももち文化センター」で上演する。

金世一さん

金世一さん

 以前、金さんの劇団が上演した「水の駅」を見たポーランド・ヴロツワフ市の研究所とグダニスク市の演劇祭から招待状が届いている。九月から十月にかけ、この二都市を訪れ、上演する予定になっている。

 ただ、新型コロナウイルスの感染拡大で、集まっての練習も思うにまかせない。上演に必要な資金も大幅に不足している。

 このため金さんは、福岡の地元企業に協力を申し入れ、一般から資金を募るクラウドファンディングの活用も考えている。

 金さんは、「人と人をつなぐのは法律や条約だけではない。演劇で、人と人を根もとから結んでみたい」と期待をかけている。

タグ
もっと見せる

関連記事

Close
Close