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BL(ボーイズラブ)ドラマがタイで大ブーム 「やおい」が源流、日本にじわり逆輸入:東京新聞 TOKYO Web

 タイで若者に人気のドラマが、日本でもファンを増やしている。「BL」(ボーイズラブ)と呼ばれる男性同士の恋愛もの。若手俳優の容姿やせりふの美しさに加え、同性愛が身近に描かれ、「恋愛に性別は関係ない」という世界観が魅力という。新型コロナウイルス禍で疲弊する観光業界も渡航正常化を見据え、「ドラマの聖地巡り」を新たな起爆剤にしたいと期待する。(バンコク・岩崎健太朗、写真も)

「Until We Meet Again」の一場面 ©Studio Wabi Sabi. All rights reserved.

 「役柄やストーリーに親近感を持て、共感できる展開がいい」。昨秋、バンコクで開催された人気ドラマのイベントに訪れていた高校生のナッニチャーさん(17)がBLにはまったのは5年ほど前から。「初めは俳優目当てだったけど、今は原作を読み、登場人物の気持ちの奥に触れるのが楽しい」

BLドラマのイベント会場で、お気に入りの俳優のパネルと記念写真に収まるファンたち=バンコクで

BLドラマのイベント会場で、お気に入りの俳優のパネルと記念写真に収まるファンたち=バンコクで

 1000人近い来場者のほとんどは若い女性だが、男性もちらほら。会社員のポーさん(37)は「男女の恋愛とはまた違う、恥ずかしそうな微妙な演技に役者同士の相性が表れるのが面白い」と語った。

◆今年50近い新作予定

 同性愛に寛容とされるタイだが、BLが表舞台に出てきたのは最近だ。放送関係者によると、10年ほど前から若い視聴者の獲得のために着目された。多チャンネル化やネット放送の普及もあり、既存のドラマと差別化を図る新たなコンテンツとして拡大。ここ1、2年で大ブームとなり、今年も50近い新作が予定される。その源流は「Y」(ワイ、やおい)と呼ばれる日本の漫画や小説のジャンルにあるという。

「Until We Meet Again」の一場面 ©Studio Wabi Sabi. All rights reserved.

「Until We Meet Again」の一場面 ©Studio Wabi Sabi. All rights reserved.

 「Y」に厳密な定義はないが、主に男性同士の恋愛を描いた女性向けの作品とされる。タイでは1990年代後半からサブカルチャー的に一部で支持され、オリジナル小説も発表されてきた。

◆日本の漫画、アニメから着想

 大ヒットした「Until We Meet Again」の原作者Lazy Sheepさん(41)も影響を受けた一人。「子どものころから日本の漫画やアニメは身近で、Y作品も人目を忍んでよく読んだ」。原作のタイトル「赤い糸」は「日本の漫画から着想を得た」という。

 タイのBLドラマは日本でも会員制交流サイト(SNS)で話題となり、ネット配信などを通じてファンが急増中だ。テレビ情報誌を発行する「東京ニュース通信社」が昨秋、国内初のタイドラマ専門ガイド「D」を出版すると、予想を超える反響を呼んだ。

ドラマの影響もあり、ブックフェアでもBL小説が人気。日本語版、コミック化も相次ぐ

ドラマの影響もあり、ブックフェアでもBL小説が人気。日本語版、コミック化も相次ぐ

 企画した田中美里さん(39)は「抱いていたイメージとは180度違う洗練された俳優陣やストーリーに驚いた。懐かしさがありつつ斬新でテンポがいい」。海外の映像作品を扱う「アクロス」でタイドラマを担当する松メイさん(30)は「温かさ」が共通点だと指摘。「葛藤を抱える主人公を周囲が見守り、応援する。仲間や家族の大切さを考えさせられる」と分析する。

◆「コロナ終息したら聖地巡礼に来て」観光業界が期待

 日本でのファン拡大を見逃さなかったのが観光関係者だ。タイ政府観光庁日本事務所はホームページに作品に登場する大学やレストラン、カフェなどを地図とともに紹介するコーナーを開設(公式ツイッター「タイBLに恋したい!」はこちら)。聖地巡りのガイドブックも企画中で、「渡航が可能になったときに、ロケ地巡りが新たな観光になれば」(担当者)と、コロナ禍明けの観光資源として期待を寄せる。

ファンイベントに出演する若手俳優ら=バンコクで

ファンイベントに出演する若手俳優ら=バンコクで

 当初は学園ものが主流だったBLだが、題材は社会問題やミステリーなど多岐に広がる。自殺や家庭内暴力など重いテーマを織り込むLazy Sheepさんは「多様性が浸透して見えるタイでも、社会の壁や閉鎖性は多く残る。私はBLを軸に据えることで、より深い苦悩や喜びを描きやすくなる。きっかけは俳優でもストーリーでもいい。タイの今の文化や社会を身近に感じてほしい」と話す。

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