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豊原功補が語る、新しいことへの挑戦と大きな可能性 | マイナビニュース

豊原功補が語る、新しいことへの挑戦と大きな可能性

音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。映画製作会社「新世界合同会社」を設立した俳優・豊原功補が、初めて映画をプロデュースする。俳優業だけではなく、作品により深く関わる「送り手」という立場から見えてきた新しい可能性、そしてものづくりに対する考えとは?

Coffee & Cigarettes 20 | 豊原功補

※本記事は、Rolling Stone Japan vol.10(2020年3月25日発売号)に掲載された記事です。

新しいことへの挑戦には、大きな可能性と共に常にリスクがつきまとう。ましてやキャリアや歳を重ねてからの挑戦となれば、思わず二の足を踏んでしまうことの方がきっと多いはずだ。しかし、今年55歳を迎える俳優・豊原功補の辞書には、おそらく「現状維持」などという言葉は存在しないのだろう。一昨年の秋、映画監督の外山文治や小泉今日子らを含む数人と、新たに映画製作会社「新世界合同会社」を設立した彼は、これが長編2作目となる外山文治の監督作『ソワレ』のプロデュースに挑んでいるという。

「外山監督の短編映画『此の岸のこと』(2010年)をたまたま観る機会があって、その時にものすごく感銘を受けたんです。そうしたら彼が、和歌山出身のプロデューサー前田和紀さんと新たな映画の企画を練っていると、知り合いのツテで紹介されて『一緒にやりませんか?』と本人から相談を受けた。自分としても映画に対する思いは十年二十年と持ち続けていた中で、何か出来ないかと頭をよぎっていた頃でした。つまり『新世界』は、この映画を製作することがきっかけで現実に立ち上がった会社なんです。ただ当初は、とりあえず少しずつ、ゆっくり進んでいければいいのかなと思ったのですが、いざやってみるともう闇雲に走りきる以外ないという多忙感満載でした」

そう苦笑する豊原。これまでも彼は、演出・脚本という形でいくつかの演劇作品を手がけ、作り手という立場としての取り組みは行ってきている。が、まさかプロデュースという形で映画と向き合うことになるとは思ってもみなかったという。

「不思議というか……人生なんて、自分の思い描いた通りには進んでいかないし、何がどこでどう変わっていくかはもう『出会い』と『タイミング』でしかない。自分の力ではどうしようもない、何か人知の及ばぬような力が働いていると思わされることばかりです」

プロデュースとは具体的に、どのような仕事をしていたのだろうか。

「とにかく、ありとあらゆる全て(笑)。潤沢な資金というわけではなかったですし、製作スタッフもとにかくミニマム。それこそ準備の段階から、脚本打ち、方向決め、書類のプリントや役者さんとスタッフさんのスケジュールまで、ほぼ自分たちでやりました。いざ現場に入ると、撮影を見守るのはもちろん、熱中症対策の飲料買い出し、俳優部の宿泊場所と現場のピストン。遅れて撮影に入ってくる役者さんを駅まで迎えにも行きました。これはプロデューサーとアソシエイトPとすれば特に不思議なことでもないのですが、僕や小泉さんが運転席から降りて『おはようございます。よろしくお願いします!』なんて挨拶するものだから、中にはびっくりしていた方もいらっしゃいました(笑)」

これまで表舞台で脚光を浴び続けていた2人。そのような仕事は自らのプライドを傷つけることにならなかったのだろうか。新しいことへ飛び込むのにも相当な勇気が必要なはずだ。

「楽しいです。『やるしかない』となったら、あまり余計なこと考えていられない。1本ネジが飛んじゃってるぐらいじゃないと(笑)。人にはよく、『どうして君はいつもキツい道ばかりを選ぶんだ?』なんて言われますが、そういう性分だろうから仕方ない。当然、モノを作る上で小泉さんあるいは製作スタッフ内で意見の違いが生じることもあります。でも、たとえ同じ頃にキャリアをスタートさせているとしても、そこから先の活動や表現方法のプロセスは全く違いますからね。そのそれぞれの違う経験を持ち寄って、最終的に求めるイメージみたいなもの、『こっちの方が面白いだろう』というところが近くにあればいい。そうやって、お互い一緒に積み上げていくことがやはり醍醐味なんだろうと思う」

そう言って、笑いながらショートホープの煙を燻らせる。彼が今日着ているのは、NUMBER GIRLのTシャツ。ヴォーカル&ギターの向井秀徳とは「飲み仲間」だという。自身も1999年にバンドを結成し、同年Kozmic Blue名義でのアルバム『サンフランシスカンの憂鬱』をリリースした経験を持つ。そんな彼にとって音楽は「救い」の一つだという。


Photo = Mitsuru Nishimura

「俳優業で気分が沈んだ時は、常に音楽に助けられてきましたね。実は一昨年の暮れにも一度ライブをやっているんですよ。好きな音楽は、King Gnuなんて言って、結局は最初に好きになったジャニス(・ジョプリン)やジミヘンがウイスキー3杯で恋しくなる(笑)。酒は特に銘柄をこだわることもないけど、世界中どこでも買えるジャックダニエルを飲むことが多いかな。たまに大人を気取って白州や山崎とか(笑)。家で飲むことが多いのですが、恐ろしいのは酩酊状態での楽器屋サイト巡り。酔って楽器のサイトとか見ると、ついポチッとしたくなるから本当にヤバい!(笑)。いや、本数はそんなに持っていないですよ。今はアコギとエレキが全部で5、6本かな。家にいる時はそれを爪弾く時間が楽しみの一つです」

再び笑う豊原の表情は、まるで少年のよう。実は映画『ソワレ』もまた、若い男女のストーリーだ。東京で役者を目指す翔太(村上虹郎)は、理想と現実のギャップに自分を見失いそうな日々を送っていた。そんな中、小さな劇団と共に彼が向かった先は、故郷である和歌山の老人養護施設。演劇を通したレクリエーションを老人たちと行うためだ。そこには自分と変わらぬ年代のタカラ(芋生悠)が働いていたが、彼女もまた何かを失い諦めたような表情を浮かべていた。数日後、一緒に祭りに行こうと誘ったタカラを迎えにいった翔太は、そこで驚くべき光景を目にしたあとは「ある事件」を起こしてしまう。そして2人は「駆け落ち」とも呼べる逃避行の旅を始めることになった……。

「自分は何者であって、どこへ向かうべきなのか。若い頃は、誰もがそうした焦燥感に駆られる時期があると思うんです。今は情報があまりにもあふれ過ぎているから、『夢に向かって走る』『世界を変えたい』なんて考えにくいと思うんですけど、それでも鬱屈した気持ちを抱えてアンビバレンツな状態に陥ってしまう気持ちは、いつの時代も同じだろうと思う。なので、大人の方にも、現代の若い世代にも是非とも観てほしい映画です。『自分と同じような思いを抱え、もがいている』と思ってもらえるのではないかと。そして、前に向かって進んでいくことが、いかに大事なのかを感じ取ってもらえたら本当にうれしいですね」

また、映画を製作していくなか豊原があらためて感じたのは、硬直し切ってしまった日本映画界の現状だったという。

「おそらく、これまでが上手くいき過ぎていた部分があるのだと思います。国内のお客さんに向けて作った映画を、日本国内でペイしていくというシステムに終結してしまう。実は若い世代にも上の世代にも、斬新な発想を持った方たちはたくさんいるはず。しかしリスクを嫌うから独自性が育たない。国自体も文化の育成にあまり熱心とは思えない。もちろん、そこで成り立つ世界が間違っているのか?と聞かれたら、そうとも言い切れない。関わる一人一人に生活があって、商業としての構築は出来ていますからね。ただ、それだけだと単純に広がっていかないんですよ。今やネットでも個人単位で世界に発信ができる時代。『どうして国内のみの視点でやっているんだろう?』と疑問を持ち始める人が増えてきているのは必然だと思います。そんな、今の日本映画界に悶々とした気持ちを抱えている俳優や裏方さんたちに、僕らの活動が一つの石になってくれたらと。既存のものをぶち壊すというより、新たな意識が点と点とで繋がって場所を作り、両方で共存しながら日本映画界全体が大きくなっていったら最高じゃないのかな。時間がかかるかもしれないけど」


Photo = Mitsuru Nishimura

既存のシステムを破壊するというより、「新たな選択肢」を提示するという豊原のオルタナティブな考え方は、10代の頃からエンタメの世界で生きてきたからこそ育まれてきたものなのかも知れない。今後の展望について最後に尋ねると、力強い言葉が返ってきた。

「発想が豊かでありたい。とにかく作るしかない。日本映画はアジアでも世界でももっとたくさん通用できる力があるはず。今現在でもすでに広い視野と考えを持って行動している素晴らしい監督や下の世代の俳優、クリエイターは間違いなくいます。観客も分かっていることだと思います。映画界ではないけど、演芸好きとしては講談で六代目襲名した神田伯山みたいな人も刺激になります(笑)。挫けないよう、志を失くさずにいたいと思います」

映画『ソワレ』
配給:東京テアトル

オンライン上映中 (レンタル配信)
配信期間:2020年11月21日(土) ~ 2021年1月11日(月)
https://soiree-movie.jp/site/dvd/

出演情報:
映画『ヤクザと家族』
2021年1月29日公開
https://yakuzatokazoku.com

BSスカパー✕衛星劇場
どっぷり副音声『芝居噺弐席目「後家安とその妹」』
2021年2月放送予定
https://www.skyperfectv.co.jp/special/promo/doppuku/

豊原功補
1965年9月25日生まれ、東京都出身。A型。16歳で芸能デビュー。代表作は、NHK大河ドラマ『平清盛』、映画『南極料理人』など。2007年に公開された映画『受験のシンデレラ』で、『モナコ国際映画祭』最優秀主演男優賞を受賞するなど、話題の作品に数多く出演。近年は、舞台の脚本・演出なども手掛けている。

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