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梨園出身でない片岡松十郎、朝ドラ抜てきが追い風に – 舞台雑話 – 芸能コラム : 日刊スポーツ

2020年12月26日13時1分

片岡松十郎(2020年7月13日撮影)

長年、演劇を取材してきた中で、頑張ってきた人へのご褒美みたいな場面に出会ったことが何度もある。

最近では、NHKの連続テレビ小説「おちょやん」で歌舞伎俳優の早川延四郎を演じた片岡松十郎(45)がそれだった。同ドラマには、歌舞伎の名門「成駒家」の中村鴈治郎も道頓堀の芝居小屋を牛耳る興行会社「鶴亀」の社長役で出ているけれど、鴈治郎は、先日亡くなった坂田藤十郎さんの長男という御曹司。一方の松十郎は神戸出身で、父がサラリーマンの一般家庭に育ち、近大4年生だった97年に、松竹が上方歌舞伎の俳優を育成するために開講した「上方歌舞伎塾」に1期生として入塾。2年間の研修を経て、99年に卒業し、片岡仁左衛門のもとに入門した。片岡松次郎を経て、12年から片岡松十郎と名乗っている。

そんな無名の存在だった松十郎が、篠原涼子演じる芝居茶屋のおかみシズと、かつて恋仲だった延四郎役に大抜てきされた。12月14日の放送で初登場し、18日の放送ではおかみと20年ぶりに再会するも、直後に病気のため亡くなってしまう。出番こそわずかの回数だったけれど、劇中で歌舞伎の人気狂言「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」の団七にふんし、義父を殺してしまう名場面を本意気で演じ、篠原との再会にいちずな思いを募らせる男の哀愁漂う演技に、放送直後にツイッターでは「延四郎さん」がトレンドに入るなど、「片岡松十郎」という存在をしっかりとアピールしていた。

放送中の12月には京都南座の顔見世興行で、師匠の仁左衛門が主演した「熊谷陣屋」に百姓麦六役で出演したけれど、公演のチラシにも名前が掲載されず、テレビの抜てきが歌舞伎での活躍につながらないのが実情でもある。ただ、15年から上方歌舞伎塾の仲間3人と始めた勉強会「晴(そら)の会」で定期的に自主公演を行い、そこで「東海道四谷怪談」の民谷伊右衛門という大役を演じている。昨年6月に歌舞伎座で上演された三谷幸喜作・演出の三谷かぶき「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち」では、漂流した船で船酔いに苦しむ作次郎役で出演するなど、歌舞伎俳優歴も20年を超え、端正な容姿で注目の松十郎に風が吹いていることも確かだろう。

1月は歌舞伎出演の予定がないそうですが、次なる抜てきに期待したくなります。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)

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