俳優

モニター越しに見て「売れる」と確信した俳優 – 映画監督・谷健二の俳優研究所 – 芸能コラム : 日刊スポーツ

2020年12月12日8時2分

谷監督が描いた黒羽麻璃央の似顔絵

第3回。地元あるあるって言うんですかね。小さい頃から知っている近所の子が何かしらで有名になると「俺は昔からあの子は大成すると思っていた」と大人たちが自慢気に話します。実際、大学生の時にフットサルを一緒にしていた中学生がめちゃくちゃうまくて、その後、その子が地元の強豪校に進み、Jリーガーになっているのを見て、諸先輩方はこぞって「俺が教えた」的な話になっていました。すでにその子のほうがうまかったのですが…。いい意味で自分事のようにうれしいんですよね。盛りすぎるのは別として(笑い)。

さて本題。今回は黒羽麻璃央(27)。人気2・5次元舞台、刀ミュこと「ミュージカル『刀剣乱舞』」で主演を務め、「2・5次元の王子」と言われている。最近では舞台にとどまらず映画やドラマと活躍の場を広げ、さらには「ヒルナンデス!」(日テレ系)などの情報番組で見かけた人も多いかと思う。ちなみに『刀剣乱舞』、オンライン配信で同時接続数が約13万と令和を代表するコンテンツのひとつ。日本刀を擬人化した「刀剣男士」が歴史上の合戦場に出没し、敵を討つゲームが元である。

芸能活動は「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」準グランプリを受賞したのがきっかけ。準グランプリであれば、連ドラで主演クラスがいる、いわゆる大手事務所からスカウトされるケースも多いが、ヴィズミック(現在はTRUSTARに事業を移管)という、くみっきーこと舟山久美子などモデルが中心に活躍する事務所に入る。詳しくはわからないが、条件がよかったのか、育成のイメージ合致したのか、珍しいケースではないかなと思う。

そんな黒羽君。1度仕事をしたことがある。ちょうど6年前の年末に撮影をしたオリジナルビデオ作品(OV/Vシネとも言われます)。ジャンルはOVらしくホラー。1度チャレンジしてみたかった題材であり、思いのほか企画がすんなり通り製作することに。メインのキャスティングはこれから人気の出そうな子を中心に、あとはオーディションで選ぶ。撮影直前の衣装合わせで初めて会った時も、正直そこまでキラキラした感じではなく、芸能人というよりそのあたりにいるイケメン大学生。クセもなく淡々と衣装合わせや読み合わせをこなす姿をみて、今どきの俳優ってこんな感じなのかなと思ったり。

さて初日、メインのロケ場所である新宿の公園。そこで黒羽君の初めてのソロ撮影。「少し歩いてこっちに振り返って」と雑な演出をしてモニター前に陣取る。数秒後…実際に振り向いた瞬間にビビッとくる。衣装合わせや読み合わせ含め、直接話している時にはそれほど感じなかったが、モニター越しに見る彼の姿はいわゆる人気俳優が持つオーラそのもの。慌てて隣にいたマネジャーに「この子絶対売れますよ」とドヤ顔で話す。「わかってますよ」と言わんばかりの表情を見せるマネジャー。

それから数年たち、最近の活躍を見ると、その時の感覚に自信が持てる。彼を発掘したとまでは盛らないが、話のネタとしては十分である。余談であるが、作品自体は斜め上を行き過ぎていたのか、意味不明、怖くないと何かと酷評され、いわゆる監督作品としては黒歴史になりつつある(もちろん個人的には大好きな作品です)。なので活躍した姿をみるたびに作品が思い出され、複雑な気分にもなる(笑い)。そして、嫌な過去を忘れてしまうという映画の内容にリンクしていてなんだか怖い。おわりだよ。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。今年11月28日には最新作「渋谷シャドウ」も公開。

このコラムにはバックナンバーがあります。

もっと見せる

関連記事

Close
Close